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#エッセイ

ピアノと子供の私

子供ころの話。
私は、4、5歳ごろから、ピアノが習いたいと母にねだっていた。
家にお金がなかったのだろう、家が狭かったせいもある。
なかなか承諾してもらえず、実現はしなかった。
半ば諦めていたある日、突然ピアノを買ってもらえることになった。
記憶の中では突然の出来事で、なぜ今更買ってくれることになったのか経緯は分からない。
私はそのとき小学三年生なっていたし、習い始めるにはとても遅い年齢だってこと

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繁華街まで歩く

最寄り駅から、商業施設が多くある繁華街まで歩いた。
電車で4駅。
日曜日に体を動かしたくなるときは、散歩代わりにこうしている。
ジムにでも通えればいいが、お金がないから仕方ない。
最寄り駅から少し離れると左手には木々が生い茂り、小さい神社が現れる。
いつも気になって通りすぎるのだか、未だ境内に入ったことはない。
なんなく得体の知れない不気味さがあり、足を止めずに通り過ぎる。
道は住宅地に移行してい

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新年会での違和感

戸田真琴さんの著「あなたの孤独は美しい」を一先ず巻末まで読み終えて、先日の会社の飲み会で感じた違和感を思い出しました。

それは、私が今いる会社に入りたてのころに、その当時の女性マネージャーが仕事に対して大変厳しく、パワハラまがいの言動が怖かったという話になった時のことです。
おそらく誰かから人づてに聞いたのでしょう、その当時を知っている女性が、
「(私)さんだって、入ってすぐに、こんなところでは

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読みかけの本の感想を言うよ

帰宅して、タバコを吸い、夕食を作り、少し休憩しよとベッドに横になってしまったが最後、目覚めたときには午前0時を回っていました。

このまま朝まで眠ってしまえれば楽だなと思いつつ、すっかり冷えた夕食を温め直し食べました。
私はどうしても一度の食事で過食傾向にあり、しかもこんな時間に取る食事は罪悪感上乗せでの一種の賭けです。
でも眠気も覚めてしまったし、しょうがないじゃないかと言い訳をつけて食べるのは

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電車にて、他人の話にばかり耳を澄ましている

新年初出勤。
乗り込んだ電車はもちろん満員で、ドア付近にいると、後からなだれ込んでくる人に圧迫されて、人の形を保っていられなくなる。
私はいつも努めて座席の前に立つように心掛けている。
今日もギリギリ座席と座席が向かい合う空間に体をねじ込ませて、来るべき時に備えた。

一旦は落ち着ける場所を確保し、読みかけの宮沢賢治の短編「貝の火」が収録されている「風の又三郎」を取り出そうとカバンに手置掛けると、

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メンタルの病状と正月の過ごし方

メンタルの病状と正月の過ごし方

心療内科では病名が付くような診断は受けていないので、病状と書くのは違うと思うのですが、会社が28日から正月休みに入り、やるべきこともなくなり、ただ己と対話するような時間が増えて、メンタルが不安定期に入っています。
せっかくなので、その不安定さを観察してやろうと思い、今このように文章を起こしてみています。試しに。

私は年末年始感が苦手です。
そう思うようになったのは、去年ぐらいからなんだけれど、「

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電車にて、若者のこれから

電車にて、若者のこれから

「やっぱり教育が大事なんだよね。」
「うん、だね。」
「俺なんか子供のときに一通りの習い事やらせて貰ってたから、今思えば本当親に感謝しかない。」
「俺も同じ全く同意見。本当ありがたいわ」
「なんだかんだで、毎日何かしら、やってたからな~」
「なんかでも、練習とか、しんどかったなー」
「これ?(ピアノを弾くジェスチャー)」
「うん、あと水泳もやってたし」
「今になってさ、やっとわかったけど、将来その

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褒められた日

毎日、電話とメールの対応を繰り返す仕事をしている。
相手は企業なので、クレーマー的な人の対応をすることは少なく、嫌な思いをすることは、ほとんどない。
ただ粛々とメールをさばき、電話を取るのだ。
やってることは「〇〇(サービス)の使い方や操作で分からないことを教えてあげる」的なやつだ。

実際に使ってる人に会ったことはない。

定期的に講習会みたいなこともやっていて、その日は顧客が来訪してくる。

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侵入者

侵入者

心療内科から処方された薬を飲むようになって、日中でもよく眠くなる。
仕事中であれば、耐えられる程度の眠気がなのだけど、休みの日に部屋で本を読んだり考え事にふけっているときは、気づくとベッドで寝てしまっている。
今日も散歩から帰ってきて、一息ついていたら寝てしまった。
足をベッドの枕側に向けたまま、眠りについて行った。

うつらうつらと、10分くらい経ったのだと思う。
私が頭を向けている先には、右手

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煙の形

煙の形

午後6時半の定時を5分過ぎで会社を出た。

すぐに電車には乗らず、今日は駅近くにある喫煙スペースでタバコを吸おうと思った。

ガラスを鉄柱で囲ったような仕切りが建てられた六畳ほどのスペース。

普段は人がひしめきあって、かなり窮屈な空間なのに、今日は側面に2人づつぐらい並んでいる程度で、それほど人がいなかった。

出入り用に1メートルほど仕切りが途切れているすぐ横に陣取ってタバコに火をつけた。

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派遣社員 (女)初めて心療内科に行く

派遣社員 (女)初めて心療内科に行く

金曜日、私はずる早退して13時半の東横線に乗っていた。

この時間の東横線は座れる。

昨日から続く胸の不安感がなくならないでいた。

「どうも、毎度お馴染み、不安感です。」

そう自己紹介してくる勢いだ。

私は人生で何回目かの、「Google検索で”心療内科”と検索する」をした。

検索結果の上から順にページを開く。

GPSが仕事してない。

もう一度、これも人生で何度目かの、「Google

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母(自分語り)

実家の母から田舎に帰省することを伝えるショーメールが送られてきた。
内容を見ると「元気してる?、田舎に帰るよ」とだけあった。
いつぶりの連絡だろう。
前回のやり取りがいつだったのか。
履歴を遡ろうとしたが、携帯を変えてしまっていて分からなかった。

たぶん春先だった気がする。
お茶する約束をして、地元の駅で待ち合わせした。
駅に併設する商業施設の地下一階にある喫茶店に入った。
少し割高のその店は普

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