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ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』
全てが急な人間なので、突如哲学の本が読みたくなった。そういうこともあるよね、人間だもの。
そこで、ヴィトゲンシュタインだ。なんでヴィトゲンシュタインなのかというと、以前読んだ本で引用をされていたような気がするから。あと、近代の哲学書としてはこの『論理哲学論考』はとても有名だから。評価が高いものを優先して読むのも、読書のやり方の一つです(その割にはなんとか賞受賞! とかの宣伝文句に興味がないんですが)。
私は読書をする時に「一から十まで内容を理解したい」とか「内容を理解できなきゃ意味がない」と考えたことがない。別にわからなくてもいいでしょう、なにかが残れば。後になってふと思い出して、道しるべになったり、勇気を得たり、反対に苦しくなったり悲しくなったりすれば、その読書体験は最高です。
で、『論理哲学論考』なんですが、理解できないなりに胸を突く言葉、考えさせる言葉が多くて、延々と愛用のロルバーンのノートに書き写していました。あと、読んでて森博嗣を思い出した(森博嗣大好き)。
なので、ちょっと書き写した中からいくつかピックアップして、どういう点でドキっとしたのかを記述していきます。
ちなみに文頭の数字は『それぞれの文章の論理的な重さ』を表しているそうです。桁が少ないほど、論理的に重い、と大雑把に思っていただいて良いんじゃないでしょうか。
『1. 世界はそうであることのすべてである。』
この後に『世界は事実によって規定されている。』と続く。なんか世界について歪曲している人がたくさんいる。世界という言葉が定義するものはたぶんあなたの頭の中の話じゃない。それを忘れそうになる。忘れてはいけない。
『4.1212 しめされうるものは、言われえない。』
言うことのできないもの。言葉では届かないもの。その存在に想いを馳せる。全てを明確に、言葉にできると勘違いしないようにしよう。私も未熟ながら、言葉で世界と関わる人間だから。
『5.6 私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する。』
物語を書くときにいつも思う。言葉が足りない、世界が広がらない。これが私の限界。私の世界の、限界。でも絶望する必要はない、まだ私の好奇心は枯れていないから、言葉を学ぶことができる。
『6.373 世界は、私の意思に依存していない。』
私の意思は世界そのものを変えることはない。私が変えることができるもの、それは私の世界だけ。
読了したあと、「楽しかった」と思った。短い命題から色んなことを考えるのが、楽しかった。もちろん、理解できない命題、考えることすらできない命題もあったけど、それらがあったからなんだっていうんだ、私は楽しかったよ。
だから急に湧いた衝動に従うのは大切です。
次は『哲学探究』でも読もうかな、まだまだ色んなことを、考えていたい。
・ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(訳・丘沢静也、光文社、2014年)
非常に読みやすかった。分厚い大書ではないので、哲学ときいて身構えてしまう人にこそオススメしたい。
ひとつひとつの言葉は決して難しくないです。クリアな言葉で組み立てられた命題だからこそ、人を考えさせる力があるのかもしれません。
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