川代紗生(カワシロ・サキ)

小説・エッセイ・取材など。新刊小説『元カレごはん埋葬委員会』発売中→ www.amazon.co.jp/dp/4763140965 |エッセイ『私の居場所が見つからない。』|noteは日記|問い合わせはサンマーク出版までお願いします!

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【小説『元カレごはん埋葬委員会』】第1話:元カレが好きだったバターチキンカレー「あなたに好かれる女のふり」

 女をふる場所に、よりにもよってラブホを選ばなくたっていいでしょうが、ばかー!  渋谷のラブホテルのベッドの中で、私は嗚咽をこらえるのに必死だった。  本音を言えば、もっとちゃんと大声で泣きたかった。おーいおいおいという文字が口から飛び出てくるくらいわかりやすく泣きたかったけれど、唇を噛み締めて我慢した。これは最後の意地なのだ。  なぜなら、人ひとりぶん開けたすぐ隣に、ついさっき私をふったばかりの憎たらしい男——高梨恭平が、寝ていたからだ。  背を向けているから顔は見えないけ

    • 【日記】嫉妬するならいっそ真似してしまおう精神

       こんなに嫉妬するならいっそ、真似してしまおう。  あるときふと、そんなことを思った。嫉妬しすぎて気が狂いそうになったすえに思いついた解決策だった。  私はもともといろんな人にすごく嫉妬してしまうたちで、たとえば、痩せてがらっと垢抜けた友達を見たりすると、途端に自分の容姿のコンプレックスがいろいろと気になってきてしまうし、あるいは自分と同年代の作家さんの本が売れているのを見るだけでも「はあ……私はなんてだめな人間なんだ」「こんなにすごい人たちが書いてるのに……。私って才能ない

      • 【日記】執筆時の集中力がぐーんと上がったアイテム《3000円台》

         えー、みなさま、こんにちは。川代紗生でございます。  今日は唐突ですが、ここ最近で買ったもののなかでも、かなり、かなりよかったものについて語りたいと思います。いやね、私、もともとあんまりものにこだわるほうの人間ではなくて、いろんなものをけっこう適当に選んじゃうんですよ。だから、「これがないと無理!」みたいに思うほどの強い愛着をものに抱くことってあんまりないんだけど、これにかんしては絶対手放せないし、もしなくしたら絶対速攻でもう一個買っちゃうっていうくらい気に入っています。

        • 【日記】首のシワの広告に、悩みを先取りされる気分

           首のシワの広告に、妊活のコツを教えてくれるSNSのポストに、求人情報をわざわざ毎朝送ってくるダイレクトメールに、悩みを先取りされている気分である。あ、それ、自分で悩むタイミング選びたかったんですけど。首のシワがつるっとなくなる! みたいな広告が目に飛び込んできてから、鏡を見るたびに自分の首のシワをチェックする癖がついちゃったんですけど。妊活しなきゃいけないのかなとか、次のキャリアについて考えたほうがいいのかなとか、そういうのぜんぶ、自分のタイミングでいきたかったんですけど!

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        【小説『元カレごはん埋葬委員会』】第1話:元カレが好きだったバターチキンカレー「あなたに好かれる女のふり」

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        • 小説制作日記【元カレごはん埋葬委員会】
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          【日記】若いがゆえの青さや繊細さを、いつまでも大事にとっておきたくて

               わざと、傷つこうとしていた。自ら傷つきにいこうとしていた。傷つく自分にほっとしたし、自分がまだ心のどこかに繊細さを持っていることをたしかめたくて、あえて、誰かに言われてショックを受けた言葉を何度も、何度も何度も、頭の中で再生したりしていた。  若いがゆえの青さや繊細さを、いつまでも大事にとっておきたかった。歳を重ねるごとに傷つきやすさが薄くなってゆく自分に、焦りやさびしさを感じたりもした。いや、図太くなったとか、メンタルが強くなったとか、そういうわけではないのだろう

