特に雄渾、と云ふ風には見えず まさしく人間としての一営為と主張してゐる (否「主張を隠してゐる」、かこの場合) 井月さんの書。私は勿論素人で 何申すか程度な評しか出來ぬが、 その「巧さ」には頭が下がる。 〈これあれば食ひはぐれなき筆の手を瓢の酒代にするご仁か くにを〉 ©都築郷士
〈酒褪めて誠ちどりや思念の川 くにを〉 私の詠み棄てた句歌の 様々に反して まだ現實の身辺に 厳寒と云ふべき無く 何となく本歌取り等決めてゐると 井月さんに悪いなあ、と それだけが思はれて… もう一つ、 〈自轉車のハンドルにはこの手套あり くにを〉とか- あゝ日々よ。 ©都築郷士
〈この秋は何で年寄る雲に鳥 芭蕉〉 もう秋でもないし、 私は芭蕉信者でもない。 翁、翁と信奉たてまつつた井月の句、 なら心底好きだが.. たゞ三鬼に 〈中年や獨語驚く冬の坂〉あり 最近詩に疲れてゐる自分、と言ふ物もあり。さう、 〈わたしやあね草臥れのひと寒日和 くにを〉©都築郷士