JW424 仲国にて
【東国鎮定編】エピソード15 仲国にて
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは、日高見国(ひたかみ・のくに:現在の茨城県)。
崇神天皇の伯父、大彦(おおひこ)と多建借間(おお・の・たけかしま)(以下、カシマ)は、賊の鎮定(ちんてい)に成功した。
そして、豊城入彦(とよきいりひこ)(以下、トッティ)が、これに合流。
また、下記の者たちも合流した。
トッティの息子、八綱田(やつなた)(以下、つなお)。
そして、采女筑箪(うねめ・の・つくば)(以下、つっくん)である。
トッティ「・・・ということで、賊の鎮定、大儀(たいぎ)であった。」
大彦「当然『カシマ』には、何か恩賞(おんしょう)が有るのかな?」
トッティ「有りますよ。『カシマ』は仲国造(なか・のくに・のみやつこ)に任命されたっぺ。」
カシマ「かたじけのうござりまする。では、長者山(ちょうじゃやま)に屋敷を建てたいと思いまする。ここは台地となっており、那珂川(なかがわ)が見渡せる、地理的に重要な地にござりますれば、これほどの地は、何処(どこ)にも無いと思うておりまする。」
トッティ「そうすれば、いいっぺ。実際、奈良時代の官衙(かんが)遺跡も見つかってるっぺ。その名も、台渡里官衙遺跡群(だいわたり・かんがいせきぐん)だっぺよ。」
つなお「茨城県水戸市(みとし)の渡里町(わたりちょう)に有る遺跡のことですな?」
カシマ「官衙・・・すなわち役所・・・。それがしの屋敷が、のちに役所となるのか・・・。」
つっくん「でも、それだけじゃないんだよな?」
カシマ「その通りじゃ。それがしは、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)ったぞ。」
大彦「それが、水戸市飯富町(いいとみちょう)に鎮座(ちんざ)する、大井神社(おおいじんじゃ)なんだな。ちなみに『カシマ』自身も祀られてるんだな。」
カシマ「左様。なお『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』では、十三代目の成務天皇(せいむてんのう)の御世に、仲国造に任命されたと書かれておりまするが、この物語では『常陸国風土記(ひたち・のくに・ふどき)』に従って、十代目の御世に任命されたことになりもうした。」
トッティ「では、ことのついでに、汝(なれ)の古墳も紹介して欲しいっぺよ。」
カシマ「なっ! それがしの古墳にござりまするか? まだ、生きておるのですが・・・。」
トッティ「我(われ)もエピソード418で、自分の古墳を紹介してるっぺ。気にするな!」
カシマ「か・・・かしこまりもうした。水戸市愛宕町(あたごちょう)に、それがしの古墳、愛宕山古墳(あたごやまこふん)が有りまする。いつか、ここに眠るわけですな・・・。」
大彦「ちなみに、仲国は、のちに那珂郡(なか・のこおり)となり、二千年後は、ひたちなかし市や那珂市(なかし)などになっているんだな。」
つなお「大彦じいさま? 長者山は、水戸市渡里町だったと思いまするが?」
大彦「水戸市の北東部も含まれるんだな。二千年後の行政区画と、少し違うので注意なんだな。」
つっくん「ちょっと待ってくれってばさ。わてには、恩賞が無いのか?」
トッティ「心配するな。紀(き)の国を与えるっぺよ。『きの』・・・ということで、『毛野国(けぬ・のくに:現在の群馬県と栃木県)』の一部だったのではないかとも言われてるっぺよ。」
つっくん「きの? けぬ? んん? 似てるか?」
困惑する「つっくん」であったが・・・。
次回につづく