「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」⑧リラックスを思い出す。
介護をされている方は、こうした、コロナ禍の日常になる前からも、毎日、ずっと気が抜けない時間が続いていると思います。
介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと継続している感覚だけは、周囲の状況がどうなっても、もしかしたら、変わらないのかもしれません。そして、その感覚は、他の方々には、なかなか理解されにくいことだと思います。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。いつも読んでくださる方には、繰り返しになり、申し訳ないのですが、私も家族の介護をしていた時期があります。(リンクあり)。その時間の中で、家族介護者の方の、こころのサポートが必要だと考え、臨床心理士になりました。
このnoteの記事も、できたら、家族介護者のために、少しでもお役に立てれば、と始めて、続けています。
リラックスを思い出す
このシリーズも、8回目になりますが、今回は「リラックスを思い出す」というテーマで進めたいと思います。こういう時には、「リラックスする方法を身につける」の方が、分かりやすいのかもと思いましたが、家族介護者に行ってもらうとしたら、まずは「リラックスを思い出す」という段階から始めたほうが現実的ではないか、と思いました。そして、少しでもリラックスすることができれば、介護の大変さを、少しでもやわらげることができると思います。
最初に具体的な方法から、紹介させていただきます。
心療内科でも行われる筋弛緩法はたった10秒でOK
筋弛緩法
① ベッドの上であおむけになり、手のひらを上向きにして軽く目を閉じます。
② 手はグーににぎり、足のつま先は天井に向け、顔からつま先まで全身にぐっと力を入れて、5秒間キープします。
③ 息をふーっと吐きながら全身の力を抜いて、そのまま5秒間キープ。②と③を3回ほど繰り返します。
こうした柔かい語り口の方が、その方法を試しやすいかもしれません。
さらにいえば、この筋弛緩法は、確かにかなり以前から行われていますし、厳密にいえば、もっと細かい教示などもあります。
ただ、リラックスに向かうのであれば、この最低限のポイントをおさえて、少しずつおこなっていけば、効果があると思います。
わざわざ時間がとれない家族介護者にとっては、この方法で、徐々に、「リラックスを身につける」ことができれば、本当に望ましいことだと思います。
リラックスを思い出せない
ただ、これは個人的な感覚ですが、こうした「リラックスのための方法」は、今は「リラクゼーション」という言葉を使われる方が多くなったと思うのですが、こうした方法を試みると、人によっては、特に最初は、うまくいかないことが多いのではないでしょうか。そのために、諦めることになるような気がします。(私も、そうでした)。
特に、家族介護者は、長くなるほど「24時間、365日体制」での介護をしているわけですから、その間は、強弱の程度はあっても、日常的に緊張状態が続いています。そのせいで、リラックスの方法を身につけようとしても、そのスタート時点で、とまどう事が多いように思います。
そして、それは、介護を丁寧に行われている方ほど、そうなりがちで、ある意味では、自然なことだと思います。
今回紹介した方法だけでなく、皆様が「これをやってみよう」と思った、どのようなリラックスの方法でもいいのですが、最初に取り組んだ時に、まったくリラックスできなくても、できましたら、あきらめないでください。まず最初に、大事なのは、自分が緊張していることを分かることだと思います。
そして、リラックスが思い出せないことを自然なこととして受け入れて、そこから、少しずつ始めるのは、どうでしょうか。
リラックスを味わう
最初は、ほとんどリラックス出来ない状況から、出来たら継続的に、おこなっていって、少しずつでもリラックスできていくことを目指すといいと思います。
そして、今は、よく言われるようになっているのが、リラックスを蓄積する、といったことのようです。
少し分かりにくいのですが、それは、冒頭で紹介した方法での、③の部分です。
息をふーっと吐きながら全身の力を抜いて、そのまま5秒間キープ
真面目な方ほど、こういうところで、がんばってしまいます。
それは、美点でもあるのですが、こうした場合に、「5秒間キープ」という言葉によって、その状態を保たなくてはいけない、といった気持ちになってしまいがちではないでしょうか。
それは、正しくはあるのですが、この場合は、キープする、という意識を持つよりは、「リラックスを味わう」気持ちになることに、近いと思われます。
長年、緊張状態が続くと、おそらく最初は、リラックスがよく分からないことがあります。そういうことは、ある意味で、自然ではあるのですが、それでも、こうしたことを続けると、あ、これかな、という感覚はわかってきます。
力を目一杯入れて、力を抜いた部分が、じんわりと、ちょっと暖かくなるような感じです。それは、人によって、微妙に違うとは思うのですが、そのじわじわした感じが味わえるようになれば、リラックスを思い出したことになると思います。
リラックスを蓄積して、起こること
そして、そのリラックスを思い出し、味わえるようになり、その時間が蓄積することによって、少し大雑把な言い方になりますが、ストレスに対して、強くなるといわれています。
なんとなくイメージとしては、ストレスに強くなるために、我慢する力みたいなものを鍛える、といったように考えてしまうのかもしれません。ただ、それは、逆で、リラックスできる時間を蓄積していくことで、ストレスに強くなる、というのが現在の常識のようです。
介護をしていて、ストレスは増えることはあっても、減ることはありません。そういう状態が続いているので、介護中の突発的な出来事に対して、つい怒ってしまうことがあると思いますが、それを怒らないようにするのは、どれだけ意志の力があっても、相当に難しいことだと思います。
それよりも、介護とは別の時に、数分でもいいので、冒頭で紹介したような(ご自分が知っている他の方法でも、もちろん大丈夫です)リラックスを蓄積する方法をおこない、そのことによって、ストレスへの耐性を強めれば、もしかすると、介護の時に、これまでなら怒ってしまうような出来事があっても、怒らずにすむ可能性が高まるかもしれません。
深呼吸のポイント
おそらく、今までも、落ち着くために深呼吸をしなさい、といったことは、あきるほど言われてきたと思います。ですので、「深呼吸」といわれると、ちょっとうんざりしたり、わかっていると思いがちです。
それでも、もし、よかったら、時間もかからず、介護の合間でも出来ることなので、一度は試してもらえませんか。
深呼吸のポイントは、いくつかあります。
ゆっくり息を吸って、吐くこと。
できたら、深く呼吸すること。
吐く息の方を長くすること。
偉そうになって、申し訳ないのですが、これだけ気をつけて、試してみてください。(吐く息の方を長くすることによって、リラックスに関係ある副交感神経が刺激される、といわれています)。
おそらく最初は、思った以上に浅い呼吸をしていると思います。緊張状態を持続している家族介護者にとっては、リラックスしたり、力を抜いたりするのが難しい状況にいるので、それが自然なことだと思います。
それでも、そこから始めて、少しずつでも呼吸が深くなっていけば、というくらいの、ゆったりした気持ちで、深呼吸を3回くらい行う習慣がつけば、少しずつでもリラックスが蓄積していくと思います。3回ゆっくり深呼吸しても、1分くらいですむはずです。
これも、体が少しでもゆるむ感じも思い出してもらって、それを味わう時間が数十秒でもあれば、ほんの少しかもしれませんが、リラックスを思い出し、そのうちに、ストレスへ少しずつ強くなっていくと思います。
今回は以上です。
少しでも、負担感が減ればいいのですが、もしも、合わない場合は、他の方法も試していただければ、(リンクあり)幸いです。
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