馴れあいの父娘ではなかったけれど、絵画を鑑賞するとき、父がそばにいるような気がするこの頃。ただ歳をとっただけなのか、趣味の遺伝ってもんなのか。かなしくてあたたかい気持ちになる。横山大観の大作を観ると、谷中の墓を思い出して、「でも」静かな心の人だったのだろうな、としみじみする。
「余は正直に生れた男である。然し社会に存在して怨まれずに世の中を渡ろうとすると、どうも嘘がつきたくなる。正直と社会生活が両立するに至れば嘘は直ちにやめる積りで居る。」 夏目漱石『趣味の遺伝』より引用抜粋。