見出し画像

図書館の仏様

こんばんは、ハシモト トショカンです。
本日も数ある記事の中からこの記事を閲覧していただき、ありがとうございます!

前回の記事「図書館と居眠り」(https://note.com/hashitosho/n/n57aa1b2ba35d)でもそうだったんですけど、公共図書館の話題ではついクレームに関することを書いてしまうのですが(それだけ日常的にクレームが多いということではあるんですけど…)、理不尽にクレームをつけて来られる利用者さんの割合は、私の肌感覚ではせいぜい全体の1~2%くらいで、大半の方が良識のある、優しい利用者さんです。

その良識のある、優しい利用者さんの中でも、特に印象深い利用者さんが、以前、図書館に来館する赤ちゃんについて、「図書館の天使」という記事を書かせていただいたことがありましたが(https://note.com/hashitosho/n/na58a59f61bd4)、「天使」ならぬ、「仏様」

…今回は、私がある公共図書館に勤めていた時に「図書館の仏様」と心の中で思っていた、年配の男性利用者さんについて書こうと思います。

その方は、年齢で言うと80代くらいで、いつも決まった時間に図書館にいらっしゃって、いつも決まった席に座って、一通り新聞や雑誌を読んでから書架に行って文庫の小説を1冊選んでカウンターに持ってきて、貸出をして帰られる…というルーティンなんですが、図書館に来た時には必ずカウンターに寄って、とびっきりの笑顔で

「こんにちは!」

と挨拶してくださって、

「今日は暑いですね~」

という感じで、その日の天候について一言仰ってからルーティンに入られて、最後に本を借りる時に、

「この本、タイトルが面白そうだったので、ちょっと冒険して借りてみちゃいました」

と仰ってイタズラっぽく笑ったり、

「目が悪いから大きい文字で読みたいんですけど、大きい本は重たいし、結局いつも文庫を借りるんですけど、文字が小さいので読みにくくて、難儀なものですねぇ」

と頭をかきかき話されたり、何かしらコミュケーションを取ってくださいます。

そして、貸出の処理が終わって本をお渡しすると、丁寧にお辞儀をして、

「いつもありがとうございます」

と仰って帰られます。

40歳~50歳も年下であろう私にも、他のスタッフにも、必ず敬語でお話をされます。

あるスタッフがミスをしてしまい、責任者の私も一緒に利用者さんに怒鳴られている時、その方がたまたま通りかかって、

「そうやって大きい声を出されると、周りのお子さんが怖がってしまいますよ」

と笑顔で仲裁に入ってくださって(ただ、その時は注意された利用者さんが「は?事情も知らない奴が出しゃばんじゃねえよ!」と逆上してしまい、その方に矛先が向かってしまったので慌てて止めに入りましたが…)、後でお席にお礼に伺うと、

「いつも頑張ってくださっている皆さんに対して、ああいう態度は失礼ですよね。それでつい口を出してしまって、結果的にあなたにも余分な迷惑をかけてしまって、本当にすみませんでした」

と、逆に謝られてしまいました。

私が新人で入った時からずっと見て、声をかけてくださっていて、「責任者」のバッジを付けて新人教育をするようになった時には、

「新人さんの研修ですか?いや~!本当に立派になられましたね!今はあなたがいてくれると安心しますよ」

と、なんだか嬉しそうに声をかけてくださいました。研修中なのに泣きそうになりました。

…仏様って、本当にいるんだ!


ただ、ルール上、利用者さんと必要以上のコミュニケーションを取ることはご法度のため、度々副館長から「特定の利用者さんと個人的な会話をしないように」と釘を刺され(これにも理由があるので副館長が正しいのですが)、私がこの図書館を辞めて他の図書館に移る時、本当は一言ご挨拶したい気持ちでしたが、出勤最終日、いつものように挨拶をして、いつものように対応をして、いつものようにお礼を言って帰られる後ろ姿を見送る事しかできず、少し切ない気持ちになりました。

今も元気にあの図書館に通ってくださっていたら嬉しいなぁ…

本日も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集