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自伝

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本マガジンは私の自伝的エッセイです。私自身の「生きづらさ」を感じるようになった体験を綴っています。
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記事一覧

悩むということ

「なぜ人間関係がうまくいかないのか?」「何のために生きているのか?」

 このような問いを心の中で投げかけている方々は大勢いることでしょう。

 私たちは混迷を深める時代の中で、「生きづらさ」を抱えています。ひとたび問題が起こる度に、どうすることもできず、誰にも打ち明けられず、そのまま迷宮入りになってしまいます。そんな状況は心苦しい事ではないでしょうか。

 近年、芸能界で相次いで自殺者が出ていま

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引き裂かれた心

「あの人は何を考えているのか分からない。」

「あの人は話を聞かない。」

「あの人はまるで幼稚だ。」

 私はこの言葉の三重苦に苛まれてきた。その原因が何なのかを突き詰めてきた。故に幼少期に受けたトラウマにあると考えるようになった。

 私は神奈川県で生を受けた。穏やかな海を眺め、優しい潮風に浸り、心地よさを感じていた。自然を身近に感じる環境で逗子市の病院で産声を上げた。古い写真のアルバムの下書

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幼稚な心

 横浜の小学校に進学した私は3年生まで指をしゃぶっていた。クラスメートの女子から「指しゃぶり赤ちゃん」と呼ばれた。私は全くもって気にしなかった。人との関わりに対する不安が拭えなかったからだ。

 まるで漫画『ピーナッツ』に登場するライナスと同じような行動を取り続けた。ライナスは安心毛布を掴んで離さず、親指をしゃぶる姿が描かれている。あの行動は少しでも不安を和らぐようにするためなのだ。ライナス以上に

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恥の多い少年時代を送ってきました

 太宰治の『人間失格』の冒頭の一文から始まる言葉がある。それとは別の意味で、「恥の多い少年時代」を送ってきた。

 私は小学校時代から問題行動が多々あったことを思い返す。人を信用することができなくなった。他人を思いやる心すら無くなった。人に対して嘘をついたり、不快に思うような嫌がらせをしたこともあった。

 その経験の中で私が何よりも耐えがたかったのは、性的な観察を起こしたことだ。

 私は「エロ

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「お兄ちゃん」と呼んでくれない

 幼少期に受けた心の傷を抱えてから、私は徐々に誰にも承認されていないと思い始めた。
 「私はなぜ人間関係がうまくいかないのか。」
 「なぜ他人を傷つけるようなことをするのか。」
   そんな思いに囚われていた。

 そのトラウマを家族に話しても理解してくれず。どつぼのように悩んでいった。

 私には妹がいる。だが、これまで一回も彼女から「お兄ちゃん」と呼んでくれたことがない。一体どうしてなの

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不安

 小学校時代は散々なものだ。成績は悪く、授業もろくに聞かない。教室の外で唯一無二の親友と騒々しく遊んでばかりだった。別の組の先生から注意を受けるほどの迷惑ぶりが目立っていた。

 保健室用の日常点検の記録表を掃除用具入れの上に隠す。あるクラスメートの男子が学習机の上に乗り、優位に立ちたがる様子を見て苛立ちを隠せず、机を倒してケガをさせる。問題行動は至るところで起こしていた。

 通信簿では「落ち着

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言葉の意味が分からない

 学校で問題行動を起こし、家族から懐疑の目で見られるようになった私は自らの愚行を振り返る度に、鬱々とした気持ちにならざるを得なかった。性的観察を行ったこと、家族に対する下劣な行動を取ってしまったことは「世の中の恥さらしだ。」と自己批判するしかない。

 最大の課題は、人とのコミュニケーションである。言葉の意味をまるで理解できていなかった。そう自覚したのは、まだ生まれてまもない頃のことだ。

 3歳

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異国の地・カナダへ

 小学5年生の頃、父の仕事の関係で海外移住することが決まった。
 父の仕事は公務員である。主に国税にかかわる業務に携わってきた。国際税務に関連する重要な仕事を任されたため、2年間の海外出張を命じられたからだ。

 父は普段温和な人柄で、豪放磊落な性格の持ち主である。しかし、怒ると目を光らせるほどの表情に変わり、怖くなることもある。だから機嫌を損ねぬよう細心の注意を払わなくてはならない。それでも真面

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またか…

 カナダの現地校に通い始めてまもない頃、学校生活には多少なりとも慣れてきた。だが、相変わらず勉強する気が出ない日が続いていた。成績はあまり良くなく、クラスメートにちょっかいを出して迷惑をかけることが多々あった。なんとも野放図な小学生だったことか。

 帰宅後は家庭用ゲーム機で遊んでばかり。両親は人間関係から回避する傾向がますます強くなる私の生活態度に対して開いた口が塞がらなかった。

 そんなある

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特訓

 人と関わろうとせず、いつまでも家にこもってゲームばかりする私に、父はとうとう痺れを切らした。私をカナダの学校の校庭に連れ出したのだ。
 そして、突然二人だけのキャッチボールが始まった。

 漫画『巨人の星』に登場する星一徹と星飛雄馬が行う野球の英才教育のシーンを再現しているかのように、父から強い心を鍛錬させる指導を受けていた。
 父から投げ込んできた球をミットで受け止める特訓が始まり、嘆きながら

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カナダを旅する

 もちろん学校生活では嫌なことばかりでなく、楽しいこともある。

 カナダの学校では、英語のほかフランス語の授業がある。モントリオールやケベックなどの町はフランス語を公用語として使用しているため、当然ながらフランス語に堪能なカナダ人もたくさんいる。

 カナダの歴史を紐解くと、フランスやイギリスからの移民が多く入ってきたため、両国の公用語を受け入れたことが理由に挙げられる。ただし、州によって使用す

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奇妙な男

 帰国後、私は都内のインターナショナルスクールに入学することになった。世界中から留学生が集まり、多種多様な文化に触れ合う機会が学校に多く集まっていたようだ。
 世の中にはそれぞれの生き方、価値観が異なるものだなとつくづく思った次第である。後々に知ったことだが、このインターナショナルスクールの運営に携わっているのはとある有名な経営コンサルタントだそうだ。「世界に通用する人材を日本から輩出する」をモッ

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諦めた

 インターナショナルスクール時代の記憶の中でもう一つ印象深いエピソードが残っている。それはとある発表会で、私がステージの前で「アメージング・グレース」を歌唱したことだ。
 当時のクラスの出し物としては、2つのことを行っていた。1つは「線路は続くよどこまでも」の英語版 I've been working on the Railroad、そしてもう1つは「アメージング・グレース」(Amazing Gl

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残念な青春

 高校の頃は無味乾燥な時代を送っていた。

 学校ではあまり目立たず、ただ大人しくしているだけの生徒だった。
 幼い頃に抱えた心の傷から立ち直れず、どうしようもない孤独感に苛まれていた。勉学にもスポーツにも全くやる気が出せずにいた。
 死霊に取りつかれたように、茫然自失で何事に対しても興味を示さない鬱々とした気分に浸っている自分がいた。

 学校での成績はどうか。相変わらずの低調ぶりだった。特に国

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