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「生きるAIの子」第5話 (漫画原作)

 雪心ちゃんとのキスを経験した日以来、幸与は自分の命を育んでくれる「マザー」という名のカプセルの中で眠る夜が続いていた。AIの子にとって母胎代わりのマザーが一番安心できる居心地の良い場所と研究員から教えられていたものの、母親であるべき私より、マザーを頼ろうとする息子とは微妙に親子の関係性が変わりつつある気がして、不安と寂しさを覚え始めていた。心身が二次成長期に差しかかっている息子は自分の変化に戸惑っているのかもしれない。小さい頃からいざという時は、私ではなく、マザーのお世話になり、私に叱られた時はマザーに逃げ込むことも多かった。だから幸与は私より、信頼できるマザーの方が好きなんだろうと思っていた。母親もどきでしかない私が、AIの子の息子にできることは限られていて、無償の愛で幸与の命を守ってくれるマザーという存在に嫉妬感を抱くようになった。息子の命の源に嫉妬するなんて、やっぱり私は母親失格の人間だと改めて情けなくなった。
 
 母性に自信を無くしたせいか、雪心ちゃんを通じて中絶した子の父親である彼と接点ができ、彼のことを思い出す日が増えたせいか、母性より性欲を感じてしまう日が増えていた。時間さえあれば夜に限らず、幸与が学校に行っている昼間から、自分で自分を慰める行為にふけることが多くなった。彼と関係していた頃や一人きりの頃はよくしていたけれど、息子と一緒に暮らすようになってからは自慰をする機会は少なくなった。母性が勝り、そういう欲求は減っていた。しかし性欲が優勢になると私はまた、あっという間にふしだらな女に戻った。これが本来の私なんだと思う。性欲旺盛な彼と出会い、性に関する様々なことを教えられ、感化された私は出産育児なんてできない女なのに、彼の精子を受け入れ、「妊娠してみたい」とまで考えてしまった。本当に妊娠し、悩んだ挙句、中絶まで経験し、性体験なんて懲りたはずなのに、幸与を手に入れ、愛息子と暮らす夢を叶えてしまった今になってまた、息子が与えてくれる幸せや温もりより、女としての快楽を蘇らせてしまった…。
 
 いけないことと思いつつ、衝動を抑えることができなくなっていた。昔、彼が与えてくれた大人の玩具を思い出し、ネットで似た商品を探し、購入した。その玩具がさっき届いたところだった。開封し、ドキドキしながら電池を入れ、スイッチをオンにした。その振動を見ているだけで、陰部がじわっと濡れるのを感じた。私の秘部は触れなくても、快楽を与えてくれるこの振動を覚えていたらしい。寝室までの僅かな時間も惜しくなった私は、リビングのソファーの上でショーツを脱ぎ捨て、一番敏感な部分にそれを当てた。10年ぶり以上のその振動に、私の小さな突起は喜び、瞬く間に充血し、勃起した。1分も経たないうちに、最初の絶頂を迎え、今度は子を産めなかった穴の中に、それを突っ込んだ。中イキは知らなかったはずの私が、膣内で快楽を感じ始めた気がした矢先、チャイムが鳴った。慌ててショーツをはき、インターホンを確認すると見知らぬ一人の女性が立っていた。
「突然伺って、すみません。初めまして、菅生です。雪心がいつもお世話になっております。」
その女性は雪心ちゃんのお母さんで、つまり彼の奥さんだった。彼の奥さんを見るのは初めてだったから、動揺してしまった。彼女は私より随分、若く見えた。
「あっ…雪心ちゃんのお母さんですか。初めまして。」
本当は一番会いたくない人だった。彼の奥さんを見てみたいと思うことはあったけれど、会いたいとは思えなかった。だって、彼が選んだ素晴らしい女性と出会ってしまったら、選ばれなかった自分がますます惨めになるだけだから…。でも今は、彼の奥さんということは抜きにして、幸与のお友だちのお母さんなのだから、それなりに大人の対応をとらなければならない。ドアを開けた私は、なるべく冷静に笑顔で話しかけた。
「いつも息子がお世話になっております。良かったらどうぞ、上がってください。」
「こちらこそ、いつも娘が親しくしていただいているようで…。先日はこちらに伺った際、突然生理が始まって、幸与くんのお母さんにお世話になったと娘から聞きました。その節はご迷惑をお掛けしました。今日はそのお詫びとお礼に伺ったんです。良かったら召し上がってください。」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げてから、私に菓子折りを差し出した。
「そんな、気にしなくて良かったんですよ。生理って突然始まることが多くて、私も昔はよく困りましたし。雪心ちゃんは初潮を迎えるのが早かったんですか?うちの子と比べたら、落ち着いていて、大人っぽく見えますし…。女の子はいろいろたいへんですよね。」
「ありがとうございます。えぇ、そうなんです。娘は小1で初潮を迎えたものですから…元々発育の良い方だったので、早いだろうなと覚悟はしてたんですが、まさか7歳で生理が来るとは思ってなくて…。今回は本当に申し訳ございませんでした。それでは私はこれで失礼します。」
玄関先で彼女は帰ろうとしたものだから、社交辞令というわけでもなく、思わず引き止めてしまった。知りたくないと思いつつ、少し彼女に興味を持っていたせいかもしれない。それより何より彼の近況を知りたかったせいもある。
「7歳で生理が始まったなんて、教えるのに雪心ちゃんのお母さんの方が困ったでしょうね。せっかくいらしたんですから、お時間があるなら、中で話しませんか?ママ友みたいな方はほとんどないものですから、こうしてご縁があるのはうれしいですし。」
「実は私も…引っ越したばかりで知り合いもいなくて、ママ友になってくれる人がいたらなって思ってたんです。なのでそう言っていただけるとうれしいです。それじゃあ、遠慮なく少し…上がらせてもらいますね。」
ようやく笑顔を見せてくれた彼女はよく見ると雪心ちゃんにそっくりで、やっぱり美人で清楚な方だった。さすが彼が選んだ女性という感じがしたし、彼の好みそうな上品で美しい女性だった。
 
