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「男は黙ってサッポロビール」

 自分で言うのもおかしいが、我が一族は名家であった。
 医師が五代続き、そういうことは中々ないらしい。国が我が家の記念碑を建ててくれた。嬉しいことである。少なくてもわたしに取っては。
 妻と結婚したばかりの時、妻の日本語はおかしかった。
 マスメディアの影響をもろに受けた日本語だった。
 簡単に言えば、今の若者と同じような日本語だった。
 尊敬語、謙譲語、丁寧語が全くできていなかった。わたしは、根気強く一年間かけて教えた。それでやっと、日本語がきれいになり、人様から妻はきれいな日本補を使いますね、と言われた。
 本人もそのことに十分満足し、わたしに感謝してくれた。
 人は、話す言葉によって気分が変るものである。
 妻は、岩手の出身だ。地図帳を見ると分かるのだが、すごく北に位置している。東北そのものだ。彼女が、言うには、東北の人間は無口なんだそうだ。それは、彼女と生活していると分かる。
 なぜか、ネットテレビや民放のテレビはよく見る。しかし、人とはしゃべらないそうだ。
 その分、自然とわたしが、家庭内でおしゃべりになる。
 そうなると妻は、「あなた、高倉健さんと違うわね、男は黙ってサッポロビールでしょう」という。「なるほどなあ、テレビを観ているだけあって、いろいろ知っている」と感心する。

ビール

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