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小説「見習い占い師 ルキは解決したい! 友情とキセキのカード」著・荒井寛子  読書感想文

小説「見習い占い師 ルキは解決したい! 友情とキセキのカード」著・荒井寛子  読書感想文

主人公であるルキはルノルマンカード占いが得意な小学校6年生の女の子。
ルノルマンカード占いを教えてくれた関西出身のおばあちゃんの影響で、関東に住んでいながら常に関西弁を話し、ちょっとオバチャンみたいなところもあるけれど、いつも元気いっぱい!

恋愛など、人間関係に悩む友達の相談事をルノルマンカードを使って応援をしていたのですが、ある日、同級生のひとりが同じようにルノルマンカードを使うようになり、周

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「消費される階級」著・酒井順子 読書感想文

「消費される階級」著・酒井順子 読書感想文

人気エッセイスト酒井順子さんの新刊。
読みやすく面白かったのですが、特別というわけでもなかったです。

印象的だったのは「おたくが先達、〝好く力〟格差」の章にあった、「おたくの人々の多幸感の源は、『好かれる』ことに無関心」という言葉。

私自身があまり人に好かれたいと思わないのはオタク気質だからか、と膝を打ちたくなりました。打たんけど。

また最後の章でキリスト教に触れており、酒井順子さんとは違う

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小説「オパールの炎」著・桐野夏生 読書感想文

小説「オパールの炎」著・桐野夏生 読書感想文

「ピル解禁」「中絶禁止法改正」運動の先頭に立っていた実在する女性をモデルにした作品。
ある女性ライターが彼女の近くにいた人物を取材し、そのインタビューを並べるという形式で小説が続いていく。
小説の中では「塙玲衣子」という名前になっているが、モデルとなったのは「榎美沙子」という女性である。
彼女の名前は以前に雑誌か何かで知り、私と同じ徳島県の出身であることは頭の片隅にはあったが、この小説と出合うまで

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小説「燕は戻ってこない」著・桐野夏生 読書感想文

小説「燕は戻ってこない」著・桐野夏生 読書感想文

現在、NHKでこの小説の連続ドラマが放送されていますが、なかなか観る機会が取れないので本で読みました。

主人公のリキは北海道出身の20代女性。
短大を卒業後、地元で就職するも介護職で給料が安く人間関係もうまくいかないため上京しますが、月給14万円の医療事務の派遣社員として働く日々。
ある日、病院で似たような暮らしをしている同僚から生殖医療ビジネスに誘われます。
同僚は途中で投げ出すものの、貧乏に

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「愛の絵」著・中野京子 読書感想文

「怖い絵」シリーズでおなじみ中野京子さんによるわかりやすい絵画の解説文です。
今回のテーマは「愛」。
ギリシャ神話の神様や有名な画家の自由な愛、それに因む絵が紹介されています。

私は絵心もなく、特段知識もありません。
今まで絵を見て感動したのは藤城清治さんの影絵だけです。
それなのになぜこの本を読むに至ったかというと、文学と歴史が好きだからです。
歴史が好きな人ってたぶんミーハーだと思います。

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「ハロルドとモード」コリン・ヒギンズ著 読書感想文

「ハロルドとモード」コリン・ヒギンズ著 読書感想文

自殺の真似事を繰り返す19歳の青年ハロルドは、他人の葬儀に出席する事が趣味の1つ。
ある葬儀で、自分と同じ様に故人と無関係の老女モードと出会う。無邪気に盗んだバイクや車で走り出す79歳のモードと過ごすうち、その天衣無縫ぶりに魅了されるハロルド。

モードの話す言葉はいつも自由で優雅。
凡人の素朴な疑問に地球レベルで返す奇抜な言動にハッとさせられたり笑ってしまったり。
創作の中にいるアウトサイダーは

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「女装する女」著・湯山玲子 読書感想文

「女装する女」著・湯山玲子 読書感想文

テレビのコメンテーターとして活躍していた湯山玲子さんを久しぶりに見かけたのはこの動画。

テレビのコメンテーターをしている時よりよくおしゃべりをされていてすごいなー、頭の回転早いんだなーと感心し、そういえば話題になった著書があったなと思いこの本を読むことにしました。

テンポの良い文章にありがちな一文が短いものではなく、長めのわかりやすい造りが全体的になされています。
気になったのは、引き合いに出

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「確実にお金を増やして、自由な私を生きる!元外資系金融エリートが語る価値のあるお金の増やし方」著・肉乃小路ニクヨ 読書感想文

