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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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「兵庫の風土」歴史軸としての兵庫⇔神戸。階級軸としての沿線格差?

神戸市含む、神戸ー大阪のいわゆる阪神間のエリアに関しては、関東と違って明確な地域軸があるのではと思われます。 *横軸の神戸に関しては神戸なのか、兵庫なのか。 *縦軸の阪神間に関しては阪神間の三つの鉄道沿線「阪急・JR・阪神」の格差? アースダイバー的に名付ければ、神戸の横軸は「歴史軸」、阪神間の縦軸は「階級軸」と名付けてもいいかもしれない(大阪については以下参照)。 それではまず横軸の兵庫と神戸の区分について。 ⒈歴史軸としての「兵庫⇔新開地⇔神戸」神戸市は、もともと

「兵庫の風土」日本一の日本酒生産地:灘五郷

⒈灘五郷とは「灘五郷」とは、灘にある酒造地区、東から「今津郷」「西宮郷」「魚崎郷」「御影郷」「西郷」の五つの酒造りの郷を指します。 私が実際に伺ったのは「白鹿」「菊正宗」「白鶴」の酒造。 利酒したいので三の宮の民泊先から尼崎経由で阪神電車を利用して伺いました。 それではなぜ灘五郷で日本酒生産が盛んになったのでしょう。『美食地質学入門』や現地の資料などに基づいて紹介したいともいます。 ⒉清酒の生産は伊丹の鴻池家がルーツまず初めに清酒は「伊丹」が発祥の地でのちに豪商・財

「兵庫の風土」本当の金持ちは芦屋ではなく旧住吉村にいる?

全国的にお金持ちが集積しているといわれる芦屋市。特に六麓荘町という超高級住宅街が有名ですが、現地の方によると、あのあたりは実際には新興系の金持ちエリア。 実は、兵庫県で最も有名な超高級住宅街は旧住吉村だそう(以下はかつての大邸宅を紹介したパンフレット)。 今の住所でいえば、東灘区の住吉山手や御影のあたり。日立創業者「久原房之介」のバカでかい屋敷は今はマンションになってますが、まだ大邸宅はいくつか残存しています。 実際に三ノ宮から自転車で行ってみると究極の激坂エリアで、イ

「兵庫の風土」阪神・淡路大震災とその復興

1995年1月17日に起きた兵庫県南部地震によって引き起こされた阪神・淡路大震災。 地震が頻繁に起きる関東と違い、兵庫県南部地震が起きる前までは、姫路出身の私の母含め「関西は地震はないから安心」みたいなことを言われていたこともあり、兵庫県南部地震は関西の人たちに大きなショックを与えたようです。 ⒈阪神・淡路大震災の被害状況やはり、地盤が新しい沖積平地で揺れが大きかったのか、古い建物が多かったのか、特に平地のエリアで被害が大きい様子がよく分かります。沖積平地は地盤が新しい

「兵庫の風土」六甲山が生んだ奇跡の良港:神戸港

神戸と神戸を取り巻く摂津エリアは、六甲山の存在が大きくその風土に影響しています。 ポートアイランドなどの埋立地も六甲山の土だし、 というか、平地が狭隘な神戸では住宅エリアを広げるために山を崩してその崩した土を埋め立てに活用した、と言った方がいいのか。 そしてどこに行っても神戸は坂ばかり。坂を登れば六甲山、坂を下れば大阪湾、なのが神戸(含む兵庫県の摂津エリア)なのです。 それでは個別に六甲山が育んだ神戸の風土について以下整理。 六甲山系の断層は、ブラタモリで紹介された

「兵庫の風土」瀬戸内式気候が育む「播磨」

播磨は瀬戸内式気候で、雨少なく一年中比較的乾燥した地域。 乾燥した地域では、穀物は米よりも小麦や大豆に適しているため、小麦・大豆の栽培が盛んになります。しかも年間当たりの降雨時間が少ないから、天日干が必要な海岸沿いでの塩や皮革の生産にも適している。 さらに瀬戸内海周辺は、約1億年前の火山活動の関係で「花崗岩」や「流紋岩」などの二酸化珪素成分の多い石が多く分布しているため、麹菌が嫌う鉄分がほとんど含まれていない一方、カリウムなど酵母の栄養となる成分が多い、という地質上の特徴

「兵庫の風土」自然編

兵庫県を1周して感じるのは、多様な地域が合併した県であるということ。地域文化の区分にほぼ近い旧来からの区分でいえば、播磨・摂津・丹波・但馬・淡路の五つの国が合わさった県で旧五国と言われます。 なぜ兵庫県がこれだけ多くの地域を包含したかというと、大久保利通の発案だったらしい。大久保は、兵庫県は神戸港という屈指の国際貿易港を有している県だから、経済的に強くなければいけない、と述べます。 これを受けて桜井勉(内務省地租改正局出仕)が「それでは但馬と丹波2県を兵庫県に合併したら知

