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播磨陰陽道

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2022年2月の記事一覧

播磨陰陽師の独り言・第二百一話「読み書き算盤」

播磨陰陽師の独り言・第二百一話「読み書き算盤」

 江戸時代ほど識字率高かった時代はありません。今ほど充実した教育体制でもなかったのに、少し妙ですね。
 もしかすると、
「現代よりも識字率が高かったんやないんかなぁ」
 と思うことも、しばしばです。しかも、かなり多くの人々が、古今の書を丸暗記していました。
 和歌などは、いくつも暗記しているのが普通です。カルタの小倉百人一首なんかで遊ぼうと思ったら、暗記していないと勝てません。
 ちなみに、北海度

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御伽怪談第四集・第五話「牛王を怖れる」

御伽怪談第四集・第五話「牛王を怖れる」

  一

 延宝五年(1677)の七月のこと、
——七條ケ原あたりに、誰とも知れぬ死人の塚があって幽霊が出る……。
 と噂が広まった。毎晩、人魂が漂っては、すすり泣く女の声が響くと言う。特に雨のシトシト降る夜は、人魂がゆらゆらして、怖ろしさ満点であった。
 友人からまた聞きした者の話によると、
「人恋しや。人恋しや……と、確かに聞こえたんや」
 真実かどうかは分からなかった。悲しげな声は凄まじく、

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播磨陰陽師の独り言・第二百話「奇跡のこと」

播磨陰陽師の独り言・第二百話「奇跡のこと」

 わが国の〈奇跡〉は、西洋の奇跡の概念とは少し違っているようです。
 西洋では〈復活の軌跡〉が基本でしょうか?
 死者が蘇ることをそのひとつとしています。しかし、わが国では、かなり頻繁に死者は蘇っているのです。と言うか、蘇らないために、わざわざ大きな墓石を埋めた墓穴の上に置いて、
「もう、帰って来ないで」
 と祈るのが普通のことです。
 西洋では滅多にない死者の復活ですが、わが国では珍しくもありま

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播磨陰陽師の独り言・第百九十九話「日本語のルール」

播磨陰陽師の独り言・第百九十九話「日本語のルール」

 昔からある、本来の日本語のルールはこうです。たとえば、〈大箱〉と言う漢字に〈パソコン〉と振り仮名を振ったり、〈帳面〉と言う漢字に、同じく〈パソコン〉と振っても良いのです。
 このような振り仮名付きの漢字を目にしたら、昔の人はどう読むでしょう?
 最初の漢字は、大型のディスクトップパソコンをイメージすることでしょう。そして、次の漢字は、ラップトップコンピュータをイメージしながら読むと思います。
 

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播磨陰陽師の独り言・第百九十八話「刀に関する言葉」

播磨陰陽師の独り言・第百九十八話「刀に関する言葉」

 日本語には刀のことを知らなければ意味の分からない言葉があります。それらは、たとえば〈切羽詰まる〉〈鎬を削る〉〈真剣勝負〉〈峰打ち〉〈一刀両断〉〈おっとり刀〉などの言葉です。

〈切羽詰まる〉は、刀の鍔の部分に留め金としてついている切羽脛金のことです。刀と刀が交差して、鍔がぶつかった時、もう動けない時が来ます。この時、切羽脛金が押されて詰まることから、言われた言葉です。切羽詰まるについて辞書で引く

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播磨陰陽師の独り言・第百九十七話「漢字のこと」

播磨陰陽師の独り言・第百九十七話「漢字のこと」

 元号が〈令和〉に代わったせいか、にわかに日本語の意味に注目する人々が増えて来て、嬉しいやら、笑えるやら……。漢字の意味にこだわりすぎて、右往左往する人々が目立ち、滑稽だと思います。まるで田舎芝居の喜劇を見ている気分です。
 江戸時代に偉い人たちが、
「漢字の意味に心を惑わされて、物事の本質を見失うべきではない」
 と書き残しています。
 彼らが言うには、
「漢字と言うものは、本来、借り物であるの

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播磨陰陽師の独り言・第百九十六話「環境に合わせる」

播磨陰陽師の独り言・第百九十六話「環境に合わせる」

 時代が変化し、パソコンの環境も変わり続けるのに、いつも同じ環境を求める人たちがいます。同じ種類のパソコンと、OSと、同じようなキーボードばかりを探す人を見るにつけ、
「ご苦労さんなことやね」
 と思います。
 彼らは、
「環境が合わへんのから……」
 と、もっともらしき文句を言いますが、
「新しい物事に対応でけへんだけやろ」
 とも思います。
 環境の方が、そのような人々に合わせてくれることはあ