          【日記】若いがゆえの青さや繊細さを、いつまでも大事にとっておきたくて

          【日記】積ん読の効能。リマインダー機能としての本棚。「問い」を覚えておくための行為なのかも。

             なぜ、積ん読をするのか。  積ん読。すなわち本を積んでおくこと。まだ読みかけの本があるのに、本屋でおもしろそうな本を見かけるとつい買ってしまうこと。本を買って満足してしまうこと。これから読むべき大量の本に囲まれているというだけでなんだか胸がほくほくすること(それは私)。  まあとにかく、私は積ん読ニストである。積ん読がやめられない。自宅には最後まで読んでいない本がたぶん、200冊以上はある。重症である。いや、自分でもわかってはいるのよ、あんた、読みかけの三島由紀夫、読み

          【日記】積ん読の効能。リマインダー機能としての本棚。「問い」を覚えておくための行為なのかも。

          【執筆日記:9月3日〜22日】いい文章を書くのに必要な「適切な恐れ」/帰り道の雨/江ノ島トリップ

          書いているあいだに気づいたこと、考えたこと、感じたことを忘れたくないと思って、執筆日記を書き始めた。そのときの感情はそのときだけにしか味わえないものだからね。と言い訳しつつ、自分を励ますためにメモしているだけかも。 9月3日(火)   朝、散歩に行く。いいアイデアを思いついた。帰り道に雨がふったおかげで雨の描写のストックが増えた。   9月4日(水)   区切りのいいところまで書き終わった。今日は物語の山場になる部分を書いた。エネルギーを大量に使ってへとへとになった。 この

          【執筆日記:9月3日〜22日】いい文章を書くのに必要な「適切な恐れ」/帰り道の雨/江ノ島トリップ

          【日記】文章を書くのに向いている人。10年書き続けて思うこと。

             日常的に文章を書くようになって丸十年経っていたことに、ついさっき気がついた。  いやー、長いですね。っていうか、まじで早いですね。十年だよ。十年? ついこのあいだ書きはじめたばっかり、みたいな気持ちでいたのにさ。二十一歳の大学生だった私が三十一歳になり、ブログを書き、エッセイを書き、ライターになり、小説家になった。ここまで続けてこられてほんとうにうれしい。いや、ありがたいことです。    さて、十年も書いてたらさぞや文章がお上手になったんでしょうね(ニヤ)と自分で自分に

          【日記】文章を書くのに向いている人。10年書き続けて思うこと。

          【日記】「苦労」というものの持ついい面をあえて探すなら

             父は本当はこういう人だったんだ、と少しずつわかるようになっていく。両親が言いたかったこと、感じていたこと、苦しんでいたこと。といっても、人間というのは変わるものだし、かつての父と今の父とでは別の考え方を持っているかもしれないが、それでも、昔よりはずっと、彼を、彼というひとりの人間として理解できるようになっていることが、たまらなくうれしいと思った。  先々週のことである。ひさしぶりに家族でごはんに行った。  地元の駅からしばらく歩いた、父おすすめの居酒屋のボックス席で。

          【日記】「苦労」というものの持ついい面をあえて探すなら

          【執筆日記:8月13日〜29日】同世代の作家さんへの嫉妬が止まらない/うまく書けないときの対策/ストレス発散からあげ

          8月13日(火) 今日は1日家に引きこもっていた。全体のプロットは一応見えてきたので、今度は細かいプロットを考え始める。 先週から読み始めた『ベストセラー小説の書き方』を読み終わる。クーンツ先生、すごい。紙面越しにひれ伏したい気持ちになる。 とくに「間接話法」と「直接話法」の違いを読んだときにはドキーッとさせられた。小説を書き始めてから悩んでいたことへの答えが、ありありと、そのまんま、ストレートに書かれていたからだ。そうそう、まさにそれに悩んでたのよ! このところ悶々として

          【執筆日記:8月13日〜29日】同世代の作家さんへの嫉妬が止まらない/うまく書けないときの対策/ストレス発散からあげ

          【執筆日記:8月9日〜12日】能力の限界をさとったときには/喫茶店でプロット/常連認定/取材

          書いているあいだに気づいたこと、考えたこと、感じたことを忘れたくないと思って、執筆日記を書き始めた。そのときの感情はそのときだけにしか味わえないものだからね。と言い訳しつつ、自分を励ますためにメモしているだけかも。が、がんばれ俺! 8月9日(金) 新しい小説の執筆が行き詰まり、全体のプロットをゼロから練り直すことに。編集者さんにたくさんアドバイスをいただいた。ありがたい。ありがたすぎる。と同時に、自分の実力のなさに泣けてくる。埋まりたい。地層の奥深くまで引きこもりたい。お

