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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2021年4月の記事一覧

ゆうべ久しぶりに父を夢に見たので、思い出話でも書こうかと思う。 いつもふざけている人だった。コテコテの関西弁、大の酒飲みで、阪神タイガースを心から愛していた。とにかくよく飲んだ。赤ら顔、とろんとした目、舌のまわらぬ物言い。休みの日は朝から飲んでいたのではないだろうか。 休みの日、と言っても、子どもの頃の私は父がいつ休みでいつ仕事に出かけているのか、まったく知らなかった。ネクタイを締めたスーツ姿の父を見たことが一度もない。私が高校生の頃、やけに羽振りよさそうにしていた時期があ

母の日に白いカーネーションを買う勇気をもらった話

両親と妹を亡くしてから、まだ数年しか経っていない頃の、ある年の母の日。 私は当時、住んでいた家から近い花屋さんに 予約していた花を取りに行っていた。 その花屋さんには、度々お世話になっていた。 当時は、友人や知人の結婚などお祝い事も多かったので、花束を買うときはいつも予約して 取りに行ってから会場に向かった。 また 家族のお墓参りに行く前に、いつもお供えの花を買っていた。 母は花が大好きで、いつも家には花を飾っていた。 そんな母のために 仏壇の側にお供えする花を買

春にさよなら

春が思い出させる、くだらない記憶。 高校卒業あたりのことを書きたいと思う。 私には好きな先生がいた。 先生への恋というのはよくある話だが いわゆるそういう話に登場するような'先生' ではなく、かなり変人だった。 別に格好良くもないし、2回りも年上。 一見すごい冷たくて絡みづらい。 ひねくれていて自虐的。教師らしくない…… でも本当は情熱的で、優しいところもあった。 自分でも何で好きになったのかよく分からない。 まぁ、気づいたら好きになっているのが 恋というものらしい

きっかけはバスケットボール。

もともと私は運動、スポーツに苦手意識があった。 そんな私が小学生だったある日、大きな怪我を負った。 辛いリハビリを乗り越えて、私が運動・スポーツを楽しめたきっかけとなった話を記したい。 新学期早々、思いがけない怪我を負った1983年4月。テレビに映っていたのは、開園したばかりの東京ディズニーランド。 中継リポーターがアトラクションの魅力を存分に伝え、スタッフや来園客にインタビューしていた。 私は、この夢のような国、夢の世界の楽しそうな様子を、 病院の待合室でテレビを

とにかく字を読みたい時がある

所謂、活字中毒というやつなのかもしれない。 たまに気づいたら、ひたすらスマホを見ている時がある。空いた時間はずっとスマホ。特段目的もないのに、ひたすらスマホ。 で、何を見ているかというと、文字。ゲームや動画ではなく、ひたすら文字を求めている。文字に飢えていることがある。 そんな状態は、Twitterとの相性が悪魔的に良い。ずっっっっっとTwitterを見てしまう。それも見尽くしたら、他のSNSへ。それも写真や動画より、とにかく文字を見てしまう。 これって結構自分の中で

#37 MY HERO ポールと洗礼のミズシブキ

ポールは小柄で華奢な60代、ダウン症候群の男性だった。 初めて彼を見たのは私が今の教会に通いだした時。 毎日曜、一番前の列の右側の端が彼の決まった席だった。 ダウン症にはとても特徴的な顔のキャラクターがあって、これは人種に関係なく、共通するようだ。 私なりにいろんな国籍、人種の方に会ってきたが、似てないはずの人種同士なのに、なんだかみんなが家族みたいなのだ。 ポールの写真は載せられないが、彼もまたあなたの知ってる六十代のダウン症の男性ときっと似ていたと思う。昔、私が子ど

最期の言葉かも、ってわかっているときに、人は何を話すんだろう。

これが最期の言葉になるかも、と思いながらベッド際に立ったのは初めてだった。 今、部屋を出たら、もうこの人に会うことはないかもしれない。 そんな時に、人はどんな言葉をかけるんだろう。 * 島原さん(仮名)とは長い付き合いになる。 私が仕事を始めた時には既に、週のうち数日を施設で過ごし、残りの半分は自宅で暮らしている方だった。 島原さんの病名はALS。 運動をつかさどる神経がダメージを受け、徐々に筋肉が動かなくなっていく病気だ。 筋肉が動かなくなっていく、ということはただ

