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彗星のような、読書を

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書評ではありません。ただ私が読んだ本を気軽に、私らしく、紹介していくだけのマガジンですので、気軽に読んでください。 ジャンルはバラバラです。物語も学術書も詩やエッセイも、私が読ん…
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記事一覧

小川洋子『密やかな結晶』

小川洋子『密やかな結晶』

静かな物語だった。それなのに、私を夢中にさせる力を持っていた。

記憶が消えていく島の物語だ。心の一部が消滅していく物語だ。しかし、主人公である『わたし』をはじめとする島の住人たちの多くは、心の消滅を哀しんだり苦しんだりしない。

だって、なにも残らないから。

『何を思い出したらいいのかさえ、分らないのですから。わたしたちの消滅は完全です。種も残りません。空洞だらけのスカスカの心で、上手くやって

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五月土曜日、朝コメダで読書始まり

五月土曜日、朝コメダで読書始まり

どうしてもコメダ珈琲のモーニングを食べたくなって、チャリを漕いだ。
めちゃくちゃ混んでいて入れなかったらどうしよう、とドキドキしていた。駐車場ではおじさんたちが虚空を眺めている(本当に三人くらいのおじさんが、どこか遠くを見ていました)。

これは、お名前を書いてお呼びするまでお待ちくださいのパターン……と思ったら、普通にご案内されました。外のおじさんたちはなんだったんだろう。

コメダのモーニング

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寺山修司『寺山修司少女詩集』

寺山修司『寺山修司少女詩集』

大学の時の友達が、寺山修司好きだった。
彼女はなかなか面白くて不思議な子で、ゲーテ詩集を読みながら「詩集ってコーヒーみたいな感じがしない?」と言っていた。

私は『文学少女シリーズ』の遠子先輩かよ、と思ったし(『文学少女シリーズ』は本を食べてしまう女子高生がヒロインの、最高のラノベです)、当時のはほとんど詩を読まない人間だったので、へへーって笑って誤魔化した記憶がある。それがなんで数年で、詩もどん

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藤木稟『バチカン奇跡調査官  王の中の王』

藤木稟『バチカン奇跡調査官 王の中の王』

ずっと読み続けているシリーズです。前刊も読書記録に残していたけど、二月に読了してますね。今回は表紙がロベルトだー!(ロベルト派です)

その時の登場人物紹介が割ときちんと書かれている(当社比)ので、ちょっと引っ張ってきつつ、加筆修正しときます。

タイトル通り、バチカンの神父二人が主人公。でもただの神父じゃありません。二人は世界中で起こる【奇跡】が本物であるか見極める、奇跡調査官であって、それぞれ

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ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

全てが急な人間なので、突如哲学の本が読みたくなった。そういうこともあるよね、人間だもの。

そこで、ヴィトゲンシュタインだ。なんでヴィトゲンシュタインなのかというと、以前読んだ本で引用をされていたような気がするから。あと、近代の哲学書としてはこの『論理哲学論考』はとても有名だから。評価が高いものを優先して読むのも、読書のやり方の一つです(その割にはなんとか賞受賞! とかの宣伝文句に興味がないんです

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カレル・チャペック『園芸家12カ月』

カレル・チャペック『園芸家12カ月』

カレル・チャペックと聞いたら紅茶を思い出す人もいるはずだ。私もあそこの紅茶好き。アッサムとヌワラエリヤとルフナが特に好き。パッケージも可愛くて素敵。カレル・チャペックを飲みながらカレル・チャペックを読むというのも乙なものかもしれませんね。

代表作の戯曲『ロボット』(『R.U.R』)は読了済み。ロボット、という言葉はここから生まれた、とされていて発表は1920年ですが、なんというか、古臭さがないの

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稲垣足穂『ヰタ・マキニカリス』

稲垣足穂『ヰタ・マキニカリス』

世界には、ファンタシュームが足りない。

ファンタシュームは夢の元素だ。現実の町を『どこにもない、しかしどこかにあるパラダイス』に変える力を持つ。
けれど、その夢はなにも知らない幸福なだけの子供が紡ぐ夢とは違う。
明るく命を歌う太陽の下で見る夢とは違う。