 彼女を部屋に招いたのはいいものの、さっきまで自慰にふけっていたことを思い出した私は、慌てて玩具を隠した。室内に匂いが残っていてはいけないと思い、換気のため、少しだけ窓を開けた。
「どうぞ座ってください。」
さっきまで私が自慰していたソファーに彼女を腰掛けさせた。
「ありがとうございます。すごく掃除が行き届いていて、綺麗なお部屋ですね。」
たまたま掃除したばかりで、自慰をしていたことを除けば片付いている方だった。
「自宅で仕事しているものですから、散らかってしまうことも多いんですよ。なるべく掃除はするようにしてますが…。」
「お仕事、何をなさっているんですか?」
「フリーライターをしているんです。息子を授かる前から続けている仕事で…。夫はいないので、一人で息子を育てながらできる仕事だったというのもあります。」
「ライターさんなんですか、素敵ですね。お一人で子育てたいへんでしょうね。私は専業主婦なんです。」
「たいへんなこともありましたが…息子と二人で何とか暮らしてます。雪心ちゃんのお母さんは専業主婦なんですね。ご主人はどんなお仕事をされているんですか?」
仕事が変わっていなければ、彼が住宅関連の営業マンということは知っていたものの、改めて聞いてみた。
「私は心織(しおり)という名前なので、良ければ名前で呼んでください。幸与くんのお母さんのお名前も伺っていいですか?主人は家を売る営業の仕事をしてるんです。そのせいか落ち着いて家にいることは少なくて…。土日の方が稼ぎになるみたいですし。あまり家族揃って過ごせなくて寂しいと思っても、私の方が彼を好きになったので、何も文句も言えなくて…。」
彼女は少し寂しそうに微笑みながら言った。
「じゃあ心織さんって呼ばせてもらいますね。私は透子という名前です。旦那さんは営業マンなんですか。自分の家族と触れ合う時間を犠牲にして、お客さん家族に住宅を紹介しているなんて、ご本人も寂しいでしょうね。」
「透子さんってお名前なんですね。主人は家にいるより仕事や外にいる方が好きみたいで、全然寂しそうじゃないんですよ。雪心も父親が家にいないことが多くても寂しそうな様子は見せませんし、あの人がいなくて寂しいのは私だけなのかもしれません。結婚していても、私も気持ちはシングル同然なんです。」
彼のことだから、未だに外に何人もの女がいるだろうから、家に寄り着かないんだろうと薄々分かった私は彼女に同情し、思わず本音を語り出してしまった。
「結婚はしませんでしたが、幸与の父親もそんな感じの男性だったので、心織さんが寂しい気持ち、よく分かりますよ。勝手な人でしたが、そういう自由奔放なところにも私は惹かれたんです。好きになった方が負けですよね。相手にはそれ以上を望めませんから…。私は妊娠させてもらえただけで、幸与と出会わせてもらえただけで十分と割り切って、将来を考えてくれない彼とは別れました。」
「すごく良く分かります。私も透子さんと同じように、彼のおかげで雪心と出会えたので、彼には何も言えなくて…。結婚してもらえただけでも幸せだったのに、欲深い私は自分の子どもと生きる夢を捨て切れなかったんです。独身の頃に彼ではない相手の子を二回、妊娠したことがあったんです。一度目は流産、二度目は子宮外妊娠で中絶しました。そのせいか私は我が子をほしい気持ちが強くて、子どもなんていらないという彼を説得して、結婚後、しばらく経ってからようやく娘を授かることができたんです。彼に迷惑をかけることなく、子育ては私ががんばることを条件に…。」
彼女は私と似たような体験をしていると知り、ますます彼女のことが気になり出した。家庭に協力的ではない彼に今さら幻滅するよりも、彼女自身に興味が向いた。
「流産と中絶を経験していたんですか…。二回もお子さんを失うなんてつらかったでしょうね。私も…中絶を経験したことがあるので、心織さんの気持ち分かります。」
「透子さんも私と同じ経験があったんですね…。当時は産めなかった後悔が強まって、どうにかなりそうでした。子を授かるのも、産めるのも当たり前のことじゃないんですよね。当然のように出産、育児できている人たちが羨ましくて仕方ない時期もありました。授かるのも産めるのも、その子が大人になるまで一緒に生きられるのも、全部奇跡としか思えないんです。その奇跡に気づかないまま、生きている人たちが多すぎる気がします…。」
あの彼と結婚できた女性だから、さぞ幸せに暮らしているんだろうと勘違いしていたけれど、彼女は私と同じように人知れず、苦しい思いを抱えながら生きてきた寂しい人なんだと分かると、彼女のことが嫌いにはなれなかった。
