JW632 姓が違えば
【景行征西編】エピソード3 姓が違えば
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)8月15日。
ここは、纏向日代宮。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)は、筑紫(今の九州)に向けて出発した。
当然、そこには、見送る者たちの姿も有り、その中には「シロ」の兄弟たちもいた。
すなわち、五十瓊敷入彦(以下、ニッシー)。
大中姫(以下、ダッコ)。
稚城瓊入彦(以下、カキン)。
そして、誉津別(以下、ホームズ)である。
シロ「では、出立致しまする。」
ホームズ「国中(奈良盆地)のこと・・・任せよ。」
シロ「国中の護り、御願い致しまする。」
ニッシー「最終兵器なんて、言われたら、文句は言えないよね。何か有れば、僕の武が発動するから、安心しろ!」
シロ「兄上・・・。此度の我儘、聞いてくださり、かたじけのうござる。」
カキン「『ニッシー』兄上が、暴れたりしないよう、我が、しっかりと目を光らせておりまする。」
ニッシー「どういう意味だよ!?」
ダッコ「私も、しっかりと子守しますので、御心配なく。」
ニッシー「誰の子守だよ。僕じゃないよね?」
ダッコ「さ・・・さぁ、どうなんでしょうね。」
シロ「うむ。『ダッコ』も『カキン』も、兄上の子守を頼むぞ。」
ニッシー「おい! 『シロ』! はっきり言うな!」
こうして、十七人と二匹の一行(それから、兵士や従者たち)は出発した。
旅は順調に進み、9月5日、一行は、周芳国の娑麼に至った。
シロ「して、二千年後の地名で言うと、何処になるのじゃ?」
たっちゃん「山口県防府市の佐波にござる。」
シロ「わざわざ、地名が紹介されたということは、ここで、何か有るのじゃな?」
ヤヌシ「その通りなり!」
するとそこに、三人の男が駆けつけてきた。
すなわち、多の臣の武諸木(以下、モロキ)。
国前の臣の菟名手(以下、ウナ)。
物部の君の夏花である。
モロキ「エピソード410以来の登場にござる!」
ウナ「お初にお目にかかりまする。『おい』が『ウナ』にござる。」
夏花「我も、初登場にござる。」
シロ「ん? 如何致したのじゃ?」
モロキ「忘れられておりました。」
シロ「ん?」
ウナ「此度の御幸に、我らも同行しておりますのに、作者が、参加者に加えるのを忘れていたのでござる!」
夏花「なんと、口惜しいことよ!」
シロ「そ・・・そうであったか・・・。」
いっくん「ちょっと待ってください。」
シロ「ん? どうしたのじゃ?」
いっくん「夏花殿は、物部って言うてますけど、親戚の集まりで、汝を見たことなんて、無いんやけど・・・。」
夏花「それは、当然至極のこと・・・。我は、物部でも、物部の連にあらず。物部の君にござりますれば・・・。」
もち「あっ! 姓が違うっちゃ!」
いっくん「どういうことやねん。何で、姓が違う物部が居てんねん!」
夏花「そのようなこと、申されましても・・・。」
舟木「して、夏花殿は、どういった一族なのじゃ?」
夏花「よくぞ聞いてくだされた。我は、豊城入彦こと『トッティ』様の曾孫で、八綱田様の孫じゃ。」
ナッカ「そうなると・・・。」
シロ「東国を治める、彦狭島王こと『サッシー』の息子じゃ。」
タケ「ちなみに『サッシー』の子孫は、上毛野氏と下毛野氏に別れることになるぞ。」
いっくん「とにかく、物部は、物部でも『わて』とは、系統が違うんですね?」
タケ「そういうことじゃな。」
小左「ところで、我は『ウナ』殿も気になっておりまする。」
ウナ「はて? なにゆえに?」
小左「国前という氏が、初耳にござるゆえ・・・。」
シロ「そう思うのも詮無きこと・・・。『ウナ』は、筑紫の豪族なのじゃ。」
小左「えっ?」
ウナ「左様。『おい』は、二千年後の大分県の国東半島を治めている豪族にござりますれば・・・。」
ワオン「それゆえ、聞いたことが無かったのじゃな・・・。」
野見「されど、筑紫の豪族が、なにゆえ、娑麼に?」
ウナ「お迎えに上がった次第・・・。筑紫を進むに、先導は要り様かと・・・。」
野見「なるほど・・・。」
シロ「ん? そのようなことを語っておったら、何やら、怪しき煙が・・・。」
煙とは?
次回につづく
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