青白い月明かりの下で見る夢だ。尾を引く彗星を呆然と見上げながら描く夢だ。はるか遠い星の光だけが、輝かせてくれる、そんな夢だ。

大人になったら

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阿久津隆『読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹』

阿久津隆『読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹』

読書とは生活に関わるものだから、読書について書かれた日記は自然と分厚くなってゆく、ということを改めて考えさせられる、fuzkueの店主阿久津さんの日記二冊目。

ちなみに一冊目は3月7日に記録をつけていた。そのあとしばらく経って二冊目を購入したから、読み終えるのに一ヶ月くらいかかったなぁ。
全部で700ページないくらい? 寝る前にほぼ毎日、ぽつぽつと読んでこれくらいのペースです、ご参考までに。

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4月中旬、今読んでる本

4月中旬、今読んでる本

不定期に今読んでる本を載せていこうと思いましたので載せます。

友達に言われたんだけど、『たくさんの本を読めること』ってそれだけで羨ましいことなんだって。
言われてびっくりしたんだけど、何事も才能なのかもしれないので胸を張ろう。

私は!! たくさんの本を!!

読める才能があります!!!

本の読み方は人それぞれだと思いますが、私の場合は2、3冊常に並行して読んでいます。
通勤電車だったりの外で

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ボルヘス、カサーレス『ボルヘス怪奇譚集』

ボルヘス、カサーレス『ボルヘス怪奇譚集』

「眠れない夜のお供に」、と声優の斉藤壮馬氏がオススメしていた。
この本は河出文庫のフェアかなにかで、斉藤壮馬氏が選書した中の一冊だ。
オタクではあってもあまり声優に興味のない私だが、あまりにもマニアックな本を選書なさっていたので欲しい本は買いました、またやってくれないかなぁ。

私の中のボルヘスといえば『砂の本』『バベルの図書館』『幻獣辞典』。
彼のイメージは本の城に住む王様だ。作家の経歴をあまり

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池内了『物理学と神』

池内了『物理学と神』

目次が面白い時点で「最高!」だと思う。
一章の『神の名による神の追放』から始まり、八章の『神は老獪にして悪意を持たず』で終わる。うおー、ドキドキする。

永久機関、ラプラスの悪魔、マクスウェルの悪魔、人間原理、宇宙論、などの言葉にビビっときたらまず本書を読んで。予備知識は要りません、ウィキで調べる必要もない。ちなみに全部、神学ではなく物理学の領域ですが、この本を楽しむために必要なのは、理系の知識で

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柞刈湯葉『人間たちの話』

柞刈湯葉『人間たちの話』

再読した。出版された時、話題になった覚えがある。
あ、『横浜駅SF』の人だって思ったなぁ。ちなみにそちらは未読です、ただ神奈川県民としては増殖する横浜駅の話ということでいつか読みたいなと思っている。最近、日本のサグラダファミリア横浜駅の工事は一旦終了したみたいで新しい商業施設ができていたけど、ちょっと寂しいね、とか言ってたらまたその内工事が始まりそうな気がしなくもない。

さて、『人間たちの話』。

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清少納言『枕草子 下』

清少納言『枕草子 下』

千年以上経った。彼女が生きていた時代から。

例えば、今をときめく人たちの面影が千年後、どれほど愛され偲ばれることになるのだろう、と考える。そもそも、名前が伝わっているかどうかも怪しい。いや、きっと大半の名前は、存在は、忘れられてしまう。どれだけ電子の世界が発達しようと、この世界に生きた私たちの存在を永遠にしてくれるよすがには成りえない。今だけだ、生きている今この瞬間だけしか、信じられない。

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西尾維新『人類最強のときめき』

西尾維新『人類最強のときめき』

読書日記を続けてきて、西尾維新のことを深く語っていないとはどういうことだ。私の中学時代の必携書は西尾維新の『戯言シリーズ』でしたけど! 友達も西尾維新に影響受けまくって、それっぽい感じの小説書いてましたけど!

生まれて初めて、「これは深夜アニメだ」と思いながら見たアニメは西尾維新の『刀語』でした。いいよね、『刀語』。何回も読み込んだ。アニメも再放送版? OPがEGOISTになったバージョンも含め

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