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JW612 菅原伏見東陵
【景行即位編】エピソード1 菅原伏見東陵
西暦70年、皇紀730年(垂仁天皇99)7月1日。
纏向珠城宮において、第十一代天皇、垂仁天皇が崩御した。
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悲しみに暮れる中、日嗣皇子の大足彦忍代別尊(以下、シロ)は、大連や大夫たちに語るのであった。
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シロ「悲しい気持ちは、分かるが、速やかに、大王の陵を造らねばならぬ。」
ちね「左様ですな。立派な陵に、せんとあかんなぁ。」
オーカ「その名も、菅原伏見東陵にあらしゃいます。」
カーケ「宝来山古墳が治定されてるんだぜ。」
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くにお「二千年後の地名で申せば、何処になるのじゃ?」
武日「奈良県奈良市の尼辻町になるっちゃが。」
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ちね「ほな、早速、取りかかりまひょか。」
こうして、陵が築造され、12月10日、垂仁天皇は、葬られたのであった。
するとここで、垂仁天皇の兄弟姉妹がやって来た。
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のまお「『シロ』・・・。許せ。我らは、これにて、引退じゃ。」
ニカ「寂しいけど、仕方ないわよね、」
チック「まあ、本来の『記紀』においては、名のみの登場だから・・・私たち・・・。」
イカッピ「でも、やっぱり悲しいのよぉ!」
シロ「伯父上、伯母上・・・。これまで、大王を、お支えくださり、かたじけのうござりもうした。」
ヤサク「真に、寂しくなるのう。」
のまお「ん? 義兄上は、引退なされぬので?」
ヤサク「もうしばらく、出演する運びと、相成った。許せよ。」
ニカ「許せだなんて、そんなこと、言わないでちょうだい。それより、『シロ』を支えてくださいね。」
チック「そうよ。私たちの分まで、気張ってもらうわよ。」
ヤサク「かしこまった。」
イカッピ「それじゃあね。『シロ』ちゃん。」
シロ「最後の最後に、その呼び方とは・・・。もう、我は、日嗣にござりまするぞ。」
イカッピ「いいじゃない。私にとっては、永遠の『シロ』ちゃんなのよ。」
とにもかくにも、「ヤサク」を除く、垂仁天皇の兄弟姉妹が、クランクアップとなったのであった。
そして、年が明け、西暦71年、皇紀731年(景行天皇元年)となった。
その年の3月12日、あの男が、常世国から帰ってきた。
田道間守(以下、モーリー)である。
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モーリー「ただいま、帰って参りました・・・(´;ω;`)ウッ…。」
シロ「もう聞き及んでおるか?」
モーリー「大王が、昨年、お隠れになったと・・・(´;ω;`)ウッ…。」
シロ「して、これが、非時の香菓か?」
モーリー「はい。蜜柑です。八竿八縵にございます。」
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ちね「ん? どういうこと?」
モーリー「団子のように、串刺しにした形状のモノが、八つ。干し柿のように、縄で繋いだ形状のモノが、八つ。そういう意味です。」
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武日「八縵の方は『輪っか』になっちょるみたいやな? 『古事記』では、冠と表現されちょるじ。」
モーリー「そうですか・・・。」
シロ「して、常世国とは、如何なる処であった?」
モーリー「万里の波濤を越えて、遥かに弱水を渡りました。」
カーケ「弱水とは、どういうことかね?」
モーリー「遠く、遥かな河川・・・という意味です。」
くにお「海を越え、川を越えていったわけじゃな?」
モーリー「はい。そして、常世国に辿り着きました。そこは、神仙が隠れた処で、普通の人が参れる処ではありません。」
オーカ「そのような処に、よう辿り着けましたなぁ。」
モーリー「はい。それは、困難を極めました。そんな理由で、往復に十年も掛かったのです。」
シロ「左様であったか・・・。」
モーリー「高い波を越えて、戻ることなど出来ないのではないか・・・とも思いましたが、大王の神霊のおかげで、帰ってくることが出来ました。しかし、もう、大王は居られない・・・。言挙げ出来ないことが・・・(´;ω;`)ウゥゥ。」
シロ「これも、定めであろう・・・。」
モーリー「しかし、ただでは、転びません。『古事記』の記述に従って、八竿八縵のうち、四竿四縵を大后に捧げ奉り、残りを、大王の陵の入り口に供えたいと思います。」
シロ「大后?」
モーリー「はい。大后に捧げようと・・・。」
ちね「何、言うてんねん。大后なんて、居らんでぇ。」
モーリー「えっ? しかし、『古事記』では・・・。」
オーカ「『古事記』では、大后が、お隠れではないようですなぁ。」
シロ「何じゃと!?」
一体、どうするのであろうか?
次回につづく