JW447 氷香戸辺来訪
【崇神経綸編】エピソード22 氷香戸辺来訪
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
年が明け、紀元前36年、皇紀625年(崇神天皇62)となった。
ここは、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
日嗣皇子(ひつぎのみこ:皇太子のこと)の活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)の元に、妃の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)が、慌てて駆けこんできた。
さっちん「皇子(みこ)! 皇子!」
イク「どうしたの? さっちん? もしかして、やや(赤ちゃん)が出来たの?」
さっちん「うっ・・・。そ・・・その兆(きざ)しは、まだです・・・。」
イク「じゃあ、どうしたの? そんなに慌てて・・・。」
さっちん「お客様が参っておられます。その名も、氷香戸辺(ひかとべ)殿です。丹波(たにわ:現在の京都府北部)の氷上(ひかみ)を治めておられる御仁(ごじん)にござりまする。」
イク「戸辺(とべ)ということは、オナゴ(女)だね? 地方を治める巫女(みこ)のような存在なんだよね? でも、氷上って、二千年後の何処(どこ)になるんだろ?」
さっちん「気になるのは、そこですか? ちなみに、氷上は、兵庫県丹波市(たんばし)の氷上町(ひかみちょう)にござりまする。市役所が有る盆地一帯が、氷上町のようですね。」
イク「でも、丹波って、京都府北部を指すんじゃなかったの? 兵庫県になってるよね?」
さっちん「兵庫県の一部も、丹波になるようですが、それより、気になりませぬか?」
イク「何が?」
さっちん「なにゆえ、氷上を治める御仁が来たのか・・・。」
イク「そう言われてみると、そうだね・・・。なんでだろ?」
するとそこに、しびれを切らした氷香戸辺(ひかとべ)(以下、カト)がやって来た。
カト「お初にお目にかかりまする。あたいのことは、『カトちゃん』と呼んでくださりませ。」
イク「こちらこそ、よろしく御願いします。ところで『カトちゃん』は、どうして来たの?」
カト「実は、あたいの幼い子供が、変なことを言い出したのです。」
さっちん「変なこととは?」
カト「玉菨鎮石(たまものしづし)・・・。出雲人(いずもびと)の祭(いのりまつ)る・・・。真種(またね)の甘美鏡(うましかがみ)・・・。押し羽振(はふ)る・・・。甘美御神(うましおんかみ)・・・。底宝御宝主(そこたから・みたからぬし)・・・。山河の水泳(みくく)る御魂(みたま)・・・。静挂(しづか)かる甘美御神・・・。底宝御宝主・・・。」
さっちん「玉菨鎮石・・・。玉のような水草の中に沈んでいる石・・・。」
イク「出雲人の祭る、真種の甘美鏡・・・。出雲人が祈り祀(まつ)る見事な鏡・・・。」
さっちん「押し羽振る、甘美御神・・・。力強く振るう立派な神の鏡・・・。」
イク「底宝御宝主・・・。水底(みなそこ)の宝、宝の主(ぬし)・・・。」
さっちん「山河の水泳る御魂・・・。山河の水の洗う御魂・・・。」
イク「静挂かる甘美御神・・・。沈んで掛かっている立派な神の鏡・・・。」
カト「底宝御宝主・・・。水底の宝、宝の主(ぬし)・・・と言ったのです。」
一体、どういうことなのか?
次回につづく
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