マガジンのカバー画像

本について

56
好きな本についてのあれこれ。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
小説の一行目で好きになれる

小説の一行目で好きになれる

小説を読むとき
最初に目にする文章のことを「書き出し」という。

「メロスは激怒した」や「吾輩は猫である」みたいに、もはやタイトルに匹敵するぐらい有名で誰もが知っている文章もある。

この書き出しがすごく好きなのだ。
むかしむかしに読んだ本でも、この書き出しが頭に残っているものがあるぐらいには好き。

ちなみに、書き出しは作者によって全くもって異なる。

単純な状況描写であったり
すぐに主人公の視

もっとみる
今年の終わりも物語とともに|2024年11〜12月のひとこと読書感想文

今年の終わりも物語とともに|2024年11〜12月のひとこと読書感想文

Xに投稿した小説の感想文をまとめた「ひとこと読書感想文」。

今年の終わりも物語とともに。
来年もたくさん本が読めますように。

まち/小野寺史宜(祥伝社文庫)前作『ひと』に続く、東京で生きる孤独な青年の物語。
店長もお元気で何よりだった。

小野寺さんの文章は何でもない会話や心理描写から、その人の優しさや温かさがじかに伝わってくる人肌のような安心感がある。

だから、実直に生きる彼らの歩みを素直

もっとみる
作品の余韻に浸った読書の秋|2024年9〜10月のひとこと読書感想文

作品の余韻に浸った読書の秋|2024年9〜10月のひとこと読書感想文

Xに投稿した小説の感想文をまとめた「ひとこと読書感想文」。

秋だからと言って特別、読書量が増えるわけではないけれど、なんだか余韻に浸れるような物語が多かったような気もする。

それに9月はなんだかんだ暑かったので、夏の余韻も引きずっているようなラインナップになった。

箱男/阿部公房(新潮文庫)ずっと読みたい本リストに入っていた安部公房の『箱男』が、なんと今年、実写映画化されることに。ようやく読

もっとみる
茹だるような夏に読んだ物語たち|2024年7〜8月のひとこと読書感想文

茹だるような夏に読んだ物語たち|2024年7〜8月のひとこと読書感想文

Xに投稿した小説の感想文をまとめた「ひとこと読書感想文」。

「夏だからこれを読もう!」と決めた作品もあれば、「夏なのにこれを読んだのか…」と今さら思ってしまう作品もあって、何だか不思議な気持ちになった。

そんな7〜8月の読書記録。

恋と禁忌の術語論理/井上真偽(講談社文庫)奇抜なキャラクター設定から繰り出される、理詰め展開のギャップが凄まじかった。名探偵たちをねじ伏せる論理学者見たことない。

もっとみる
好きな作品には「憂い」と「愛おしさ」が詰まっていた

好きな作品には「憂い」と「愛おしさ」が詰まっていた

あらためて自分の好きな小説や映画を振り返ってみると、なんだか悲しいストーリーの作品が多いことに気づいた。

別にハッピーエンドの物語が嫌いなわけではない(10選のなかにもハッピーな作品はある)のに、どこか偏りがあるような気がして、何か共通点のようなものがないかと考えてみる。