「心織さんの言うこと、よく分かります。今は不妊の方も増えてますが、昔は妊娠も出産もみんな当たり前のようにしてましたよね。だからそれをできない女は惨めになることも多かったし。私は若くはない年齢で妊娠したので、特に妊娠って奇跡的だと思いました。命が始まるって奇跡で尊いことなのに、命の終わりは一瞬で、あっけないものだと思いました。中絶することになった時、そう思ったんです。命って始まりは簡単ではないのに、その気になればいつでも終わらせてしまうことができる儚いものだと…。死ぬのは簡単だけど、命を続けて生きるって難しいことだし、奇跡ですよね。無事、幸与が生まれて、一緒に生きるようになってからなおさら思うんです。この子の命を途絶えさせることなく、なるべく幸せに、長く生かしてあげたいと…。息子の命が末永く続くことを願ってしまうんです。」
「私も同じですよ。妊娠する度に、始まりは奇跡的なのに、命の終わりはなんてあっけないんだろうと思ってました。すごく大事にしても、流産してしまう場合もあるし、産みたいと願っても、母子共に命の危険が生じる子宮外妊娠は妊娠を続けることさえ、許されなくて…。放置したとしても子宮外で胎児が育ち続けることは困難だし、諦めて中絶するしかありませんでした。その時、苦しんだし悩んだのに、手術が始まるとその子の命はあっけなく尽きてしまって…。虚しくなりました。私は妊娠できたとしても、産めない身体なんだろうと絶望することもありましたが、雪心が来てくれて、救われました。ようやく我が子と出会えた時の喜びは今でも忘れられません。でもふと思ってしまうことがあるんです。私は我が子と出会えて幸せだけど、娘の方はどう思ってるのかなと…。娘を愛し、あの子の幸せだけを願っていますが、存在させたことは母親のエゴでしかなかったのかもしれないと…。娘はあの通り、大人っぽいというか冷めている部分もあって、何を考えているか分からない時もあって…。」
「私たち、本当によく似ていますね。私も、心織さんと同じように、幸与を存在させたのは私のエゴだったかもしれないと思ってしまう時があるんです。父親はいませんし、寂しい思いをさせているかもしれません。でも、芽生えてしまっていた母性が我が子と出会うことを望んでしまったんです。私の中絶体験は…心織さんと違って、子宮外で仕方なくというわけではなかったんです。相手が既婚者で、常識的に産めなかったんです。相手や周囲からも猛反対されて…。でも中絶した後に思いました。常識なんかより、授かった命の方が大事だったと。命は手放してしまったら、二度と同じ命とは出会えない。たとえまた妊娠できたとしても、同じ子ではないし…。だから大事だったのに、なぜあの程度の大人の事情で産めなかったのだろうと後悔しました。せっかく私の元へ来てくれた、我が子を殺してしまったのだから、命に触れる資格も、子どもを育てる権利も私にはないと思って、子をもつことは諦めなきゃとも思いましたが、諦められずに過ごしていたら、あの子を授かって…。結局、幸与の父親とも結婚はできませんでしたが、シングルマザーとして母子二人で生きていこうと思えるのは、あの時、中絶してしまった子の存在が大きいからなんです。だから今でも特に命日になると、中絶した子のことを思い出します。忘れたことはありません。」
私の胎内で命を育んでくれた子の命日は本当に今でも忘れたことがなかった。幸与に気づかれないように、密かに供養を続けていた。
「透子さんもつらい経験をされたんですね…。生まれる命と生きている人たちの常識や事情を比べることは、本来はできないですよね。命の方が大事に決まってるから…。でも理性で生きなきゃいけない私たちは、天秤にかけて、どちらかを選ばなきゃいけない時がある。だから透子さんは悪くないですよ。そのお子さんが命の尊さを命懸けで教えてくれたおかげで、今の透子さんと幸与くんの人生が続いているんですから。私も流産した子と中絶した子のことは忘れたことがありません。雪心という娘ができても、生まれられなかった子たちとは違う子ですからね。三人の子を大事に思ってます。それに私たち…順風満帆な人生で、亡くした子たちを産めていたら、出会えていないかもしれないですし。みんな孤独や満たされない何かを抱えているからこそ、こうして誰かとつながり合えるのかなとつくづく思います。」
彼女はうっすら涙を滲ませながら、やさしく話してくれた。
「今までこういう話をできる相手はいなかったので、心織さんと出会えて本当に良かったです。初対面なのに、重い話をしてしまって、すみませんでした。なんかママ友というより、昔からの友人みたいに錯覚してしまって…。」
「私の方こそ、ついつい身の上話をしてしまい、すみませんでした。でも本当に透子さんはママ友というより、昔からの友人同然です。これからも仲良くしてくださいね。うちの主人…実は肉食系で、たぶんよそに女性がたくさんいると思うんです。危険な獣みたいな主人に、大切な透子さんを会わせることはできませんが、主人がいない時、是非うちにも幸与くんと一緒に遊びに来てくださいね。主人はほとんど留守なので、いつでも大歓迎です。雪心も幸与くんが来てくれたらきっと喜びますから。」
 
