このパートでの主張の分析のために取り上げられている諸理論について
の知識が不足していたため理解に時間がかかってしまいました。
以下、いろいろ調べて分かったことのまとめと引用を挙げておきます。
Kramshが用いている理論
1、記号論
1-1 パース(チャールズ・サンダース・パース)の
「イコン/インデックス/シンボル」
1-2、レンス・ウィリアム・ディーコンの「シンボル分析」
著作「象徴種」("The Symbolic Species")より
ここで英語母語話者がドイツ語の「Streß(ストレス)」をどのように理解し
母語と目標言語のあいだで行き来して、自分のことばとしていくかという
過程を分析します。
この学習者はS-t-r-e-ßという語の客観的意味を辞書的にも理解はしたうえで
米国的な文化背景を持つ「ストレス」という語の意味(つまり仕事に追われ、競争に明け暮れるアメリカの慌ただしいペースに伴う一種の疲労という指標的な意味)
と
ßという文字のもつれた形から学習者によって類推される
「心理的なもつれ」という主観的な意味を加えている
と分析します。
そしてこのような学びを
主観的な色彩が新たに加わって意味が豊かになり、
それが本来の意味の一部になっている。
この単語は生徒の身体に刻まれたままであり、言語との初期の情緒的接触として、生徒とL2およびL1との関係を彩り続ける。
として注目します。
またさらに
言語の象徴的な使用は、「真剣ではない」と切り捨てられるような、
単なる想像の産物ではない。言語手記や学習者の証言によれば、言語学習体験は、学習者を認知的、感情的、道徳的、美学的に巻き込む可能性が高い
と述べ、
そうした体験を持つ言語学習者は
個人を今ここにある責任から解放し、遊び、皮肉、距離、そして主観的な認識と意味のより自由な領域(トリックスターの領域)への言語使用の統合を可能にする。
とみなします。
こうした学習者についての記述は、人類学者ヴィクター・ターナーの
「限界(リミナル)」という概念を用いて、その概念の特徴に当てはまるとしています。
しかし、ここでもKramshは学習者の目標言語を母語とするスピーチコミュニティはそのような学習者を劣ったものとみなしがちであることを批判しています。
しかし記号論と人類学的分析概念(リミナル)を用いるだけでは
学習者と目標言語の感情的なつながりを分析するのには十分ではないとして
次節(6節)では認知言語学の「理想化された認知モデル(ICM)」を用いて
学習者がどのように目標言語を好きにまたは嫌いになっていくのかを
紐説きます。
今回は記号論、人類学の知識を勉強したうえで
第1章5節を読み直してみました。
内容の理解だけでもなかなか骨が折れますが、内容把握に取り組むのは
もちろんのこと、論旨や学び自説をより強固で厚みのある
ものにしていくための論文の展開を学ぶトレーニングでもある
と言い聞かせながら挑戦していきます!