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播磨陰陽師の独り言・第百九十七話「漢字のこと」
元号が〈令和〉に代わったせいか、にわかに日本語の意味に注目する人々が増えて来て、嬉しいやら、笑えるやら……。漢字の意味にこだわりすぎて、右往左往する人々が目立ち、滑稽だと思います。まるで田舎芝居の喜劇を見ている気分です。
江戸時代に偉い人たちが、
「漢字の意味に心を惑わされて、物事の本質を見失うべきではない」
と書き残しています。
彼らが言うには、
「漢字と言うものは、本来、借り物であるので、その意味に固執すべきではない」
とのこと。正しい漢字の意味がどうこう言う以前の問題ですね。
正しい漢字の意味や使い方を言うなら、漢字には振り仮名を付けるべきです。
振り仮名のことを、難しい漢字を読む時のガイドくらいにしか思ってない人が多いですが、それは誤解です。
また、一部の人々の中に、
——旧漢字にこそ意味がある。
と言う旨の発言をする人々もおります。それも誤りです。
漢字は、もともと古い時代の中国語ですので、本来の日本語の規則や使い方と異なっても当然なのです。古い時代の中国語と書きましたが、それも微妙に誤った表現です。
中国は、中華人民共和国の略語です。
日本語の古い文章の中に、
「中国から来た」
と書かれていた場合、大陸から来たことを意味するのではありません。日本の中国地方、たとえば山口県から来たことを意味するのでした。
ちなみに、中国の正式名である〈中華人民共和国〉と言う名前は、実は日本語です。日本語で付けられた国名を今でも使っているのです。英語では中国を〈チャイナ〉と呼びます。あれは古い呼び名で、本来の日本語の書き方では〈支那〉と書きます。
さて、よその国のことはおいといて、わが国の本来の漢字の使い方は、振り仮名を使うものが正しいことになります。振り仮名は、漢字の〈発音〉を示すために付けられています。漢字の〈読み方〉などではありません。あくまでも〈発音〉のためのものです。
これはつまり、
——どの漢字に、どの発音を付けても良い。
と言うことを意味しています。
漢字にどのような振り仮名をつけても良いのです。これで誰でも読めるのです。
実例としては、〈天窓〉と言う漢字に〈はげ〉と振り仮名をつけるものがあります。四角いハゲがあるような感じが良く出ていると思います。
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