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#ダークファンタジー
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
マガジンにまとめてあります。
暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 第40話
アルトゥールはいつもよりもずっと精神を集中させて、ネフィアル 女神への長い祈りを詠唱した。
祈りの声は低く小さく、 離れたところにいるグランシアたちの耳にはほとんど入らないだろうが、傍らに横たわるアストラには聞き取れたはずである。
アストラは、ただ黙って横たわっていた。目を閉じ、両手を胸の前で組み合わせて静かに待っている。
アルトゥールは詠唱を続けた。いつも戦いに赴いた時には、即座に
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』33話
一行はクレアに連れられて、図書館の離れにある作業場に入っていった。
図書館本館は、クレアの実家のような小貴族の館を思わせる。対照的に離れはもっと簡素で、庶民の暮らすレンガの家の様子に似ていた。
グランシアは、魔術師ギルドの出来事を話した。三人の上位魔術師が病に倒れた。そのうちの一人はグランシアの師匠である、と。
これだけの事が出来るのは、ハイランという名のネフィアル神官をおいて他には
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 32話
アルトゥールは、紫水晶の色の瞳の視線をいったん卓上に落としてから、美貌の女魔術師に向け直す。
「本来は、誰かに代償を支払わせた上でなら、それに対して逆恨みしてネフィアルにさらなる報復を願うことは出来ない」
ネフィアル神官としての力を持つ青年は淡々と告げた。意図的に感情を消して、冷淡にも見える態度を示してした。
「しかしハイランがしているのは、正当なる裁きのための手続きとは言えない。だから
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』28話目
それで、アルトゥールは静かに尋ねた。
「ハイランはきっとジェナーシア共和国の法を犯しているだろう。それもかなり。そこを押さえれば、僕たちは法の観点から見て、罪を犯さずには済む」
けれど暗殺を望むのなら。
「僕にはそれは出来ない」
「老婆の願いを叶えるために、ジュリア様がおられる場所にあっしと侵入しなさったのに、ですかい?」
「ああ、そうだな。誰かハイランに復讐を願うのか?」
それ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第20話
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青い煙のような大男は黙って二人を見つめていた。 恐ろしげな顔立ちではあるが、怒りや危害を加える意図は見えない。 むしろ、静かで落ち着いた表情を見せている。外見の恐ろしさに囚われず、よくよく見てみれば、その静かな穏やかさが分かるのである。
アルトゥールはこの時、相手の静穏さをしっかりと見ることができた。彼はかまえていたメイスを下ろした。
武器を腰のベルトから
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第19話
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「それでどうするんだ? クレア子爵令嬢のところへ行くか? それともやっぱり、グランシアを頼るのか?」
と、リーシアン。ジェナーシア共和国における愚かな大衆よりも、そちらの方が気になるようだ。
「正直なところ、まだ決められないな。お前はどう思う? 魔術師ギルドよりも、クレア子爵令嬢の図書館へ行った方がいいと思うのか」
「俺はそうしてほしい。 グランシアに含むとこ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第18話
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二階も一階と同じように、荒れた光景を見せている。蜘蛛の巣が天井から壁際に掛かり、足元には、踏むと足跡が残るほどのほこりが積もっている。
アルトゥールとリーシアンは、そろって廊下を進んだ。階段は屋敷の隅にある。廊下は真っ直ぐに伸びている。左右に三つずつの扉があった。
いずれも深い褐色の木目のきれいな扉で、ぶどうのつると葉と実を型どった彫刻が表面にほどこされて
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第17話
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リーシアンは、それを聞いてにやりと笑ってみせた。 後ろから続いて階段を上がる。
「俺はハイランのことは気に入らん。かなり危険な奴だと思っている。しかし少なくともこの件に関する限り、お前は、いや俺たちはと言った方がいいな、救われた面もあるんだ」
ここで言葉を切って、紫水晶の色の瞳の青年神官の視線を正面から受けとめた。二人とも階段の途中で立ち止まる。
「お前の
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第16話
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そこからアルトゥールはジュリアと別れて行動することにした。ジュリアは神殿にこの件を報告すると言った。
「せいぜい、もみ消されないようにしてくれ」
例によって皮肉な物言いになる。ジュリアは何も答えなかった。あきれたようにため息をついて、
「では失礼します、あなた方も気をつけて」
そう言い残してヘンダーランの屋敷の前から去っていった。
ラモーナ子爵令嬢
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第10話
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アルトゥールは、すぐには庭に出なかった。扉の影からハイランの様子を見張る。庭は荒れ果て、草が腰の高さまで茂っているが、見通しは利く。門までハイランが歩いてゆくのが見えた。
ハイランは門を開けた。大きく開け放ったわけてはないので、アルトゥールの位置からは馬車も御者も、令嬢の姿も見えない。頑丈な板状の木の門の影に隠れているようだ。
ハイランの姿も門の影に消えた