ミモザの候 21: 月のいない夜空
救急車は私たちを真新しい県立病院へとどけた。運ばれる父を追いかけて急いで車を降りる。そびえ立つ総合病院の気配は闇夜に紛れていて、救急のエリアだけにこうこうと明かりがともっていた。広い車寄せにはすでに一仕事をおえた救急車がとまっていた。
運ばれていく父とその後を追う私たちの間を遮るように、看護師が状況確認のために話しかけてきた。ものの10秒ほどで、渡したお薬手帳を手に彼女は処置室へ走っていった。
警備員が私たちを待合へ案内した。そこには、同じように着の身着のまま付き添ってき