「続・窓際のトットちゃん」著・黒柳徹子 読書感想文
〈 私はいまでも、シェパードが道を歩いていると、つい小さい声で「ロッキー!」と呼んでしまう。 〉
「続・窓際のトットちゃん」の1行目はこうして始まる。
ロッキーとは、作者である黒柳徹子さん(トットちゃん)が子供の頃に飼っていた犬の名前である。確か、ロッキーはトットちゃんが外出中にいなくなってしまった。軍用犬として戦争に連れていかれたのだ。
私はこの1行目を読んだだけで胸が痛くなった。
私も15年前に亡くなった実家にいた雄犬と同じ犬種で、彼とよく似た風貌の子を見かけると、小さな声でその名前を呼んでしまうから。
まあ、そんな感じで読み始めた「続・窓際のトットちゃん」。
以前に発売された「窓際のトットちゃん」は、たぶん、私が初めて読んだハードカバーの本である。当時、小学校低学年でこれを読んだというと周囲の人々に大変驚かれた。読めるわけないと思われたのだろうが、そう出来たのだから仕方がない。
今でも覚えているのは、トットちゃんが通っていたトモエ学園の校長先生がお弁当の中に「海のものと山のもの」が入っているかと確認していたことくらい。あとは、トットちゃんの友達に病気の子や外国籍の子がいたことくらいかな。
この度の本では戦争直前の東京での暮らしから青森への疎開、また再び戦後の生活から挫折続きの青春が綴られている。
素直で正直すぎることで疎外されがちなトットちゃんを救うのは、子供の頃に学校の先生から言われた「君は本当はいい子なんだよ」という言葉。
また、時折現れる自分を認めてくれる存在。
私自身も高校生の時に「高校生らしくない」文章を書いたことである選考から外されたことがあるのだが、その時に現代国語の先生に言われた「ほんまにええ文章やと思うんよ」が支えとなっているところはある。まあ、それがあるから諦めがつかないところもあるのだけど。
子どものうちに誰かに認めてもらうという経験は、本人や周りの人間の想像以上に生きる力となる。
だから、私は読書感想文講座で出会う人たちにはお土産として何かしら自信になるような言葉をその時間中に織り交ぜるようにしている。
それはさておき、この「続・窓際のトットちゃん」。
よくその生活ぶりがTシャツなどグッズになっているニューヨーク行きが始まったところで終わっているんですが、これは「続・続・窓際のトットちゃん」があるということで、よろしいんですよね、トットちゃん。