母(自分語り)

実家の母から田舎に帰省することを伝えるショーメールが送られてきた。
内容を見ると「元気してる?、田舎に帰るよ」とだけあった。
いつぶりの連絡だろう。
前回のやり取りがいつだったのか。
履歴を遡ろうとしたが、携帯を変えてしまっていて分からなかった。

たぶん春先だった気がする。
お茶する約束をして、地元の駅で待ち合わせした。
駅に併設する商業施設の地下一階にある喫茶店に入った。
少し割高のその店は普段一人でコーヒーを飲むときにチョイスされることはなく、初めて入った。
何を話したかは、あまり良く覚えていない。
兄の結婚があったので、その話と、
そう、妹が最近まで入院していたことを知らされたんだった。
「そういえば、言ってなかったけど」
母はそう前置きした。
大病ではなかった。
入院もそれほど長くはなかった。
けど、会ったついでの、事後報告だったことに情けないような、なんとも言えない気持ちになった。

母はいつも、そういった家族の話題を私には控え目に話す。
私の話題ついて、母はどことなく第三者的な姿勢をとる。

それは私がまだ扶養されてた、子供のときからだ。

そのことについて、子供の私は何かを察していたのだけれど、わかってしまうとがとても怖くて、いつも薄ぼけて霧がかかったような意識でいた。

こないだ会った母も、やっぱり第三者を有していたし、
いつ会っても、何度会っても、同じ。
金太郎飴みたいな構造なんだな、と思った。

なんとなく途中で面白くなくなって、お替りしたケーキセットのコーヒーを急いで飲み終えて、店を出た。

で、なんとなくもう一生会わなくてもいいかも、と思った。


私はショートメールで返信した。
元気なことと、田舎で一人暮らししている祖母によろしく。

で、最後に付け足した。

「また、お茶でもしよう。」

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まゆ
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