「確実にお金を増やして、自由な私を生きる!元外資系金融エリートが語る価値のあるお金の増やし方」著・肉乃小路ニクヨ 読書感想文

私は基本的にこの手の本は読まないのです。
本になった時点で古い情報だと思うから。
ビジネス系の文章は主に週刊誌で読みます。
似たようなものですけど、やや鮮度は高めです。

それでは何でこの本を読んだかというと、肉乃小路ニクヨさんのファンだからです。
付き合い長めの方はご存じだと思いますが、私は男性の女装、女性の男装、ビジュアル系、黒柳徹子、などちょっとわかりにくくてとても化粧が濃い人たちに惹かれる

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「続・窓際のトットちゃん」著・黒柳徹子 読書感想文

「続・窓際のトットちゃん」著・黒柳徹子 読書感想文

〈 私はいまでも、シェパードが道を歩いていると、つい小さい声で「ロッキー!」と呼んでしまう。 〉

「続・窓際のトットちゃん」の1行目はこうして始まる。
ロッキーとは、作者である黒柳徹子さん(トットちゃん)が子供の頃に飼っていた犬の名前である。確か、ロッキーはトットちゃんが外出中にいなくなってしまった。軍用犬として戦争に連れていかれたのだ。
私はこの1行目を読んだだけで胸が痛くなった。
私も15年

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小説「仮縫」著・有吉佐和子 読書感想文

小説「仮縫」著・有吉佐和子 読書感想文

大好きな肉乃小路ニクヨさんのYouTubeで紹介されているのを見て読み始めた。

有吉佐和子さんの作品は今まで映像でしか見たことがなく。
「和宮様御留」、「悪女について」、「不信のとき」など。
「仮縫」という作品は、以前に舞台化されていたことを知っていたのみ。

読み始めてまもなく会話の小気味良さに舞台にはぴったりの作品なのだと納得。

洋裁学校へ通う清家隆子は、学校の先生からオートクチュールデザ

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小説「水の中の八月」著・関川夏央 読書感想文

小説「水の中の八月」著・関川夏央 読書感想文

ある女優さんのことを調べているうちにこの本に出合いました。
かつて、表題作である「水の中の八月」はドラマ化されていたようです。
乱用されがちな「透明感」という言葉が良く似合う題名が残暑のお供にふさわしいと思い、手を出しました。

表題作を含めて7つの短編が収められている一冊。
この本にはある特徴があります。
すべての作品に在日朝鮮人、在日韓国人、韓国に住む韓国人など韓国に関わりのある人が必ず登場す

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小説「狼の幸せ」著・パオロ・コニェッティ 読書感想文

小説「狼の幸せ」著・パオロ・コニェッティ 読書感想文

あまりに暑いので、雪山が舞台の本を読んでしまいました。
ちなみに私は山より海派です。
どちらかというと、山は苦手。
見るだけで、人生の壁を感じてしまうのです。
「これより向こうへは行けませんよ」
と言われている気がして。

主人公であるイタリア人ファウストは、フォンターナ・フレッダという山にあるレストランで料理人の真似事をしている。
山へ来る前は都会で小説家として活動をしていた。
ロマンチストで傷

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「親不孝介護」著・山中浩之 川内潤 読書感想文

「親不孝介護」著・山中浩之 川内潤 読書感想文

編集者である山中氏の遠距離介護経験談とNPO法人となりのかいご代表である川内氏の解説によって作られた一冊。

実は、この山中氏の文章のリズムが私にしっくりこなかったのと、母と息子という対娘とのそれとは全く違う関係性への違和感が何とも心地があまり良くなくて、途中で読むのを放棄していました。

先月くらいにラジオをつけたら、山中氏か川内氏のどちらかが出演しており、親と同居している子供が介護が辛くて家を

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「書く力」 加藤周一の名文に学ぶ 著・鷲巣力 読書感想文

「書く力」 加藤周一の名文に学ぶ 著・鷲巣力 読書感想文

思想家・加藤周一の名文を編集著述業である鷲巣力が紐解いた一冊。

出だしは加藤周一の文章を意識した小気味良い短文が続く。
加藤周一の文章を一つ上げては、内容の運び方を説明するパターンが繰り返されていた。

近年ビジネス雑誌などで「良い文章」として紹介される結果を先に置いて内容を明かしていく「PREP法」を始め、加藤周一の作品で取られている様々な文章の書き方が紹介される。

鷲巣力によってどんどん解

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