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著…森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』

 様々な作法について「なぜこうするのですか?」と先生に質問したり、メモを取ろうとしたり、暗記しようとしたり…。

 わたしも茶道(表千家)を習い始めた頃、森下さんと同じことをしました。

 そして、森下さんと同じように、先生から「頭で覚えようとしてはいけません。お稽古を重ねれば、体が覚えてくれますから」と諭されました。

 だから、わたしは何だかかつての自分を見るような気持ちでこのエッセイを読みました。

 学校の勉強では授業の前後で予習・復習が出来たのに、茶道では初めて経験することの連続。

 茶道はその時々の季節感を大切にするので、お稽古で教えていただくお点前がお稽古の度に変わります。

 せっかく夏のお点前に慣れても、冬のお点前が始まったら、夏のお点前から気持ちを完全に切り替えないといけません。

 この本の、

「さあ、気持ちを切り替えるのよ。今、目の前にあることをしなさい。『今』に気持ちを集中するの」
(『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』から引用)

 という言葉と同じようなことを、わたしも先生から教えていただきました。

 このエッセイを読み進めていくと、森下さんが初めは「なぜ?」と不思議で仕方なかったお点前の動作の一つ一つが、次第に心と体で感じ取れるようになっていくのが分かります。

 「今」という季節の、今しかないこの瞬間。

 それを、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感全てで味わおうとすると、自然とこういうお点前になるのだな…と気づく感覚。

 あの素敵な感覚を味わうのが茶道の醍醐味の一つだと思います。

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