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播磨陰陽師の独り言・第百九十四話「文楽のこと」
何年か前、大阪の国立文楽劇場が開場されてから35年の節目にあたる年がありました。
その記念に、仮名手本忠臣蔵の全段が上演されました。国立文楽劇場でも始めての試みのようで、全段が見れるのを楽しみにしていた人も多いと思います。あれからコロナが流行し、なかなか文楽にも行けません。
関西には、国立文楽劇場があるので、小中学生なんかが、時々、学校行事で見に行ったりします。
人形劇の少し芸術的なのを文楽と呼んでいますが……正式には〈人形浄瑠璃〉と言います。この人形浄瑠璃が、文楽と呼ばれるようになったのは、大阪に唯一残った人形浄瑠璃の小屋が〈文楽座〉と言う名前だったからです。新大阪駅や空港などにも文楽の人形が飾ってあります。見ようと思ったら見ることが出来る演劇のひとつですね。歌舞伎も文楽も好きなので、時たま見に行きます。
あの文楽に使われる人形の頭を動かす部分には、板バネのような物が入っています。手で操作する時、力を抜くと、定位置に戻るのです。その人形の頭の中の板バネは、捕鯨反対の憂き目にあって入手困難な状態だそうです。
なんと、誰が最初に考えたものか、鯨の髭をバネとして使っているのです。昔からの芸能に使われている部品は、プラスチックはない訳ですから、自然の素材を活用しています。特に文楽人形の頭の板バネは、鯨の髭以外の素材では上手く演じられないようです。
人形を使う芸能は、わが国でも最も古い芸能のひとつです。古い時代のことを知る手掛かりの多くが、古浄瑠璃のシナリオの中に潜んでいます。
さて、最近は、
「忠臣蔵ってなに?」
とか言う人が増えていて少し残念な気がします。そう言えば、昔は毎年のように年末にやっていた忠臣蔵映画とか、テレビのドラマやらも見なくてなりました。
仮名手本忠臣蔵のシナリオは活字の古文本で読みました。しかし、全段上演されるなど始めて耳にするくらいです。仮名手本なので、平仮名の手本になって、子供の教育のためや、大人たちの楽しみで使われていました。
物語は仮名手本を真似する過程で、心に染み込んで行ったそうです。そうやって洗脳するかのように赤穂浪士たちの功績が広がって行ったのでした。
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