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青空文庫コラム

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青空文庫のご作品の感想を伝えていきます!! 週に一つ以上、掲載いたします。
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2024年10月の記事一覧

夢幻の中にあって現実を見れば休みどき。 「ランプの影」 正岡子規 を読んで。(青空文庫コラム)

夢幻の中にあって現実を見れば休みどき。 「ランプの影」 正岡子規 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

病の牀(とこ)に寝ていると、天井の模様がなにものかの顔に見える。

今宵ははじめて、ランプの火影が像を結んだ。

鬼神、猿、西洋の哲学者、丸髷(まるまげ)の女、三宝荒神、耶蘇……。

最後は仰向けに寝た人の横顔。

(感想)

はじめ、現れたイメージから、主人公の心理を読み解こうと思いました。でもそれは、野暮なこと。想像は自由奔放がよろしいです。

病牀(びょうしょう)にあって、仕

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努力が機会につながる。能力主義でなく。 「無題抄」 上村松園 を読んで。(青空文庫コラム)

努力が機会につながる。能力主義でなく。 「無題抄」 上村松園 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

絵以外は、私(松園)には余技であり、とくに熱中する気にはなれない。

しかし、優れた才能のある人は、その余技においてもずば抜けている。

芸術は、自分の力の及ぶ限りをし、あとは神仏のお力にすがる。

機会はうっかりすると逃げ出してしまう。

機会を掴むのにも、不断の努力と精進が必要である。

(感想)

荘園は余技のことを考えたとき、絵の弟子である、九条武子夫人を思い出します。京都

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「洋灯」 横光利一 を読んで。(青空文庫コラム)

「洋灯」 横光利一 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

このごろ、停電が多く夜が暗い。
知人がランプをくれた。

それを見ていると、祖父の葬式や四人の叔母のことなどが思い出される。

(感想)

主人公は、彼の父が外国へ働きへ行くので、母の故郷で母子で暮らすことになった。そこは農村であり、(おそらく)電気がなく、どの家にもランプが用意してあったのです。

そこで暮らした三年間は、主人公には忘れ難い。

そのあたりに住んでいる四人の叔母た

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「雪の障子」 島崎藤村 を読んで。(青空文庫コラム)

「雪の障子」 島崎藤村 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

語り手は雪が降ったことに喜ぶ。

この雪の中での動きが、昔の人が表現に凝ったことだ。

この寒さに耐えてよく生きる強さがあった。

(感想)

雪の日の記憶は、語り手の幼いときに結びついています。坂道の凍ったところで、氷滑りをしていたのだと。

「降ったばかりの雪は冷たいようで、実は暖かい」。

そして、「雪の中にはいろいろなものが隠れている」と言います。

鷺娘という古舞がありま

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「物を大切にする心」 種田山頭火 を読んで。(青空文庫コラム)

「物を大切にする心」 種田山頭火 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

私はお遍路参りをしていた。親しく一緒に歩く人ができた。

その人は貰ったたくさんのマッチをたばこの火付に一本でいいところを何本も湯水のように使った。彼の信心に疑いを持つ。

あるマダム。女中が洗濯の水を溢れさせるが、彼女は澄ましている。

この人たちは、本当の意味の、ものの値打ちが、わかっているのだろうか?

(感想)

物を大切にする、というのは、正しいと思う。けれども、現代人の

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