 彼女のことを部屋に招き入れたのは、彼女自身のことを知りたいというより、彼の近況を知りたいという好奇心のはずだったのに、私はすっかり彼女自身に惹かれてしまった。私は彼女の知らない彼の裏の顔を知っているつもりで、彼女しかしらない、奥さんに見せる彼の素顔を知りたかった。だから探りを入れた。でも彼は奥さんに見せる顔も他の女たちに見せる顔とたいして変わらないのかもしれない。心織さんは寂しがっていたから…。それに彼女は外に女がいるかもしれないことに気づいていて、それでも好きだから別れないのだろうということも知った。彼女は健気な女性で、彼は相変わらず罪深い男性だった。彼は幸与の父親に違いないけど、本当に女にだらしない男だし、今の私にとってはもはや遠い存在だから、再会してしまったけれど、もう忘れようと思った。
 
 けれど私はそんな罪深い男を思い返し、最近また欲情してしまっている。そんな私も罪深い人間の一人で、彼と同罪だと思った。彼と関係があることを伏せて、あんな純粋そうな心織さんと親しくなってしまった…。彼女を利用して彼のことを探ろうとした私は、悪い女だと思った。罪深く悪い女の私は、頭の片隅にかろうじて残っている理性で彼女に申し訳ないと思いつつ、再燃した性欲により、どうしようもない彼をおかずに、玩具で遊ぶことを再開していた。理性を捨て、本能で生きる野生的な彼に犯される想像をしながら、陰部と胸をいじめるように玩具で弄んでいた…。
 
 心織さんとは定期的に連絡を取り合う仲になった。年齢はまだ44歳ということが分かり、私とは7歳違いで、つまり彼とは8歳違いと知った。話をしているうちに本当にお宅に遊びに行くことも決まった。
 
