ジョン・コルトレーン「A Love Supreme」 ~ テナーサックス奏者に神はサイコロを振ったのか
ジョン•コルトレーンは、あのジャズ初心者がまず聞くアルバムの代表「バラード」の印象がとても強かったんです。セピア色の夜にピッタリのロマンチックな香り満載の誰が聞いても心が和んでしまうあの音色。
ジャズを聴き始めの頃はジョン•コルトレーンのテナーサックスとはそういう音色をかもし出す神器のようなものだったんです。
ある程度ジャズを聴いていくと、情報もそれなりにインプットされていきます。
彼は即興中心のフリージャズの世界に没頭していったこと、延長線上で宗教のような世界に入っていき、OMというアルバムでは梵語?を叫んでいるらしいこと。私は聖者になりたいといったとかいわなかったとか、晩年はインドの伝道師に惹かれていた事とか。
人がそれまで追求していた路線を修正して変更していく場合、何らかの気づきがあったか自分を変えるだけの体験があったか、はたまた何かを超越してしまったか、何かがあるものだと思います。
おそらく、彼は、何かにふと思い当たったんでしょう。なんらかの啓示を受けたのかもしれない。街を歩いていて、ふと見上げた空にかかっていた虹に神を見たのかもしれない。
彼の中期以降のアルバムタイトルをみるとそれが判るような気がします。
A Love Supreme
Ascention
Expression
Om
Meditaton
森羅万象の中におそらくは、自分なりの神、または光を見た。それを音の中で表現しようと内面を見つめていった。その奥底には混沌があって、それすらもありのままに表現しただけなのかもしれない。
この当時、アセンションや、メディテーションという言葉がどれだけ使われていたかは判らないが、今日的な意味合いで考えるにやはり、彼自身の霊性、量子学的な波がさらなる高みにあがっていっていたのでしょう。
A Love Supreme
これはそんな彼が、内面の吐露を惜しげもなくさらした作品の様に思う。
曲名は、
パート1:承認(Acknowledgement)
パート2:決意(Resolution)
パート3:追求(Pursuance)
パート4:賛美(Psalm)
この曲名だけで、なにやら神がかってます。
Acknowledgementは、何かの始まりを宣言するかのようなサックスの響きから。後半、繰り返されるA Love Supremeという祈りのようなつぶやき。音では表現しきれない思いがあったのか、思わずつぶやいてしまったようにほとばしる言葉。
Pursuance とPsalmは組曲形式。テンポ良いドラムソロにピアノの連弾が入り、サックスが自由気ままに跳ね回る。
混沌とする前のいわば彼自身のむき出しの内面を
はっきりと感じることが出来る作品ですね。分岐点。
これはジョン•レノンのファーストソロアルバムに似ているかもしれない。精神性はまさに、そのものかもしれない。
内面吐露の先にはリラックスした地平が見えてくるわけで、これ以降、彼はどんどん自由な、即興的に想いを放射する方向に進みます。数ヶ月後に録音されたのが、アセンションというタイトルのアルバムです。このアルバムの音はまさにフリージャズ。
A Love Supreme
これはバーや小さな箱で聞く音楽ではないのかも。大勢が集う場所、フェスなどで奏でられるべき音楽なのかもしれません。スマホで聞く音楽でもないと思います。
フリーへの分岐点。できればステレオで聴いてみてくださいね。
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