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播磨陰陽師の独り言・百九十五話「愛と言う概念」

播磨陰陽師の独り言・百九十五話「愛と言う概念」

 播磨陰陽道には〈愛〉と呼ばれる概念がありません。だからと言って、愛がないとは限りません。また、愛に関する気持ちがないと言うことにもなりません。
 愛と呼ばれる言葉の多くは、明治に入ってから出来たものです。もちろんそれ以前からありましたが、それは〈愛欲〉と意味でのみ使われていたものです。明治に入ってからキリスト教的な思想が入って来たため、〈愛〉と呼ばれる概念が広まったものです。古語にはありません、

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播磨陰陽師の独り言・第百九十四話「文楽のこと」

播磨陰陽師の独り言・第百九十四話「文楽のこと」

 何年か前、大阪の国立文楽劇場が開場されてから35年の節目にあたる年がありました。
 その記念に、仮名手本忠臣蔵の全段が上演されました。国立文楽劇場でも始めての試みのようで、全段が見れるのを楽しみにしていた人も多いと思います。あれからコロナが流行し、なかなか文楽にも行けません。
 関西には、国立文楽劇場があるので、小中学生なんかが、時々、学校行事で見に行ったりします。
 人形劇の少し芸術的なのを文

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御伽怪談第四集・第四話「イトの逆恨み」

御伽怪談第四集・第四話「イトの逆恨み」

  一

 延宝年間(1674)のことであった。播磨の国・佐用村に、イトと言う独り身の年増の悪女が住んでいた。家は貧しく、朝夕の飯炊きの煙も立ちかねる暮らしであった。イトは身を寄せる知り合いもなく、侘しい日々を送っていた。
 村人を見ては、
「アホンダラめ。今に見とれ……」
 と、悪態をつきながらも、
——いつか飢えたとしても、食事をくれるヤツすらおらん。
 と、心の内で思い悩む日々であった。

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播磨陰陽師の独り言・第百九十三話「祝詞をあげていると」

播磨陰陽師の独り言・第百九十三話「祝詞をあげていると」

 祝詞をあげていると、時々、不思議な体験をします。今年の節分にも同じような体験がありました。
 それは、自分で唱えているにも関わらず、まるで別な何かが唱えているような、他人事と言うか、第三者的な視点になって眺めている気分になるのです。
 普段から話している声は小さいですが、祝詞になると、突然、別な声質になります。音量も、かなり大きくなるのです。
——いったい、どこからこんな声が?
 と思うような感

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播磨陰陽師の独り言・第百九十二話「迷信と言われる物事」

播磨陰陽師の独り言・第百九十二話「迷信と言われる物事」

 昔に比べて、めっきり少なくなったもののひとつに〈迷信〉があります。古い迷信は少なくなりましたが、新しい迷信は何やら増えているようです。全体的な数は変わらないかと思っていたら、新しい迷信ばかりが増えているので、全体量としては増加傾向にあります。
 陰謀論だとか、根拠がなさすぎる困った新迷信が、巷に溢れています。
 古い迷信の方を追いかけてみると、どうやら迷信ではない物事が多く含まれています。
――

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播磨陰陽師の独り言・第百九十一話「雛人形のことなど」

播磨陰陽師の独り言・第百九十一話「雛人形のことなど」

 毎月、様々な行事について書いていますが、今月はもうありません。来月の頭にひな祭りがあるくらいです。その日のことは、三月に書くとして、雛祭りのマナーとやらで、
「ひな人形はお下がりではなく、新しく買うのが望ましい」
 と言うものがあるそうです。雛人形を売っている団体が言い出したマナーなので非難されています。
 彼らによると、
「ひな人形は江戸時代からの伝統ですが、古いことなので文献もなく、資料もな

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播磨陰陽師の独り言・第百九十話「地球平面説を信じる人」

播磨陰陽師の独り言・第百九十話「地球平面説を信じる人」

 アメリカには、地球が球形ではなく、平面であると信じている人々がかなりいるそうです。これを〈地球平面説〉と呼びます。不思議なことに、この説を信じる人々がにわかに増えつつあるそうです。
 先日、Netflixで、地球平面説のドキュメンタリーを見ました。このドキュメンタリー、地球がいかに平面であるかを解く内容ではなく、平面説を信じる人と、それを広める人々の日々を追ったものでした。この作品を見る限り、広

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