約束した日曜日…。幸与と一緒に、雪心ちゃんの家を訪ねた。
「お邪魔します。本当に遊びに来てしまいました。」
「いらっしゃい。幸与くんと透子さん、待ってたのよ。」
笑顔の心織さんと雪心ちゃんが出迎えてくれた。
「幸与くん、私の部屋で、二人で遊ぼう。」
雪心ちゃんは幸与の手をとると、彼女の部屋の方へ駆けて行った。また密室で二人きりで過ごそうとするなんて…。ファーストキス事件を思い出し、そのことを心織さんに伝えるべきか悩み始めていた。
「雪心ってば、珍しくはしゃいじゃって。透子さん、私たちはリビングでゆっくりお茶しましょう。」
キス事件を知らない心織さんは子どもたち二人を微笑ましそうに見つめていた。
「心織さん、あのね…。突然こんな話は恐縮なんだけど、子どものほっぺにチューとかしてた?私は幼稚園児くらいまで幸与のほっぺにキスしてたんだけど…。」
いきなりあの日目撃した生々しい出来事を話すことはできないと思った私は、探りを入れるように尋ねた。
「ほっぺにチュー?私も娘が小さい頃はしてたけど、うちの場合は私より、旦那の方が娘にしてたかな…。初潮を迎えて、大人の身体になりつつあるんだから、もう気安く娘にはしないでねって注意したことはあるんだけど、もしかしたら私の知らないところで、まだほっぺにはしてるかも…。」
「そうなんだ…。旦那さんがいるからこそ、たいへんなこともあるのね。心織さんはファーストキスって何歳くらいだった?私は20歳過ぎてからで遅かったの。今の子たちは早いって聞くよね。」
「ファーストキス?うーん…。中学生くらいだったかな。ほんと今の子たちは、幼稚園児くらいで普通に唇と唇でチューしてるから、親としては困るわよね。小、中学生で妊娠なんて話も珍しくはなくなったし…。」
不妊で困る大人たちは増えたというのに、妊娠の低年齢化はますます進み、むしろ未成年の方は妊娠しやすくなっているんじゃないかと思うほどだった。そう考えると、卵子の成熟が早まっていて、卵子が老化する年齢が早まった結果、不妊症の大人が増えた可能性もあった。
「そうだよね、親としては指導が難しいよね。ほら私たちの場合も、雪心ちゃんは女の子だし、幸与は男の子だから、気にしちゃうよね。」
「なるほど、そういうことね。でもたぶんうちの子は大丈夫だと思うの。幸与くんのことも娘のことも、私は信じてるし。」
まさか自分の娘が濃厚なキスを幸与としていたなんて考えもしない彼女は悠長にそう呟いた。同じ頃、チャイムが鳴った。
 
 玄関で誰かと応対していた彼女は、
「透子さんごめん、ちょっとだけ家、空けていいかな?近くに住むうちの母親が、急用があるからちょっと来てほしいと言ってきて。すぐ帰って来れると思うから、留守番頼んでもいい?幸与くんと雪心ちゃんのこと、お願いします。」
と言い残し、慌てた様子で出て行ってしまった。
 一人、リビングに取り残された私は、気になっていた子どもたちの様子をこっそり伺いに行った。雪心ちゃんの部屋らしき場所で聞き耳を立ててみると、楽しそうに談笑する二人の声が聞こえてきたので、ほっとした。
 
 心織さんと彼の寝室らしき部屋を通り過ぎ、リビングに戻るとテーブルの下に置いてあった小箱に気づき、中身が気になった私はその箱を開けてみた。すると私のお気に入りの玩具と同じものが入っていた。もしかしたら心織さんもこれで寂しさを紛らわそうとしているのかもしれない…。スイッチも入っていないというのに、条件反射でその玩具を見ただけで、私のみだらな秘部は濡れ始めていた。忘れていたけれどここは彼の家と気づいたら、彼の残り香が漂っている気配がして、ますます性欲は高ぶってしまった。子どもたちは夢中で遊んでいるようだし、今、この部屋には一人きり…。私は下着越しに自分の胸と陰部を指でなぞり始めていた。
 何、このシチュエーション…。誰もいないからって初めて来た他人様の家のリビングで、友人が使っている玩具と彼の匂いに興奮して自慰を始めてしまうなんて…。なんて最低な女なんだろう。いつもと違う、その異様なシチュエーションのプレイは私をさらに興奮させた。
 
