脳機能とトレーニングの関係〜APAから考えるトレーニング〜
今回は脳機能と運動の関係について。
大事なことはストレッチ(柔軟性)と筋トレ(筋力)で何でも良くなると思わない方がいいよって内容です。
では早速いきましょう。
先行随伴性姿勢調節(APA)とは
意識して行う運動と無意識で行われる運動(筋活動)があります。
例として肩を上げるとき、上げた肩と同側の大腿二頭筋が働きます。
しかも三角筋より先に活動が起きます。
これは先行随伴性姿勢調節(以下APA)と呼ばれるものになります。
APAは我々が転倒、怪我をしないために備わっている機能になります。
研究結果では上肢挙上やステップ動作での報告ですが、実際我々の動作の中でAPAは常に出現しています。
脳機能の重要性
APAは大脳基底核、小脳によりコントロールされており、学習に応じて出現頻度が高くなります
ここで脳機能が重要になるのです。
大脳基底核は強化学習に関与し、小脳は教師あり学習に関与します。
(今回は学習の種類、内容については省略します)
この脳機能(システム)を理解しないでトレーニングをすると怪我をします。
ウエイトトレーニングでは非常に起こりやすいです。
ウエイトトレーニングでは自重よりも遥かに重いものを持ち上げます。
その重さは日常生活では経験にない重さなためAPAが出現する可能性が低くなってしまいます。
先ほども述べたようにAPAは学習することで出現頻度が増加します。
自重の数倍重たいものを何十回も持ち上げる事は難しくAPAが出現するのに必要な学習回数をこなすことが出来ません。
そのため怪我をするリスクが向上します。
体の柔軟性も必要かもしれませんが、どんなに柔軟性があってもその身体をコントロールすることが出来なければ意味がありません。
脳機能(APA)から考えるトレーニング
では最後にAPAを利用したトレーニングを少し紹介します。
基本さえ理解すれば全てのトレーニングに使うことができます
1. 自重が基本。自重で出現しないため怪我につながる
2. ウエイトをするなら負荷量を細かく調整する
3. 負荷より頻度を重要視すること
ざっくりと3つです。
1.
腰痛患者などは本来、動作の前に腹横筋の筋活動が出現するはずが遅延しているという報告があります。
こんな状態に重りが加わったらどうなるでしょうか?
怪我をするリスクが高いですね。だからこそ自重から始めましょう
2,3
負荷量を10キロ単位ではなく5キロ単位など細かくし、頻度を増やすことでAPAの学習を促すことが出来ると考えられます。
筋肥大のために必要な負荷量は70~80%、筋繊維を破壊し再生を促すなど諸説ありますが、ミオスタチンという遺伝子でも決まっていたりします。
また加圧トレーニングもあるため、負荷量を極端に上げる必要もなければ、あげた方がいいという論文も見当たりません。
そのため細かく調整し、高頻度で学習を進めることが重要なのです。
本日は脳機能とトレーニングについて簡単にまとめました。
実際APAについて調べると大脳基底核、小脳以外の部位も多く関与しています。それぞれの細かい機能はまた次回。
この内容を理解して筋力や柔軟性が全てではないことを理解していただけると少し怪我をしにくくなるかもしれませんね。
参考:
丸岡 祥子、鈴木 俊明:上肢運動に際した先行随伴性姿勢調節に関する文献的研究:関西医療大学紀要, Vol. 6, 2012