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侵入者

心療内科から処方された薬を飲むようになって、日中でもよく眠くなる。
仕事中であれば、耐えられる程度の眠気がなのだけど、休みの日に部屋で本を読んだり考え事にふけっているときは、気づくとベッドで寝てしまっている。
今日も散歩から帰ってきて、一息ついていたら寝てしまった。
足をベッドの枕側に向けたまま、眠りについて行った。

うつらうつらと、10分くらい経ったのだと思う。
私が頭を向けている先には、右手にキッチン、左手が玄関がある。
その辺りに、人がいる気配を感じがする。
一人暮らしの部屋で人の気配を感じるわけがない。
誰が部屋に侵入してきたのか。
今このときが夢か現実か、判然としない。

散歩から帰ってきたときに、私は家の鍵をちゃんと掛けただろうか。
”鍵を掛ける”といったごく日常的な行動ほど、そうそう思い出せない。

”侵入してきた誰か”は、足音を立てずに、ただ、キッチンから玄関の間を行ったり来たりしているように思う。
物音が一切聞こえないのはおかしい。
本当に人なのだろうか。

これは夢だ。
思い切って目を開けてみようとしたが、瞼が動かない。
体の自由も一切利かない。
体だけが先に眠りに落ちているのだろう。

私の意識もまた、体の後を追うように、ついに眠りに落ちてしまった。

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まゆ
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