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コラム

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アラカキヒロコによるいつもよりやや真面目な文字列。なにげなく思ったことから、書籍やイベントに対する感想まで。
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#エッセイ

オウム真理教に思うこと Part 2 - 白紙の20年後/同調圧力と自立

オウム真理教に思うこと Part 2 - 白紙の20年後/同調圧力と自立

アラカキです。
記事を書きかけにしているうちに3月も終わり、世界がCovid-19に覆い尽くされて社会的な話題としてはそれどころじゃないし、もういいかなと、この状況でこの話題を誰が読むんだろうと思ったりもするけど、一応書き残しておくことにしました。 オウム真理教に思うこと Part 1 - 大学生と新興宗教 の続きです。オウム真理教について、ごくごく私的な視点からの記録や長年感じていたこと。

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オウム真理教に思うこと Part 1 - 大学生と新興宗教

オウム真理教に思うこと Part 1 - 大学生と新興宗教

アラカキです。
突然だけど、地下鉄サリン事件が起こった1995年の3月に11歳だった私の世代は、オウム真理教に揺さぶられる日本社会をリアルタイムで(物心がついているという意味で)記憶する最後の世代なのではないかと思う。

先日、地下鉄サリン事件から25年の節目の日が巡ってきたが、個人的にその一週間ほど前にはオウム元幹部の上祐史浩氏のトークライブを聴く機会があった。そんな流れもあり、このところ改

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映画『ハクソー・リッジ』についての雑感

映画『ハクソー・リッジ』についての雑感

メル・ギブソン監督の2017年の映画『ハクソー・リッジ』。89回アカデミー賞の録音賞と編集賞も受賞しています。私はじつは、沖縄戦が題材になっていることと日本公開時の宣伝方法が作品内容と乖離(沖縄戦にも触れず芸人さんを起用したコミカルな)し批判されていたことしか知識がなく、今更ながら作品を初めて観ました。

前田高地での激戦作品ではデズモンド・T・ドスという沖縄戦に従軍したアメリカ軍衛生兵の実話をも

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自尊心について

先月からなにかと自尊心に関するトピックに触れたり、思いがけず考えたりする機会が多い。

私自身、もともと自尊心がものすごく低く、あらゆることに傷つきヘトヘトになるため時期によっては毎日が拷問みたいだったけど、自分をいちいち一生懸命褒めれば自分で自尊心は上げられる、という嘘みたいな当たり前の真実を知ってからは、生きてることに感謝できるくらいには上がったと思う。

「上手くやらないと存在価値がない

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沖縄と日本の新しい関係 - 映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』によせて

沖縄と日本の新しい関係 - 映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』によせて

 大学時代から大好きな先輩であるレイさんから久しぶりの連絡。太秦で働くレイさんが宣伝を担当している映画「返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す」が那覇市の桜坂劇場でも上映されるとのことで、上映初日の舞台挨拶の日に合わせてFM那覇の私の番組でも取材に伺うことになった。
 この映画は、宮川徹志さん著「僕は沖縄を取り戻したい 異色の外交官・千葉一夫」を原案に、沖縄返還問題に尽力した日本政府の実在の外交官、千

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誰の命も、人生も、犠牲にしないファッション

誰の命も、人生も、犠牲にしないファッション

大好きな友人のはらながまきこさんに紹介してもらった福島里枝ちゃん。パナマ帽の編み方を学ぶため、7万円を手にツテもないまま単身エクアドルに渡っちゃうツワモノです。
帰国した里枝ちゃんが先日わたしのFM那覇の番組「ナライブサンプラス」にゲスト出演して告知してくれたパナマ帽の展示会に行ってきました。