          【執筆日記:8月9日〜12日】能力の限界をさとったときには/喫茶店でプロット/常連認定/取材

          【日記】「がんばれないコンプレックス」を克服するために必要だったこと

             わたしはかつて、「がんばれない若者」だった。  自分でも、自覚していた。おそらく、自分がいちばん、自覚していた。「がんばれない」ことはもはや、コンプレックスの一つだと言ってもよかった。  がんばりたくないわけでは、決してなかった。むしろ、目の前のこと、たとえば部活や勉強や仕事に打ち込んでいる同世代の子たちを見ては、羨ましくなった。どうして自分には、”あれ“がないんだろう。のめりこめるもの、夢中になれるもの、子供に戻れるもの、一度それに没頭すると、そこから抜け出せなくなる

          【日記】「がんばれないコンプレックス」を克服するために必要だったこと

          【日記】「とりあえず」で書きはじめてみないと見つからないこと

             しばらく、noteの更新が途絶えていた時期がある。  過去の記事リストの「2ヶ月前」「3ヶ月前」などの更新記録を見てもらえればわかると思うが、1ヶ月に1、2回程度しか更新できなかった。  このnoteでは更新ペースはとくに決めておらず、思いついたときに書くスタイルをとっていたものの、一応「日記」を名乗っているのもあって、できるだけ、日々感じた出来事をこまめに記録しておきたかった。  が、書けなくなってしまった。というより、書こうとすると、手が止まる、という感じだろうか。

          【日記】「とりあえず」で書きはじめてみないと見つからないこと

          【日記】31歳、お気に入りの喫茶店で自分を取り戻す。コーヒーのハンドピッキングの音を聴きながら。

             お気に入りの喫茶店がある。  駅から小道を抜けて数分歩いたところに、その店はある。「喫茶店」という名前がまさにぴったりのところだ。木目の模様がしっかりと浮き出たテーブルと椅子、店主の趣味が全開の本棚、少し酸味のあるコーヒーの香り。この店で採用されているのは、布製フィルターを使ったネルドリップ方式だ。注文するたびに毎回違うカップでコーヒーが出てくるところも、たまらない。  一階のカウンター席が、いちばん好きだ。  このお店には手帳やノートを書いたり、原稿の読み直しをしたり

          【日記】31歳、お気に入りの喫茶店で自分を取り戻す。コーヒーのハンドピッキングの音を聴きながら。

          【日記】「選んだ道を正解にする」思考の危うさ、たまには後ろ向きに。

            「『正解の道』なんてものは存在しない。自分が選んだ道を『正解』にするしかないんだ」という考え方がある。ビジネス書などでもときどき見かけるやつだ。一般社会で成功する人というのは、得てしてこういう哲学を持っていたりする。現状を正解にする力。自分が選んだものを肯定し、行動し、まわりにも「あのときはどうなることかと思ったけど、なんだかんだ、あの道を選んだのが成果につながったよね」と認めさせる、その勢い。  選んだ道を正解にする力。  わたしも以前は、その考え方を大事にしていた。一

          【日記】「選んだ道を正解にする」思考の危うさ、たまには後ろ向きに。

          【日記】「文庫専用本棚」を買ってみたら《ここ1年で買ってよかったもの》

           唐突だが、非常に唐突なことは理解しているが、ここ1年で買ってよかったものの話。  みなさん、「文庫専用本棚」とやらをご存知ですか。ええ、その名の通り、「文庫本しか入らない本棚」です。新潮文庫、講談社文庫、ちくま文庫などなど、小さな文庫本を整理するための本棚を、ついに買いました。いつだったかな、今年? いや、去年?(適当すぎる)まあいずれにしろ、購入してから半年から1年くらいは経ったかな、というところです。  買ったのは、楽天で。「家具衛門」というメーカーの、「文庫本専用本

          【日記】「文庫専用本棚」を買ってみたら《ここ1年で買ってよかったもの》