 自慰に夢中になっていた矢先、玄関のドアが開いた。私は慌てて手を拭き、乱れた衣服を直した。彼女が帰ってきたのだと思い込んでいたけれど、意外な人がリビングに現れた。
「ただいまー。あれ…?透子?あぁ、今日は幸与くんがお母さんと一緒に遊びに来るとか雪心が言ってたもんな。あいつ…心織は?」
仕事に行っているはずの彼が涼しい顔をして現れたものだから、驚いてしまった。
「お邪魔してます…。子どもたちがいるんだから、名前で呼ぶのはやめて。心織さんは今、ご実家の方に行ってて、留守を頼まれてるの。」
「あーまた実家に呼び出されてるのか。しょっちゅうなんだよ、ごめんな。商談が早くまとまったから、今日は久しぶりに早く帰れたんだ。」
「へぇーそうなんだ…。心織さんもたいへんなのね。あなたは仕事の要領も良いのね。」
なぜか当然のように、私の隣に座った彼は突然こんなことを言い出した。
「なんかさ…さっきから匂うんだよね…。雌の匂い…。心織じゃなくて、この懐かしい匂いは…透子の匂いだな…。」
ニヤっと微笑みながら、彼は断りもなく私の下腹部をまさぐり始めた。
「ち、ちょっと、いきなり何するのよ。やめてっ。」
「ほら、やっぱり…もうこんなに濡れてるし…。もしかして俺の家に来て一人になったら、俺のこと思い出して興奮しちゃった?」
彼は私をソファーの上で押し倒すと、私の唇を奪った。
「懐かしい…透子の唇だ…。」
やさしく何度もキスする彼に私の身体は抵抗できなくなっていた。
「やめてって言ってるのに…。子どもたちに気づかれたらどうするの。心織さんだっていつ戻ってくるか分からないのに…。」
「大丈夫だよ。じっくり味わいたいところだけど、すぐに済ませるから…。俺はさ、ずっとまた透子を抱きたいって思ってたよ。俺のモノが透子を欲しがってたんだ、ずっと…。」
昔と変わらず慣れた様子の彼は、私の上半身と下半身の敏感な突起たちを舌と指を使って、念入りにこねくり回した。
「あ…ん…。」
彼の性欲に囚われた私は、彼が与える快楽に抗えずに、身をよじらせた。
「透子は相変わらず、ココとココが感じるんだね…。まだ中ではイケないのかな?今度こそ、俺が中でイカせてやるから…。」
とっくに獣と化していた彼は勃起した自分のモノを遠慮なく、私の膣にぶち込んだ。
「痛いっ、久しぶりだから痛いの。やめてっ。」
歳を重ねても、衰え知らずの彼の強靭な肉棒に私は慄いた。
「へぇ…透子は久しぶりなんだ…。通りでしまりがいいと思った。もし相手がいないならさ、これからはまた俺と定期的にしようよ。再会できたのは運命かもしれないし。やさしくするから…。」
そんなことを耳元で囁きながら、今度はやさしくじっくり私の中を犯し始めた。
「あっ、ん…。瞬くん、ダメ…。」
頭の中ではいけないことと分かっているのに、暴走する彼から逃げ出すことはできなかった。彼に負けないくらい、私の性欲も暴走し始め、もはや止められなくなっていた。
「ねぇ…透子、生理は来てるの…?」
激しく執拗に腰を振りながら、彼は冷静に尋ねた。
「…1年前に閉経したわ…。」
「そうなんだ…じゃあ思いっきり中に出してあげるね。」
私の言葉を聞いた彼は、さらに激しさを増しながら何度も突き、私の中に躊躇なく、ねっとり濃い精液を注ぎ込んだ。ひさしぶりの精液を受け止めた私の子宮は、もはや妊娠することはないと分かっていながら、それを期待するかのように、歓喜の悲鳴を上げていた。
 
 「幸与くん…あれがさっき教えたセックスよ。大人が子どもには教えてくれない、子どもを作る方法。」
「あれがセックスなんだ…。ぼくのお母さんと雪心ちゃんのお父さんがあんなことしていいのかな。セックスって好きな人同士でしかしてはいけないんでしょ?雪心ちゃんのお父さんには雪心ちゃんのお母さんがいるのに…。」
「いいことではないけれど、大人の世界ではよくあることらしいの。パパはきっとママ以外の女の人たちとたくさんこういうことしてるから…。ねぇ、幸与くん。私たちもいつかああやって子どもを作りましょうね。私、がんばって生殖能力を研究するから。」
まさか子どもたちに秘め事を覗かれているとは気づけなかった愚かな私たちは、心織さんが帰宅するまで、夢中になって互いの身体を貪り合っていた。相変わらず身勝手な私たちは性懲りもなく、刹那の快楽に酔い痴れていた…。

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