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アナウラッタ王とカンバーラ王のキセキ

ミャンマーを知る⑫【1,808字】 

   アナウラッタ王は、ビルマの乾いた大地にそびえ立つパガン王国の誇り高き王でした。

 彼の眼差しは鋭く、戦場での輝かしい勝利を求めるのではなく、より大きな使命――仏教の教えをこの広大な地に広めることを追い求めていました。

 彼の王座の背後には、壮麗な仏塔がそびえ、夕陽に照らされて金色に輝いています。


 アナウラッタはその仏塔を見つめながら、心の中で静かに誓いを立てていました。

「この地に仏教を広め、全ての者に平和をもたらす」と。

 一方、彼の目の前には、敵対するカンバーラ王の王国がありました。

 カンバーラ王は勇猛な戦士であり、その領土は堅固な城壁に囲まれ、外敵を寄せ付けることはありませんでした。

 カンバーラの城には、彼の祖先が築き上げた古い神々の像が並び、彼の心はその信仰に深く根付いていました。

 彼は鋼のように強固な意志を持ち、外敵に対して決して屈しないと固く誓っていました。

アナウラッタ王は戦いを避けられないと悟り、軍勢を率いてカンバーラ王国へと進軍しました。

 戦場に立つ彼の姿は威風堂々たるもので、甲冑が太陽の光を受けてきらめいていました。

 その彼、アナウラッタ王を取り巻く軍勢は、無数の槍と剣が森のように林立し、大地を揺るがす足音が戦場に轟きます。

 敵対する両軍は、やがて一触即発の緊張感の中で対峙しました。

 その日、激しい戦いが繰り広げられました。矢が空を覆い、剣が交わり、地面が血で染まります。

 アナウラッタ王の軍は次々と敵の防御を突破し、ついにはカンバーラ王の城門に迫ります。

 城門が破られると、アナウラッタ王自らが先陣を切り、カンバーラ王と直接対峙しました。

 城の奥深く、暗い石造りの広間にて、カンバーラ王は最後の抵抗を試みようとしていました。

 彼の眼差しは険しく、手には固く握りしめた剣がありました。

 しかし、その瞳には、かつての威厳と力強さに混じって、一抹の疲れと絶望が見え隠れしています。

 カンバーラ王は、アナウラッタの軍勢が押し寄せる中で、最後の力を振り絞って立ち上がります。

「これで終わりか」

 とカンバーラ王は心の中で呟きました。

「この城、この国、そして私の信じてきた全てが、今ここで滅び去るのか」

 その時、アナウラッタ王がゆっくりと広間に歩み寄り、カンバーラ王に向き合いました。

アナウラッタ王の顔には、戦士の威厳とともに、何か別のもの――深い慈悲の光が宿っていました。

 彼は剣を鞘に収め、穏やかな声で語りかけます。

「カンバーラの王よ、
我々は互いに多くの血を流してきた。

しかし、今ここで全てを終わらせるつもりはない。

私はあなたを許す。

その代わりに、仏教を広めることに協力してほしい。

あなたのカンバーラの国に平和をもたらし、人々に安らぎを与えるために」



 カンバーラ王はその言葉を聞き、初めは信じられませんでした。

 彼の中で長年抱えてきた誇りと怒りが交錯し、心の中で激しい葛藤が生じました。

 しかし、アナウラッタ王の真摯な眼差しに触れると、その心は次第に解け始めます。

 「お前は私を許すというのか?」

とカンバーラ王は低い声で問いかけました。

「私がお前に与えた全ての苦しみと、私の国の信仰に固執したことを」

 アナウラッタ王は静かにうなずき
「その通りだ。しかし、平和と慈悲の教えを広めるために、あなたの力を貸してほしい」
と答えました。

カンバーラ王はしばらくの間、沈黙の中で考えました。

 そして、ついに剣をゆっくりと下ろし、目を閉じました。

 彼は深く息を吐き、長い間抑えていた涙を堪えながら、アナウラッタ王の前に膝をつきました。

「私はそなたの申し出を受け入れるぞ。
私の国を、そして私の心を仏教の光で照らしてほしい、存分にな、照らせよ」

と、カンバーラ王は誓いました。

 その瞬間、二人の王は、血で染まった戦場から新たな道へと歩み出す決意を固めました。

 アナウラッタ王はカンバーラ王を抱きかかえ、彼を起き上がらせました。



 そして二人は、共に歩み出し、仏教の教えを広めるために手を取り合いました。

  大地に降り注ぐ太陽の光は、二人の姿を優しく包み、これから訪れる新たな時代の希望を象徴していました。

 二人の王が和解したことで、ミャンマー全土に仏教の教えが広まり、平和が訪れることとなったのです。

 この物語は、戦いを超えた寛容と慈悲の力を示し、永遠に語り継がれることとなりました。


 ミャンマーの歴史と文化に深く根ざした物語であり、その内容は仏教の伝播と平和の重要性を讃えるものです。

  この物語は、11世紀のビルマ(現ミャンマー)に実在した偉大な王、アナウラッタ王の時代に遡ります。アナウラッタ王は、ビルマ統一の父とされ、パガン王朝の礎を築いたことで知られています。

「アナウラッタとカンバーラの物語」は、単なる歴史の一場面に留まらず、仏教徒の心に深く根付いた教訓を伝える物語です。

 この物語を通じて、ビルマの仏教徒たちは、寛容と平和の重要性を学び、現在でもその教えを守り続けています。

  アナウラッタ王の行動は、現代においても、人々がどのようにして信仰や文化の違いを超えて共存するかを考える際の指針となるものなのです。


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