特に偏愛する作家さんはおらず、ジャンルも好き嫌いはない。
似通っている部分もあるにはあれど、どれも決定打に欠ける気がした。

もっとみる
心に刺さりまくった小説ばかり読んだ初夏の読書|2024年5〜6月のひとこと読書感想文

心に刺さりまくった小説ばかり読んだ初夏の読書|2024年5〜6月のひとこと読書感想文

Xに投稿した小説の感想文をまとめた「ひとこと読書感想文」。

いざ集計してみると、深く心に刺さった作品が多かった5〜6月。ここまで固まるのも珍しい。

羊は安らかに草を食み/宇佐美まこと(祥伝社)ここまで心揺さぶられると思わなかった。
初めて小説を読みながら涙が溢れそうになった。

認知症を患った女性が、老いてもなお、胸の奥底に留めていた秘密。

平穏に思える旅と壮絶な過去の記憶が対比されるように

もっとみる
ジャンルも作者もバラバラだった春の読書月間|2024年3〜4月のひとこと読書感想文

ジャンルも作者もバラバラだった春の読書月間|2024年3〜4月のひとこと読書感想文

Xに投稿した小説の感想文をまとめた、ひとこと読書感想文。

今回もXに投稿した読書感想文から、ジャンルも作者もバラバラな7作品を紹介してみる。

クジラアタマの王様/伊坂幸太郎令和元年に発刊された作品ながら、ここ数年の慌ただしい世界を予言したかのような内容だった。

夢と現実が入り混じるなかで、本当に大事なことに気づけるか。

それにしても伊坂作品のご夫人がたは、誰もかれも頼もしくて逞しくて。男連

もっとみる
140文字になんとか収めた小説感想文の行き先|2024年1〜2月のひとこと読書感想文

140文字になんとか収めた小説感想文の行き先|2024年1〜2月のひとこと読書感想文

いつも小説を読み終えたらXに投稿する短い感想文と、読書感想文用に作ったブログやInstagramに投稿するちょっと長めの感想文、ふたつとも書いていた。

どちらも本筋や結末には配慮しつつ、小説を読みおえた人には共感や発見を、まだ読んでいない人には興味や関心を持ってもらえるような、そんな文章を意識しながら。

特にXは、不特定多数の人に届きうるうえに140文字にまとめないといけないので、本当に慎重に

もっとみる
凪良ゆうさんの小説に登場する「揺らぎのある一文」が好き

凪良ゆうさんの小説に登場する「揺らぎのある一文」が好き

物語を読んでいると、つい目を留めてしまう一行。

ページをめくる手がはたと止まり、文章の美しさや言葉の連なりに目を奪われて、忘れないようにと書き留める。

読書をしていると出会う、その瞬間がとても心地いい。

それから、さまざまな一行を書き留めるうちに、自分は複雑な感情がからまった想いを一文に閉じこめてくれる、そんな文章が好きなんだと気づいた。

特に、凪良ゆうさんの小説は、「普通」という言葉がも

もっとみる
世界で起きている出来事の根っこにある「歴史」と「過去」を知ること

世界で起きている出来事の根っこにある「歴史」と「過去」を知ること

月ごとにテーマを決めて、小説を通して出会った興味を深掘りすることにした2024年。

7月のテーマは「世界の歴史」について。

小説を読んでいると、世界各国の過去の歴史を踏襲して描かれる物語に出会うことがある。

それぞれの物語を通して紡がれる歴史を知ることで、現在まで続くさまざまな出来事につながる、根っこの部分を見つけることができるのだ。

ソ連の女性狙撃兵となった少女の半生を描いた、逢坂冬馬さ

もっとみる
小説やエッセイの感想を書くのが苦手な人に伝えたい。自分らしい読書感想文の書き方

小説やエッセイの感想を書くのが苦手な人に伝えたい。自分らしい読書感想文の書き方

初めまして。
ライターのばやしと言います。

子どものころから小説が好きで、コツコツと読み終わった本の感想を書きためていたら、いつの間にか200冊以上の読書感想文を書いていました。

また、自身のnoteでも「自分の好きな本が多くの人に届くきっかけになれば」という思いから、さまざまな切り口で本の「オススメ記事」を書いています。

ただ、最近は「読書離れ」が世の中で囁かれるようになり、本を読んだ感想

もっとみる
日常に漂う「香り」をまとった小説に誘われて

日常に漂う「香り」をまとった小説に誘われて

月ごとにテーマを決めて、小説を通して出会った興味を深掘りすることにした2024年。

6月のテーマは「香り」について。

自然と日常に息づく「香り」は、暮らしのなかだけでなく、さまざまな用途で利用されている。

実は、6月に「香り」にまつわるあれこれに触れる機会もあって、学んでみたい欲が再燃していたテーマだった。

一から香りを作りだす「調香師」と呼ばれる人々最初、香りについてもっと深く知ってみた

もっとみる
どこまでも不確かであいまいな「記憶」という存在について

どこまでも不確かであいまいな「記憶」という存在について

月ごとにテーマを決めて、小説を通して出会った興味を深掘りすることにした2024年。

5月のテーマは「記憶」について。

現在、放映されているドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』を始めとして、第1回本屋大賞を受賞した小川洋子さんの『博士の愛した数式』など、「記憶」をテーマにした物語は数多く存在している。

そして、どの物語にも共通するのは、どこか捉えようのない不思議な存在を手探りで追いかけてい

もっとみる
三浦しをんさんの物語が拓いてくれた植物への興味

三浦しをんさんの物語が拓いてくれた植物への興味

月ごとにテーマを決めて、小説を通して出会った興味を深掘りすることにした2024年。

4月のテーマは「植物」について。
と言いつつ、5月も半ばになってしまった。

想像以上に膨大な量の文章を読むことになったのだけれど、それでもページをめくるたびに、「植物」が秘める知性と、長い年月をかけて築かれる森の複雑さに惹きこまれていった。

思考や感情が存在しない「植物」をめぐる物語もともと「植物」に興味を持

もっとみる