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弥生は初めそれを何かの隠語かと思った。直子は姿勢を正して座っていた。泣いていたわけではな…
直子はそのまま動かなかった。声も上げず、ピクリともしなかった。息をしているかどうかさえ不…
「どうしたの。気分悪いの?」 直子は何も答えず、前のめり気味にダイニングテーブルの上の一…
塾から帰った直子を待っていたのは、夕食の支度をしている母の弥生だった。弥生は宝くじの結果…
有馬と片山は、人の流れに逆らって歩いた。駅前に近付くにつれ、街は明るく賑やかになっていっ…
有馬は立ち止まったまま、歩き去る直子の後ろ姿を眺めていた。だがその時だった。交差点の真ん…
「忘れました」 直子は言った。その言い方があまりにも毅然としているので、講師は一瞬そのまま通り過ぎようとしたくらいだった。 直子はこの塾に小学五年の頃から通っていた。他の生徒たちに比べて進みが早いので、普通のテキストとは難易度の異なるテキストを与えられ、同じ教室の中でも一人だけ別のカリキュラムをこなしていた。真面目で呑み込みが早いため教えるほうも面白いらしく、講師は直子一人の指導に力を入れたがったが、なるべく分け隔てなくしてほしいという本人の強い主張から、宿題は他の生徒たち
重い足取りで家に帰ると、直子は冷蔵庫の残り物で自分の昼食を用意した。誰もいない昼間の家は…
直子は有馬を振り切って歩き出した。しつこく呼び止められたような気もするが、気にする余裕も…
目を凝らしても異様なものは見当たらず、特別なものはないが何もかもスムーズで不足がない。そ…
大抵、事件というのは当人以外にとっては取るに足りないものだ。目に見える形で起こることすら…