見出し画像

60年前の本が現代に復刊されるまで 『父 渋沢栄一 新版』編集記①

こんにちは。新人文芸編集者の田野です。

人生で初めて担当する単行本がわりと(めっちゃ)重めだった話をします。
(任せていただき大変勉強になりました…!)

~プロローグ~

配属されて間もないある日、社長(以下、社)に呼び出された私(以下、た)。

社「ねえ、新しい紙幣の顔が発表されたよね」
た「はあ、そうですね」
社「渋沢栄一っているじゃん」
た「はい」
社「あの人、実はうちの雑誌で昔連載してたんだわ」
た「!?」
社「まあ100年位前なんだけど」
た「!?!?」
社「で、彼に関する『父 渋沢栄一』っていう本があるんだが」
た「ほう」
社「60年前に出たやつ。」
た「ん?」
社「復刊したいなーって」
た「んん?」
社「きみ、政治経済学部だったよね」
た「( ^ω^)・・・(講義よりバイトに精を出していた顔)」
社「経済人の本だから、まかせるわ!!」
た「(わし政治学科なんだが~?????)」
社「んじゃっ!」
た「おーい!!!!!!!」

……こんな感じで担当することになったのが、小社より1959年に刊行された『父 渋沢栄一』(渋沢秀雄)です。

おお~、箱入りの上下巻の大作!

この本の魅力をひとことで言うなら、「息子の視点から描かれた超詳しい伝記」です。

これまで、恥ずかしながらあまり渋沢栄一について知らなかったのですが(地理選択でした)、この『父 渋沢栄一』、「なんやこれ栄一小さいころから才能発揮しすぎwwww」「あたま良(よ)っっ!!!!」「いやいやこの展開RPGの主人公やんけ」等々ツッコミを入れながらサクサク読めてしまいました。秀雄さんの文章がうまいのもありますが、なんにせよ人生が冒険すぎるしなんなら自分で仕事を呼び込んで、増やして、成功させている、一体何者なんだ、栄一。おもしれー男。

オラ、なんだかワクワクしてきたぞ!

しかし、なにしろ60年も前の本ですから、新版として現代に復刊するのには、いくつか問題が。

①データがない
 そりゃあ、ないですよね、本文テキストのデジタルデータなんて…。
②字体、表現が古い
 旧字体、古い送り仮名の付け方、差別表現、等々のオンパレード!!
③年表複雑すぎ
 表現も古いわ、関わった企業が多すぎてごちゃつくわ、現在の企業名が書いてないわで読む気をなくす・・・。

渋沢栄一が日本を代表する多くの会社の創立や発展に関与したことはまぎれもない事実で、しかも彼は自分の利を大きくする(例えば財閥を作る)ことよりも、公共の利益、社会の発展を重視してはたらいてきました。

その素晴らしさを、現代の人にも知ってもらいたい。組織の利益だけを追い求めるのではなく、「道徳」に照らし合わせた社会全体の利益をも考えて行動することで、結果としてその組織も継続的な発展をしていくのだということ。これは令和の企業経営においても大事な視点であると思います。

今、令和に生きる人々が渋沢栄一を知る資料としてなくてはならない、彼の「生き方」を学べる本。そういうものを目指して、編集しました。

早速、①データがない、という問題をどうやって乗り越えたのか。

た「せんぱーい、どうしたらいいんですかっ!」
先輩「――スキャンするしかないよね、全ページ。」

な ん で す と  ?(膝から崩れ落ちる)

(仕事なので)観念して、400ページを越える大作を、そうです、頑張ってスキャンしました。かすれないように濃度や明るさにも気を付けて。。。

そしてスキャンしたデータを印刷会社さんにお送りして、やっと・・・

おおおお!!なってる、今っぽい原稿に!!!!!

感動のあまり、しばらくこのピカピカのゲラに頬ずりをしていました。(D〇Pさんに圧倒的感謝っ・・・・!)

こうしてなんとか第一関門をクリアしたひよっこ編集者でしたが、休む間もなく次の試練が。

②に続きます。

#推薦図書 #令和元年にやりたいこと #こんな社会だったらいいな #エッセイ #日記 #ビジネス #私の仕事 #コンテンツ会議 #読書 #出版 #編集 #とは #渋沢栄一 #書籍 #実業之日本社 #出版社

いいなと思ったら応援しよう!