蓮水桜子

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    あまり明るくはない日記です。

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わたしの読書ルーティーン

SNSを見ていたら、「読書」という趣味も人によって楽しみ方は色々あるのだなと感じます。お茶菓子と共に本を読む人、音楽を聞きながら読む人、カバーを外す、付箋をつける、読書ノートを書く、などなど……。 今日はわたしの「読書ルーティーン」を紹介します。あまり特別なことはしていませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです。 ・本を選ぶ 本棚の前に立って、ざっと眺めます。目と合う本が見つかるまでとりあえず眺めます。 わたしの家には本棚が三つあって、そのうち一番大きい本棚の一段目の手前が

    • 『軽いノリノリのイルカ』 満島ひかり、又吉直樹

      軽いノリノリのイルカ 満島ひかり、又吉直樹/マガジンハウス 小さい頃、父と回文で遊んだことを覚えている。まだ幼かったから「トマト」とか「新聞紙」とか短いものしか思いつかなかったけれど。それでも、上から読んでも下から読んでも同じ言葉になるという不思議さに魅了された。 『軽いノリノリのイルカ』では、満島ひかりが回文を作り、短い物語を又吉直樹が書く。そして物語だけではなく、回文から想像された写真も作品の一部となる。回文と物語と写真。三つが共鳴し合うとき、これまた不思議な感覚にな

      • 『イッツ・オンリー・トーク』 絲山秋子

        イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子/文藝春秋 不要不急がどうとか言っていた頃、生きるのに直接関わらないもの全てが「無駄」だと言われた気がした。その期間で気づいたことがある。私は「なくても生きていけるけれど、あったら嬉しい」みたいなものに生かされていたということ。友人との会話、ちょっと豪華なお菓子、新刊の本、そんな不要不急のものたち。 「It's only talk」は、直訳だと「それはただの話です」となる。つまり普通の話、ムダ話ということだ。『イッツ・オンリー・トーク』は

        • 『ドライブイン蒲生』 伊藤たかみ

          ドライブイン蒲生 伊藤たかみ/河出書房新社 伊藤たかみ。家族・夫婦・兄弟など親族関係を描くことが多い。「なんか」気になる作家の一人である。90年代にデビューした作家の作品を「J文学」なんて呼んだりしたが、その一人でもある(はずだ)。伊藤たかみの作品には、時代が色濃く出ているように思う。 例えば、タイトルにもなっている「ドライブイン」という言葉。分からなかったので調べてみると、今で言うパーキングエリア的な、道の駅的なそんな意味合いだそう。他にも子供にタバコをおつかいさせたり

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          4本

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          しばらく読書は出来ません

          しばらく読書は出来ません。 事の発端はお盆の辺りだったと思うから、8月中旬。古本屋で何冊か本や漫画を買いました。買ったものを本棚に並べることを面倒がって、床にしばらく置きっぱなしにしていました。すると、ある日床に小さな小さな虫を見てしまったのです。灰色の、本当に小さな虫。1ミリもないくらいの。胡麻粒よりも小さい。そして私は大の虫嫌い。ぎゃーーー!!!と大きい声を出しながら母を呼び、その虫を倒してくれました。母は「あんなちっちゃい虫くらい、そんな大声出さんでも」と呆れていました

          しばらく読書は出来ません

          『月の満ち欠け』 佐藤正午

          月の満ち欠け 佐藤正午/岩波書店 私は『夏の情婦』という短編集で佐藤正午を知った。整えられた文体や艶っぽい表現に惹かれて、もっと佐藤正午に浸りたいと思うようになり、今回『月の満ち欠け』を読んだ。 現代の話と過去の話を激しく行き来しながら、少しずつ真実が見えてくる"ミステリ仕立て"の構成。時系列が複雑だからややこしくなりそうなのに、混乱しなかった。さらに伏線が明かされるタイミングが絶妙で、これが文章力かと思い知った。 全てを読むと、なんて壮大なラブストーリーなんだと頭を抱

          『月の満ち欠け』 佐藤正午

          読書記録 2024夏

          7月〜9月に読んだ本について これが生活なのかしらん 小原晩/大和書房 エッセイってすぐ忘れてしまう、ごめんなさい。Audibleで聞いて、文字を見ていないから余計に抜けてしまっているんだろうなあ。 一つよく覚えているのが「妖精がいた」という話。書き出しの「妖精は深夜のセブンイレブンで働いている」がとても可愛い。妖精はとても優しくて、愉快で、だからすごく幸せな雰囲気で話は進むのだけれど、最後どーんと切なさを置いていく。小説よりもエッセイは気を緩めて読めるけれど、油断なら

          読書記録 2024夏

          『こころ』夏目漱石

          本を選ぶときにわたしはほとんどあらすじを読まずに買う。だからこれが夏目漱石の後期三部作のしかも最後だなんて知らなかった。(一般常識だと言われたら「ああ……」としか言えない。) なんとなく読む順番を間違えたと思わないでもないが、感想を書いていきたいと思う。 そもそも『こころ』は高校二年生のときに授業で習った。教科書にはたしか「下 先生と遺書」の一部分が載っていたと思う。だから全編通して、という意味では初読だ。ちなみに夏目漱石の作品だと、今まで『文鳥』しか読んだことがない。