そこに並ぶパナマ帽はどれも素敵で、手にとってまじまじと眺めてさらに感嘆してしまうような逸品ばかり。エク

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ラブソングを書く気

昨日のライブで「ラブソングはあまりなくて自分に向けて歌ったうたが多いですよね」と久しぶりに指摘してくださった方がいらして、『あ〜、昔そこすっごいよく言わたなあ…』と懐かしく思い返しました。
なくはないけど、確かに私、ラブソングっぽいラブソングがほとんどありません。
で、昔は、そう言われたら『やばい、やっぱラブソングも書かないと…』と思って書いたりしたんですが、作ったデモも大半は歌ってて楽しくないと

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内なる自分の声

忘れかけていた、昔の自分の、長い間苛まれていた想いを久しぶりに思い出すことがあった。

『何をしていても傷ついてしまうのはなぜだろう、ただ生きているだけなのに毎瞬毎瞬が苦しい…』
『まるでバグのような離人感。私は本当は生まれる予定ではなかったのでは?』
『消えてなくなりたい。自分で死を選択することさえだれかの迷惑になるのなら、最初から存在しなければよかった』
最後のは、思ってからいつも、少し楽にな

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果物と木片の町の夢のメモ

東京でも沖縄でもない、なんだかよく見知った日本のどこかの小さな町をうろうろ歩いていた。自分の家からもほど近い場所だと思う。

民家も多いその地域には、低いフェンスで囲われた屋外スケートリンクのある小さなアミューズメントパークがあって、フェンス越しに小学校高学年くらいの子供たちがわいわい滑っているのや、彼らを見守るお母さんを横目に見ながらフェンスに沿って歩いた。

施設の裏手には鄙びた瓦屋根

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身体観についての雑考 2018.1.11.

「この体は借りものだと思っているので・・・」
というフレーズを最近二度ほど口にした。

今の私にとって、この言葉の後ろには『幸運にもこの体をさずかって使う機会を与えられている』というニュアンスが含まれているのだけど、思い返せば20代の半ばまではまさにその借りもののような感覚-自分の体が自分のものでないようで現実感・生きている実感がないという悩みをもっていた。
それはいろんな条件と絡み合うことでやが

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犬のこと



先日、新しい家族がふえた。

動物愛護管理センターの譲渡会で出会った殺処分を免れた雑種の保護犬で年齢は1歳ぐらいの女子、関取と同じ「宇良」という仮名からうちに来て「リン」になった。
譲渡会には別の子を目当てに行ったのだけど、トレーナーさんが「宇良ちゃんオススメですよ〜」と抱き上げて紹介してくださったとき、ああなんだかこの子いいなあと思って譲渡希望の用紙の一番目に書いたのだった。
その日は生まれ

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重力に負けているこころ



夜明け前は星がよく見える。オリオン座の上にぎょしゃ座。

昨日はソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げてちょうど60年だったらしい。そしてまばゆい満月だった。とにかく白い、ほのかに紅い、輪郭が青く輝く円。

なんて喪失感に満ちた夜だろうと思って見ていた。
なにを失ったわけでもないけど。いや、なにか失ってしまったのかな。わからないけど、ただ、まとわりつく悲しみの感覚を久しぶりに思い出し

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良心の選択

正義という言葉はあまり好きではなかった。
私の中の『正義』に対するいわれのない悪印象は主にジョージ・W・ブッシュ時代の対テロ戦争が『無限の正義』とかいって始まった(Operation Infinite Justice)あたりに端を発している気がする。相手に如何なる理由があろうとも、自らに原因の一端があろうとも、これが自分の正義なのだと主張すれば何をしてもいいというようなエゴイスティックで狂気じみた

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記憶装置としての音

ある音楽がすごく好きで好きでたまらず執拗に聴き続けた、そんなふうに自分で自分を教育した跡形が私にはたしかに存在する。
音楽には記憶や感情が真空パックされていることがある。よくこれだけ月日が経っても劣化せず呼び出されるものだと驚く。何度全身の細胞が入れ替わったか知れないが22年の間まるで本能に刻み込まれてしまったかのようにそれらが薄れないのはなぜだろう。それは音楽と自分のみの関係にとどまらない。たと

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