IrisFan

日本語教師をしています。神戸で2年、香港で12年。2024年から大学院で外国語教育について学びます。語学学習が学習者の人生とどんな関わりがあるのかなぁとか、語学教師は何ができるかなぁとか、自分なりに考え、実践していきたいです。

IrisFan

日本語教師をしています。神戸で2年、香港で12年。2024年から大学院で外国語教育について学びます。語学学習が学習者の人生とどんな関わりがあるのかなぁとか、語学教師は何ができるかなぁとか、自分なりに考え、実践していきたいです。

最近の記事

『Multilingual Subject』 (C.Kramsh) 第1章6節~8節

6.認知言語学の理論:自己の理想化された認知モデルカテゴリー化とプロトタイプについて レイコフ「理想化された認知モデル」(ICM:Idealized Cognitive Models) 理想化認知モデル(ICM)は、認知モデルまたはメンタル・スペースとも呼ばれ、認知言語学の概念で、個人が世界を理解するために使用する、構造化されているが柔軟な知識を指します。認知言語学は、私たちの言語理解は、私たちの経験と、私たちの精神的プロセスの根底にある概念構造によって形成されると仮定して

    • 『Multilingual Subject』 (C.Kramsh) 第1章5節

      このパートでの主張の分析のために取り上げられている諸理論について の知識が不足していたため理解に時間がかかってしまいました。 以下、いろいろ調べて分かったことのまとめと引用を挙げておきます。 Kramshが用いている理論 1、記号論 1-1 パース(チャールズ・サンダース・パース)の 「イコン/インデックス/シンボル」 1-2、レンス・ウィリアム・ディーコンの「シンボル分析」 著作「象徴種」("The Symbolic Species")より ここで英語母語話者がドイツ

      • 『Multilingual Subject』 (C.Kramsh) 第1章 5-3まで

        第1章 記号化する自己(The signifying self) この章でKramshは、これまでの言語学習者観と第二言語習得研究での記述に対する批判的な視点を明らかにしています。 前者(言語学習者観)については、言語学習者/非母語話者が『目標言語の運用知識や規則に対して全く無知な状態であるというこれまでの言説への批判です。 また、後者(第二言語習得研究での記述)については「言語を学ぶということは、頭の中で、あるいは2つ以上の頭の間で、互いに協調しながら達成される、問題解決

        • ”Subjectivity”と”Identity”のちがい(その1)

          Claire Kramsch: Identity vs. subjectivity こちらの動画を見て、Prof. Claire Kramsh (以下、Prof. C.Kと略します) 論文・著作で取り上げられる”Subjectivity"と”Identity”との違いについて わかったことをまとめてみます。 外国語学習環境における学習者を見る時に、Identityという用語は そぐわないのでSubjectivityを用いる。 まず、Identity研究で著名な以下の3名の

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)⑥

          同書の「Introduction」の最終パートのまとめとなります。 前提とされている知識や理解が不足しているため、行きつ戻りつして 読みながらも「ここでは何のために何についての語義、定義をしているのか?」をすら時々、見失いそうになるのですが…(涙) 進んで行くために、現時点の理解の範囲でまとめてみます。 5.2 Intersubjectivity (P46-48)この本での「間主観性」の定義はポスト構造主義の考え方に近いものを採用するようなのですが、ここでの定義だけではまだ

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)⑥

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)⑤

          毎回の記事を書く時なのですが、まず、今回書こうと思う箇所に目を通してから、前回までに書いた箇所を再読してから、新たに要約する箇所の解読に取り組みます。 昨日、パート④の最後の部分の「主体」について書いておきながら、 じつは今日、この「主体」について私がこれまで持っていた「主体」として の学習者のイメージが少しずつ変わってきているような気がしました。 というのは今、『ディスクールの政治学 ーフーコー、ブルデュー、イリイチを読むー』(山本哲士 著、光明社、1987)と言う書籍

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)⑤

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)④

          3 Language as symbolic power この章でKramshは主に以下の3名の研究者の学説から、 言語の持つ象徴的な力について解説しています。 が、私にはまだその解説の内容がどのように「象徴的な力」の生成に 影響しているのか、現時点ではまだピンとこないので、、、(涙) 以下、個人的に響いた点を挙げる、自分の言葉での理解の記載に とどめます。 3.1 The power of the performative (P28-29) 言語学者ジョン・オースティ

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)④

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)③

          ここから、記号としての言語が、語学学習者にとってなぜ「象徴」として関わってくるのかについての説明となります。 Introduction2 Language as symbolic form (P25-26)  自分なりにまとめてみます ↓ 記号としての言語が持つ2つの側面 1、外国語学習者が目標言語を学びながら、その言語のスピーチコミュニティのメンバーとして受け入れられる際に、メンバーとしての「象徴的な力」を得られるが、その代償としてそのコミュニティが有する言語的な制約を

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)③

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World③

          10の基本テーマ 1. 言語能力は複雑でダイナミック、そして総合的である 2. 言語学習は記号論的学習である 3. 言語学習は状況化され、注意的・社会的に調整される 4. 言語学習は複合的、身体的、媒介的である 5. 可変性と変化が言語学習の核心である 6. リテラシーと指導が言語学習を媒介する 7. 言語学習はアイデンティの確立である 8. 主体性と変容力は言語学習の手段と目標である 9. あらゆるレベルに浸透するイデオロギー 10. 感情と情動はあらゆるレベルで重要であ

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World③

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World②

          多言語世界における言語学習と教育の性質の変化 理論的枠組み(フレームワーク) ひとつは、スピーチコミュニティ(Gumperz, 1968)、談話コミュニティ(Swales, 1990, pp.21-32)、実践コミュニティ(Lave & Wenger, 1991)を含むコミュニティの概念である。これらの概念は、言語学習の社会的性格を理解するのに大きく貢献してきた。最近では、コミュニティ外の強力な社会的関係を適切に捉えることができないなどの理由から、この概念に異論が唱えられ

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World②

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World ①

          THE DOUGLAS FIR GROUP1  The Modern Language Journal, 100 (Supplement 2016) (多言語世界におけるSLAの学際的枠組み ) 自分の研究分野となる領域で近年、共有されている背景知識を知っておきたいと思い、読んでまとめてみました。 この枠組みが発表された背景 SLAにおけるこのグループの見解表明 その1、 その2、 その3、 その4、 The Modern Language Journalの出

          A Transdisciplinary Framework for SLA in a Multilingual World ①

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)②

          P23 外国語学習環境で、外国語を学ぶ学習者にとっての言語とは⇒ ゆえに⇒ そうした言語が、彼らの「主観性」と結びつくプロセスとして では、分析対象として設定した学習者の持つ「言語の主観的側面」を どうやって見出すのか。 ここでKramshがその分析対象とする3種類のデータをあげる。 分析データ その1、 分析データ その2、 分析データ その3、 これら3種類のデータの解釈にあたり、参照する分析的概念として  1、(言語の)象徴的形態と象徴的権力  2、知覚と

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)②

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)①

          論文作成のための理論的枠組みとして、指導教官から助言のあった 「Multilingual Subject」を読みながら、自分なりにまとめてみます。 (なお、大学院入学前の「課題図書」のメモ作成というレベルです。  理解が不十分な点や試行錯誤、迷走がある点、ご了承ください。) はじめに The subjective dimensions of language言語の主観的次元 Kramshの言語観(P18) 言語は社会的相互作用のための透明で中立的な道具ではない! 言

          『Multilingual Subject』 (C.Kramsh)①