立派な話をしようとしない
今の組織に入社して、30年近く経ちますが、現在も会長を務めている創業者は当時も社長としてトップにいました。
現在私は50代前半であり、創業者は70代前半。
当たり前のことなのですが、今から30年前も、この差は変わらずにあったのですよね。
差し引きしてみると、入社当時の私が20代前半だった時に創業者は40代前半であったわけです。
ところが、信じられないのが、今70代の創業者に感じている畏怖と同様の想いを、30年前の40代の当時の社長にも同じように感じていたのですよね。
信じられないというのは、自分の今や40代の時を振り返って比べてみた時に、そんなオーラを発していたかと考えると、その想像がつかないということなのです。
積み重ねてきた苦労や経験が違うと言われたらそれまでですが、自分で言うのもなんですが、私も多くの人がなかなかできない経験を少しはくぐってきた方なのではと勝手に思っています。
35歳の時に突然、採用の部署の担当者から、従業員850人の社長に任命されました。
それも承継した外部の組織でしたし、未進出の地域で私自身も暮らしたことのない街への赴任から始まりました。
まあ、それなりの経験ですよね。
ただ、思うのですが、当時のスタッフたちが私のことを、かつてや今の私が創業者を見ていたような目で見ていたとは思えないのですよね。
自分のことは一番分かっているというか、正直50を過ぎた今だって中身は中2のままのようなものだと思っていますし。
そんな感覚なので、皆の前で立派な話をしようとしている自分をちゃんちゃらおかしく感じながら俯瞰しているもうひとりの自分がいつもいるのです。
それもあってか、どうしても真面目一辺倒の話はしようとしないというか、できないのですよね。
コロナ禍が始まってから、少し控えめになってしまいましたが、かつては新入社員が入社した際や入社して一定の期間が経過した時に、よくフォローアップの集合合宿を開催していました。
そうした際に、最終日には、新入社員の抱負や10年後のありたい姿などをテーマに、仲間の新入社員とそれぞれが所属している地域会社の社長たちの前で3分間スピーチをするという機会が何度もありました。
だいたいは、エリアごとの発表になりますので、その地域の新入社員の発表が終わると、その内容を受けて担当地域の社長がはなむけの話をするという具合に、新入社員と地域会社の社長が交互に話をしていきます。
こういう時には、だいたい北とか東側のエリアから進行しますので、西側のエリアを担当していた私の順番は最後に回ってきました。
そして、皆が真面目な話をしていますので(真面目な話をする時間ではあるのですが)、私自身も辟易していたのもあったのと、聞かされる側の新入社員も飽きてくるだろうと勝手に判断していたのもあって、なるべく何も残らないような中身のない話をするように心がけていました。
それでも、仮にも社長ではありましたから、一応は伝えたいテーマをひとつくらいは用意しておきます。
あとは、そのテーマに焦点があたるように、それにまつわるエピソードで肉付けしていけばいいのだと、話をする時はいつもそのように考えています。
だいたいいつもアドリブ的に話すので、同じことは何度も話せないというか全然覚えていないのですが、今も覚えているエピソードがひとつだけあります。
自分が子供の時の体験談をしたのですよね。
当時、よく便秘になっていて、母親からその都度浣腸をされていました。ちゃんとした薬品の方ですね。
あれって、注入するとすぐにお腹がゴロゴロしてきますけど、すぐに出してしまうと浣腸液が出るだけで効果がないのですよね。
だから、ゴロゴロし出してもしばらくは我慢しなければなりません。
ところがこちらはまだ子供です。
私 「もうトイレ行きたい」
母親 「ダメ、まだ待ちなさい」
私 「もう出ちゃいそう」
母親 「まだ、ダメよ」
トイレに向かおうとする私の頭を、母親は押さえて言います。
もう我慢の限界といったところで、ようやく母親が押さえていた頭を離してトイレに向かうことを許可してくれます。
ゲートが開いた競走馬のごとく、トイレに向かって飛び出す私。
そして、走って向かったトイレのドアを開こうとした瞬間に、勢い余ってドターンッと盛大にすっ転びます。
もちろん転んだだけではすまないのですよね・・・
新入社員の皆さんに伝えたかったテーマはもちろん、「焦らなくていいからね」ということ。
このひと言を伝えたいがために恥を忍んでの過去の自分の話で肉付けたわけです。
そして、私の話の後にはグループ全体の代表による、ありがたい話という流れになるのですが、「オレの話の前にあんな話をするな」と後でこっぴどく叱られましたので、この話だけは今でもちゃんと覚えているのですよね。
いつになったら畏怖されるようなオーラというのは身につくものなのでしょうか。
今年もくだらない話を読んでくださいまして、ありがとうございましたm(__)m
一応ウンがつくお話で〆てみました(笑)
また来年もどうぞよろしくお願いいたします。