「30歳の呪い」にかかった話

「呪い」から抜け出せなかった30歳の呪い……そんなものは正式にこの世に存在しないのかもしれないが、私の中には物心ついた頃から確かに存在していて、それが自分の生きる意義のようになっていた。 あえて定義するなら「30歳になるまでに何者かにならなければならない症候群」または「30歳までになにもかも手に入れていなければいけない病」とでもいうだろうか。 その「何か」は人によって違うだろう。30までに結婚をしたいなのか、30までに子供がほしいなのか。マイホームが欲しい、もっと待遇が良

そして、わたしの一人旅

つい先日、初めて一人旅をしてきました。 といっても、遠出する用事があり、せっかく行くならと翌日も滞在しただけです。 用事のついでから始まった一人旅は、一人なのに、人との繋がりを考えるきっかけになりました。 その日は丸一日、1人で知らない街を過ごしてきました。 夜になれば親友の仕事が終わって、会う約束。 さすがにノープランでは、途中で体力がなくなりそうと思い、行きたい場所の目星はつけておきました。 その場所の1つが美術館。 1人で観光なんて初めてだから、ちょっとわく

だんだん近づいてくるんだって

娘のハトちゃんはある日、ぬいぐるみに恋をしてしまった。その日からずっと、私の周りをうろついて自分にも出来る家事を見つけてはすかさずお手伝いしてくれるようになった。 お風呂のお湯はりスイッチを押す 老犬をご飯の場所へご案内する 床に落ちた洗濯物を拾って私に渡す 倒れた植木鉢をおこす 私がやろうとするそばから風のようにさあーっと現れて片っ端からやってしまう。そしてふっくらした手をだす。 「お駄賃ちょうだい」 そうやって10円や50円、時には100円をもらってはコツコツと

写真と散歩とわたしの興味

毎日50枚の写真を撮る。 見返すと、今の自分の興味が分かる。 あるの本の中、写真家の蜷川実花さんがそんなことを言っていました。 撮った50枚を見返す。 すると、鮮やかな色の花が多い、ビルをよく撮るといった自分の興味の方向に気づくことができるんだとか。 写真が自分の興味を教えてくれる。 なら、私って何に興味があるんだろう。 気になって、早速スマホを片手に散歩へ。 心惹かれたものを写真に収める。 ただそれだけの散歩が、写真の新しい一面を教えてくれました。 今まで、私にとっ

レモンケーキと図書館

今更だが、『図書館』は素晴らしい。 タダで本が読み放題、しかも貸してくれるなんてデザートと飲み物付きの1,000円ランチぐらい素晴らしい。 もし日本に図書館が無ければ、図書館で借りた本ばかり読んできた私の人生はイチゴののっていないショートケーキぐらい残念なものになっていたに違いない。 最寄りの図書館はオシャレな外観をしている。当初通りかかったときは高級マンションかと勘違いしていたぐらいだ。図書館内には小さなカフェも併設されていた。あまり期待せずチラッと覗く。メニューは黒カ

グリーンティーの香りに遺伝子が惹かれている

嗅ぐだけで落ち着いたり、 ドキドキするような香りはありますか? 実は最近、久しぶりにそんな特別な香水に 巡り会えました。 そしてその匂いについて、ちょっと不思議でドキドキするようなこともあったのです。 そのことを書いてみたいと思います。 * 春夏の季節に似合う、ふわっと軽めの香水を探していました。 三月から探し始め、一ヶ月半。 香水専門店もデパコスも見たけれど、なかなか好みのものは見つからない。 思うに、年齢が上がるにつれてわがままになっているのだと思います。

運動音痴の私が、走った。

私はスポーツとは無縁の人生を送ってきた。 とにかく、運動音痴である。 高校の時の100m走のタイムは23秒で、ストップウォッチに刻まれたタイムを見た体育の先生に 「お前、真剣に走れよ!」 などと言われたりした。真剣だっつーの。 中学の時は、部活動強制加入だったのだが、とにかく運動は嫌だったし、吹奏楽部も筋トレをすると聞き、消去法で美術部にした。本当は帰宅部がよかったなあ。 そんな私が、スポーツをした経験として、ただひとつだけ、胸に残り続ける競技。 それは、かつてテレビ朝日系