私と小児ぜんそく <自己紹介シリーズ>
小児ぜんそく
小学校3年生のころ、私は小児ぜんそくを発症した。
それからというもの、寝ていると突然苦しくなり、
ヒューヒューと、吸い込む空気や吐く息がメロディを奏でだす。
窓から吹き込む隙間風のような音だが、窓は開いていない。
けれども、苦しい私は窓を開け外の空気を吸うことで幾分か呼吸が楽になる。
結果的に窓は開いている。
私は、家の2階の部屋から窓を開け外の空気を吸う。
夏場であっても、夜の澄んだ空気は少し肌寒い。
それでも呼吸を少しでも整えるために我慢する。
ある程度、呼吸が落ち着いてくると集中が呼吸から外の景色に移っていく。
静かなのだけども、鳥のかすかな鳴き声、虫のさえずり、時折聞こえる車のエンジン音。
空には輝く三日月と、たくさんの星たち。うっすらと雲も見える。
それと街灯と、ところどころに家の光。
そんな見慣れた景色。
ときどき、朝日も仲間入りする。
しばらくして呼吸が落ち着いてくると眠気が襲う。
私は窓を開けたまま布団に潜り込む。
そのまま眠るときもあるが、またヒューヒューと
眠気を覚ますメロディが鳴り出す。
そうなると私は飛び起きてすぐに窓の外の空気を吸う。
また眠気も襲ってくる・・・そんなときは、窓に寄りかかって立ったまま眠る。実際は目を閉じているだけ。
病院へ
静かな夜の空気が私のアレルギーの暴走を鎮めることが出来ないときは
親に連れられて、そそくさと行きつけの病院へ行く。
途中、車の窓から外の空気を吸うのだが、家の窓の外の空気に比べ、より肌寒く、排気ガスが混ざっているからなのか、あまり新鮮さを感じられなかった。ただ気休めにはなった。
病院につくと早速治療にかかる。
オカリナみたいな透明なガラス状の器具の中に液体の治療薬を注ぎ、
それを空気を噴射するタイプの電動モーターの機械から伸びるチューブにはめ込んでいく。
機械の電源を入れるとドルルルルルルと音をだしながら、空気を噴射する。オカリナからは特殊な構造により薬液がすこしづつ噴射口に流れ込み、それが空気にぶつかり霧状になって放出される。
そうして霧状の薬液を喉や鼻などのアレルギー症状がでている部位にあて、症状を緩和させていく。早く良くなれと少しだけ期待しながら口を開ける。
ある程度はこれで症状が軽くなるのだが、
これでもダメなときが1度か2度くらいあっただろうか、その時は点滴をして1日入院みたいな形で病院に居ることもあった。
私は土日の夜にぜんそくの発作がでることが多く、毎週月曜日は学校を休むことが多かった。
当時は土曜日も学校だったので、はからずとも週休二日制を先取りしている形になった。
マシンガン注射
あるとき、土曜日の午後だったと記憶しているが、父に連れられて小児科医院に行った。
その時はぜんそくの発作はでていなかった。
病院に行くと、ぜんそくの治療をするということで、注射を打つということだった。
私は看護師さんが持ってきた医療器具を見て、びっくり!!
銀色のプレートに載せられた注射器。その数10本!!
これ全部!?一気に!?
お医者さんが「我慢できる?」と聞くも、周りの大人たちの無言で、無意識のプレッシャーを感じていた私は、どう考えても無理とは言えない雰囲気。しかたなく、抵抗も兼ねて静かに首を縦に振るだけだった。
すぐさま注射にとりかかろうとするお医者さん。
「じゃあ服を脱いで、そこに寝転がって」と指示され、
次の一言「背中のところに打つから」と
え!?
背中固いよ。針刺さらないよ!?
私は恐怖で、丸くなった。
「そうそう、その体勢でじっと動かないでね。」
と、さっそく一本目。
背骨と背骨の間に注射しているようだった。
ここで、まず泣きそうだった・・・・
二本目。
三本目。
四本目。
まだ終わらない。
ここで、「もう少しだからね~」とお医者さんが労いの一言。
いやいや、カウントしてるから・・・
五本目。
六本目。
感覚が麻痺してきた。拷問とはこういうものなんだろうか!?
七本目。
八本目。
九本目。
十本目。
「はい、終わりー」
私の目には涙のコンタクトがつけられていた。
天然成分のコンタクトで目にはいいんですが、視力が落ちてしまいます。はい。
とまぁ、泣いていないことにして、
私は10本のマシンガン注射をのり越えたわけだ。
こうして私の自慢話が一つできたのであった。
かれこれ、30年以上前の話になる。
後から調べたのだが、注射をしてくれたお医者さんが大学病院にも関係しているらしく、当時は最先端の治療法だったそうだ。
あと、父が東大医学部勤務のいとこに私のぜんそくのことを相談していたらしく、裏で話をしてくれたのかもしれない。
注射をして以降、ぜんそくの症状が和らいだ気がする。
発作の回数や、症状が軽減したようでお医者さんに感謝。
ただ、私の小児ぜんそくの寛解・治癒まではもう少し先のお話。
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