またか…
カナダの現地校に通い始めてまもない頃、学校生活には多少なりとも慣れてきた。だが、相変わらず勉強する気が出ない日が続いていた。成績はあまり良くなく、クラスメートにちょっかいを出して迷惑をかけることが多々あった。なんとも野放図な小学生だったことか。
帰宅後は家庭用ゲーム機で遊んでばかり。両親は人間関係から回避する傾向がますます強くなる私の生活態度に対して開いた口が塞がらなかった。
そんなある日、またもや性欲を掻き立てる機会に直面してしまった。興奮状態にあったのだ。
家でくつろいでいた時、偶然にも棚に置いてあった大人向け女性雑誌を見つけた。表紙を飾る芸能人の写真に釘付けになった。表紙のタイトルは以下の通り。
「神田うの 24歳 美し過ぎる 初ヌード」
タレントの神田うのさんのヌードグラビアが表紙を飾っていた。1998年に発刊した『女性自身』に掲載されていたのだ。その写真をまじまじと見ていた。
雑誌を開いて2~3ページにわたって、神田さんが横たわるポーズの写真が載っている。真っ白な空間に覆われていて、ナチュラルな風合いを楽しむ木の床で温もりを感じながらも、その場所に横たわる姿がとても蠱惑的なものに映った。
パールホワイトに輝く素肌が豊潤なエロスを誘い、一糸まとわぬ姿が生々しく、老若男女を問わず人々を魅了させる。神田さんは当時24歳でありながら、徹底的に「美」を追求していたのであろう。
美しき姿はまるでパリのオルセー美術館に所蔵されているエドゥアール・マネの作品「草上の昼食」(1863年)に描写されているモデルとなっている女性・ヴィクトリーヌ・ムーランのような妖艶さと美意識を体現しているように思えてならない。
写真を観ている中で、私にこう語りかけているように見えた。
「何ニヤニヤしているの? 早く服を持ってきてちょうだい!」
馬鹿か。年端もいかない私が二度ならずに三度も、エロのエクスタシーに達したとは思いも寄らず。つくづく何も進歩していない。ヌードグラビアを見ながら、心の内は陰鬱な気持ちになっていた。
そんな私を後ろで見ていた母は、愚息の没頭ぶりに半ば呆れ顔だった。
あの日の私はもはや精神状態が重症化に近いものに差し掛かっていたのだ。