【旅行記】バルセロナ1 サマー・ブレイク
バルセロナを訪れようと思ったのは、近くの空港から安くで行けるチケットを見つけたからだった。友人に教えてもらったKayakというウェブサイトで、出発の空港とおおよその出発時期を指定すると、各都市までの最安のチケット料金を地図上に表示させることができる。旅行したい時期は決まっているが、どこに行くか決まっていない人間にとって、どこに行くのが安いか、高いかが分かる便利なサイトだ。
その時見つけたのは、バルセロナまで、片道38ユーロだった。クラスメイトに言わせれば、これは安いうちに入らないそうだが、日本円なら、約4900円といったところだ。充分に安い。夏の旅程を決めあぐねていた私にとって、安いチケットが目に飛び込んできたというのは、一つの兆しだった。
バルセロナに関しては元々、興味が無かったわけではない。かつて建築を学んでいた身としては、ガウディ建築というのは、いつか見てみたい作品の一つだった。ただ、それ以外に特段気になる物も無かったので、他の都市の方が目的地としての優先度が高く、バルセロナは後回しになっていて、いつの間にか忘れていたのだ。きっと日本に帰国してしまったら、この先もずっとこの街を訪れる事は無いような気がした。スウェーデンに住んでいる今だからこそ、LCCで簡単に行けるのだ。
私はあまり深く考えることなく、航空券とホステルを予約した。いくつかガウディの建築を見て、美味しいタパスやパエリアでも食べたら満足だ。スペインワインやサングリアも良いな。そのあとは、陸路で適当な街に寄りながら、北上してパリあたりまで出てみようか。
まだ冬が明けて間もなかった頃(といってもスウェーデンでは4月ごろの話だ)、長いヨーロッパでの夏休みをどう過ごそうかと悩んでいた私に、同じ授業を取っていたスイス女子がInterrailという鉄道切符を勧めてくれた。なんでも、一定の条件下でヨーロッパ中の電車が乗り放題なのだとか。調べてみると、期間と使用日数が選択出来て、その期間内で提携する鉄道会社の列車に乗り放題というものだった。TGVのような高速鉄道も、座席指定料金を追加で支払えば乗車できる。使いようによっては、かなりお得に切符代を収めることができるものだ。
私は彼女の勧めに従って、春のうちに早割りで夏休み用のInterrailチケットを購入していた。一か月の間に、7日間の乗り放題日が選択できるものだ。こういうものは、買ってしまうと無理にでも旅行に行くようになる。出不精の私が、長い夏休みを無為に過ごしてしまわないための、大切な先手だった。
さてそのチケットを買ったは良いものの、広いヨーロッパだ。どこへ行ったものか、まったく手掛かりがなかった。安い飛行機でも見つけたら、とりあえず南の方に飛んで、ゆるゆる電車で北上しながら帰ってこようかな、と冗談半分で友人には話していたのだが、このバルセロナ行きのチケットは、まさにそれであった。
そんな事情もあって、夏休み最初の目的地はバルセロナになったのであった。
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