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#ノスタルジア

【写真/旅】君は砂浜に裸足のままで。筒石への旅。

【写真/旅】君は砂浜に裸足のままで。筒石への旅。

場所:糸魚川市 筒石地区

海沿いの国道8号線はそれをバイパスする道が高速道路以外に無いことから車の途絶えることが無い。

当然ながらその自動車の中には生きた人間が入っているので、傍から見れば歩く人も少ない小さな小さな漁村が点在しているだけだが、上越地方という大きな生き物を構成し呼吸を助ける沢山の器官と血液が常に脈動していることがわかる。

山が海に迫る小さな平地に肩を寄せ合うように建ち並ぶ家達。

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【写真/旅】超三次元的猫町 能生地域

【写真/旅】超三次元的猫町 能生地域

場所:新潟県糸魚川市 能生地域

萩原朔太郎の数少ない小説である「猫町」

あれに触れて以来、いつも旅先では自分の中の想像上の猫町を補強してくれるような町を探している。
例えば長野の渋温泉だったり、静岡の由比などがそうで、上海の路地裏もそれに近かった。

本当は自分の家から何間も離れていない所に見つけることができれば最も望ましいのだけど、生憎現在の住まいはすっかり綺麗に整備されてしまっていて、定規

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最果ての町、市振へ。(新潟県)

最果ての町、市振へ。(新潟県)

県境は「境川」という身もふたもない名前の川で隔てられていて、これまた「境橋」という、この上ない名前の橋が二つの国を繋いでいた。

宇宙から見ると国境など人間が勝手に引いた線でしかないという言い回しはよく聞くけれど、ここでは自然が引いた線に人間達が従っているかたちだ。

秋の陽は短い。山が高いところでは特に。
海岸へ出る。今しがた通り過ぎてきた親不知の断崖を望む。
海に張り出しているため、その崖で終

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レトロデザインと宮﨑あおいのFM3A

レトロデザインと宮﨑あおいのFM3A

昨日発表されたNikon Zfc

2000年代の呪縛から逃れられなかったまま今に至り、ノスタルジアと後悔の渦のなかを生きる夢遊病患者である僕にとって、あのペンタ部のデザインは特別な意味をもちます。

あれはFM2。

00年台のカメラ女子とそこにコバンザメのように連なるサブカル男達のスタンダードであったFM2そのものだったんです。

見た瞬間20年前の思い出がフラッシュバックし、いま広告の中でそ

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きみは古い建物にフェティッシュがあるね。

きみは古い建物にフェティッシュがあるね。

古い建物や道具が好きだ。

金属や木でできていて、できれば自分の年齢よりも長くこの世に存在しているものがいい。
物にも神が宿るという話を、文字通りに信じているわけではないけれど言葉としては好きだ。

そして、それを使っていた人たちが居たという痕跡が傷や変形によって記録されていること、そもそも今もそのモノが存在しているということ自体が、それを作った人が存在したという確かな証拠。
モノは作ろうという意

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【写真/旅】記憶の中の昭和、もしくはそれ以前。栃尾地域への旅

【写真/旅】記憶の中の昭和、もしくはそれ以前。栃尾地域への旅

場所:新潟県長岡市 旧栃尾市地域

午前中は晴れていたのに、午後からの空の色は空きチャンネルに合わせたTVの色だった。

この地域を構成する、いかにも日本的な彩度の少ない建物達はその演出性の低い光のお陰でますます淡くなり、陳腐な表現だが、さながら昭和後期の写真の世界だった。実際にその頃の建物が多く残っているように見える。

調べてみると人口のピークは1950年代とある。そこからニ三十年程度と見積も

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【写真/旅】海岸線を北へ。 鼠ヶ関

【写真/旅】海岸線を北へ。 鼠ヶ関

場所:山形県鶴岡市 鼠ヶ関

折からの強風による日本海の荒波を横目に、国道7号線を軽快に北上してゆく。

気持ちのよい緩やかなコーナの連続は、僅かな面積を奪い合う山と海岸が作り出す線形。
並行する羽越線のレンガ作りの古いトンネルは美しく昭和初期の面影を残す。

強く打ち付け砕けた波飛沫は風にのって、フロントガラスに小さな水滴を並べる。さっきからボンネットの下で塩分に苛まれているであろう金属部品たち

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もう二度と手に入らない色で描かれた、もう二度と手に入らない景色。PRO400Hが残した夏。

もう二度と手に入らない色で描かれた、もう二度と手に入らない景色。PRO400Hが残した夏。

またひとつ、フィルムが無くなるらしい。

富士のPRO400Hというフィルムの販売終了が決まった。

これは大変良いフィルムで、少し高かったのだけどよく使っていた。
プリントやスキャンの仕方にもよるけれど基本的には青や緑が綺麗に出る。
市橋織江さんという写真家が中判のこれを使われていて、写真集はすっきりとした綺麗な青で満たされている。とても美しい世界を描き出すフィルムだった。

フィルムにはそれそ

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どんどんなくなっていく楽しかったモノ。

どんどんなくなっていく楽しかったモノ。

子供の頃から車が好きだった。

だから大人になったら、好きな車を大切にしながら
それと一緒に少しずつ老いていくのだと思っていた。
でも、そうはならなかった。

特に50〜70年代のアメリカの自動車文化が好きだったので
すこし前に観た映画カーズの描いた世界とハドソンホーネットの感じる悲哀は見ている子供よりも強く心に刺さった。あそこは大人向けだ。

その後の70〜80年代の日本では次々と新しい技術と車

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