          『こころ』夏目漱石

          『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋

          もうひとつの芥川賞受賞作である『サンショウウオの四十九日』を読んだ。朝比奈さんの作品はデビュー作から全て身体に関わる話で、今回は結合双生児の姉妹が主人公になっている。医者兼作家の方は意外と多いが、朝比奈さんはその中でも「身体」についてより密接に、深く訴えているように感じる。 まずは視点について。冒頭に引用したあらすじにある通り、姉妹の一人称を「私」と「わたし」という漢字/ひらがな表記で区別している。一つの段落ごとに語り手が切り替わる、というような分かりやすいポイントはない。

          『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋

          『バリ山行』松永K三蔵

          わたしにしては珍しく、芥川賞作品を早めに読むことができた。とか言ってもう8月も終わるので、早いかどうかは微妙なところだけど。 『バリ山行』は山岳小説だ。山登りの描写はくどいと感じるほど細かく、用具などの専門用語も飛び交う。内容は全然違うけれど、読んでる感触は『ブラックボックス』に似ていると思った。 最近の芥川賞の中では珍しい直球な純文学だと感じた。人称をいじったり、現代を風刺したり、当事者性を問う文学。そういう文学が駄目かと言われるとそうではない。でも、万年に通用する設定

          『バリ山行』松永K三蔵

          『夏の裁断』島本理生

          島本理生は『ファーストラヴ』で直木賞を受賞した作家だが、芥川賞の候補にも何度か選ばれていて、この『夏の裁断』は芥川賞の候補だった。 候補になったのは『夏の裁断』のみだが、文庫になるときに続編と言える「秋の通り道」「冬の沈黙」そして「春の結論」が収録された。 正直、「夏の裁断」はよく分からなかった。分からなかったというのは内容のことではなくて、主人公の感情の部分だ。どうしてこんな煮え切らない態度をずっと取っているのだろう、なんでこんな男のことを好きになるのだろう、と疑問は拭い

          『夏の裁断』島本理生

          『背高泡立草』古川真人

          いやあ、久しぶりに時間がかかった読書だった。そして久しぶりに芥川賞作品を読んだ。やっぱり分かりやすい面白さではないけれど、噛み砕いて噛み砕いて味が出るみたいな、そういう旨みのある小説が選ばれるなと思った。 『背高泡立草』について書くとき、構成については触れざるを得ないだろう。全部で九章あるうちの四章分は、本筋の草刈りとは違う話が挟まれる。スピンオフみたいな。 最初、知らずに読んでいたので戸惑った。急に時代が変わって、知らない人の話が始まって、何か見落としたかと思ってもう一度

          『背高泡立草』古川真人

          わたしのためのヘアードネーション

          高校二年生の修学旅行(2022年10月頃)からずっと伸ばし続けていた髪の毛を切った。伸ばした髪は31センチに達していたので、それをヘアドネーションすることにした。 髪の毛はわたしにとって「どうでもいいもの」だった。友達が髪の毛のケアだったり、アイロンで巻いていたりする横で、本当にぼっさぼさの頭のまま学校に通っていた。 そんなわたしも修学旅行のときくらいは綺麗な格好をして写真に写りたいと思って、整えて行った。その修学旅行中にコロナに罹ってしまい、旅行先で取り残されることにな

          わたしのためのヘアードネーション

          『もういちど生まれる』朝井リョウ

          小学四年生のとき、突然児童文庫に飽きてしまった。そんなときに図書館で借りたのが朝井リョウの『世界地図の下書き』だった。挿絵のない本を読んだのは多分あれが初めてだと思う。読み切った達成感でわたしはレベルアップした、と思った。読書は幼い頃から続いている趣味だけど、朝井リョウがいなかったら、ここまで本を好きにならなかったかもしれない。 すっかり純文学好きになったわたしは、所謂エンタメ小説を読む機会が減った(全く読まなくなったわけではないけれど)。だから朝井リョウを読むのも随分久し

          『もういちど生まれる』朝井リョウ

          『生のみ生のままで』綿矢りさ

          『インストール』『蹴りたい背中』『ひらいて』。わたしが読んできた綿矢りさの作品の舞台は全て学校だった。もっと言えば高校。これまでの綿矢りさの印象は、「高校生の女の子が抱く"名称のない気持ち"を描くのが上手い作家」だった。 今回読んだ『生のみ生のままで』は上下巻になった長編作品だ。しかも主題は恋愛。今まで読んできた綿矢作品にはなかった、ドが付くストレートな主題である。登場人物たちも、学生から抜け出して大人。だからわたしにとって、かなり新鮮な綿矢りさだった。 二人の出会うとこ

          『生のみ生のままで』綿矢りさ

          ふと出会う文章 文芸誌の魅力

          わたしが初めて文芸誌を買ったのは高校一年生のころだったと思う。河出書房新社が出している「文藝」が文芸誌との出会いだった。特集が「金原ひとみ責任編集・私小説」の回だ。 文芸誌とは小説の月刊(季刊)誌のことである。日本で五大文芸誌と言えば、新潮社の「新潮」、文藝春秋の「文學界」、河出書房新社の「文藝」、講談社の「群像」、そして集英社の「すばる」だ。この五つは全て純文学に特化した文芸誌だ。 もちろん五大文芸誌意外にも様々なジャンルの文芸誌がある。例えば最近わたしが読んでいるのは

          ふと出会う文章 文芸誌の魅力