「兵庫の風土」地震メカニズム解明のきっかけとなった世界的な場所「玄武洞」

今回の兵庫県フィールドワークの目玉とも言える場所が、兵庫県豊岡市にある「玄武洞」です。 玄武洞は、玄武岩の名前の由来ともなった場所ですが、何よりも玄武洞は、地震発生のメカニズムを解明するきっかけとなった記念碑的場所で、世界的にも非常に重要な場所。 でも一般には、このことはあまり知られていないのが非常に残念です。 ⒈松本基範による地磁気逆転の世界的発見とは?山口大学初代学長の松本基範(1884−1958)が、1926年に世界で初めて地磁気の逆転現象をここ玄武洞の地質によ

ユダヤの風土:ユダヤを知るための二つの映画

ユダヤを知るには、さまざまな方法があると思いますが、ここでは二つの映画を紹介します。一つは、元々はミュージカル作品の「屋根の上のバイオリン弾き」、もう一つは「シンドラーのリスト」。 ⒈屋根の上のバイオリン弾き1971年に日本公開されたこの映画の舞台は「アナテフカ」というロシアの仮想のユダヤ人集落。一般にシュテーテルと呼ばれたもので、アナテフカを、ユダヤ人の典型的なシュテーテルとして想定。 時代は19世紀末なので、日本が明治時代に入ろうという時期。 当時のロシアは、188

ユダヤの風土:今に生きるユダヤ人を知る

引き続き社会言語学者の鴨志田暁子先生の講義をベースに以下紹介します。 個人的にユダヤ人で尊敬する人は、哲学者のエトムント・フッサールと、進化心理学者スティーブン・ピンカーですが、ご存知のようにユダヤ人は、数多くの学者・実業家・芸術家を輩出しています。 ⒈ユダヤの有名人⑴学者 多すぎるので、人間社会に大きな影響を与えた人物のみを何人かリストアップ。結果的に啓蒙主義を促進した人ばかり=同時代人ばかりになってしまいました。 *化学肥料の発明:フリッツ・ハーバー(1868ー1

ユダヤの風土:イスラエルとは、どんな国なのか?

ユダヤのアシュケナジ系言語イディッシュ語を研究している社会言語学者、鴨志田聡子先生の「現代イスラエルとユダヤ人」に関する講義を受けたので、まとめがわりにここで整理。 なお、イスラエルは1948年建国時、そうはさせまいと近隣のアラブ諸国がよってたかってなきものにしようと戦争仕掛けられましたが、イスラエルも負けじとエジプトのシナイ半島を一時占領するなど、生きるか死ぬかの領土争いが今現在も継続している地域。 そしてイスラエルによるパレスチナへの入植は、国際法的には明らかに違法で

ユダヤ社会とはどんな社会なのか?『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕著 読了

<概要>ユダヤ人とユダヤ教について「歴史」「信仰」「学問」「社会」の四つの切り口からその概要を紹介したユダヤ思想の専門家による新書。 <コメント>本書を読むと、ユダヤに関する基礎知識が網羅的に把握できるので、ユダヤ入門としては中々の好著ではないかと思います。 歴史に関しては、以前ここで紹介した『物語ユダヤ人の歴史』とほぼ相違なかったので、ある程度、ユダヤ人の歴史は、専門家に共有されているように思います。 以下、いつも通り印象的内容を整理。 ⒈生活と密接不可分のユダヤ教

函館と北方領土を開拓した豪商『高田屋嘉兵衛』黒部亨著 読了

<概要>函館という街を実質いまのような街に造り、アイヌとの交流を深め、北方領土を開拓し、日露外交の先駆者たる淡路島出身の豪商、高田屋嘉兵衛の伝記。 <コメント>兵庫県神戸市の兵庫津を周遊していたら、淡路島出身の高田屋嘉兵衛が掲示板などで紹介されていて、 2年前、函館を観光したこともあり、さっそく本書を読んでみました。 すると、高田嘉兵衛は、ただの淡路出身の兵庫津有数の豪商だけではなく、冒険家でもあり、開拓者でもあり、外交官でもあり、人権活動家でもあり、デベロッパーでもあ

歴史学としての「光る君へ」『紫式部と藤原道長』 読了

<概要>NHK大河ドラマ「光る君へ」に関する「事実の歴史」とも言える著作。第一次資料をもとに紫式部と藤原道長に関してどこまでが史実といえて、どこから先が想像と言えるのか、を紹介。 <コメント>2024年の大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を担当している歴史学者、倉本一宏による著作。 大石静の脚本が素晴らしすぎるのか、吉高由里子や柄本佑の演技がうますぎるのか、それとも桁違いにお金をかけているNHK大河ドラマならではのセットが素晴らしいのか、わかりませんが「光る君へ」に今完全に