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「モロッコの風土」マグリブはアトラスの賜物

北西アフリカのモロッコに10日間のツアーで行ってきました。

モロッコはムハンマド六世による強力な独裁王国のゆえか、外国人女性も夜1人で歩けるほどの治安の安定したイスラーム国家。

カサブランカ(2024年11月撮影。以下同様)

多様な気候に多様な文化が育まれた非常に魅力的な国でした(食事はイマイチでしたが)。

カサブランカ:ハッサン2世モスク

モロッコを象徴する言葉として『モロッコを知るための65章』の第1章に

「エジプトはナイルの賜物」というヘロドトスの名言にならえば「マグリブはアトラスの賜物」である。

『モロッコのを知るための65章』16頁

との言葉があります。マグリブとは北西アフリカのチュニジア・アルジェリア・モロッコの三カ国のこと。

実際にツアーでモロッコ全体を周遊した結果、まさにこの言葉通りの自然風土で、アトラス山脈の存在がいかにモロッコの風土に大きな影響を与えているか、よくわかりました。

モロッコの模式図

▪️多様な気候のモロッコ

アトラス山脈を境に、北側は地中海性気候。南側は砂漠気候。アトラス山脈はステップ・山岳気候と、明確に3つの気候に分かれ、気候ごとに大きく植生も文化・風土も異なっています。

⑴地中海性気候

モロッコの地中海性気候では、夏は南側に広大なサハラ砂漠の高気圧(亜熱帯高圧帯)が北上してきて乾燥をもたらします。

そして冬には湿気の多い海洋性のアイスランド低気圧(亜寒帯低圧帯)が巨大化して南下し、雨をもたらす。

アトラス山脈以北のモロッコは、このような典型的な地中海性気候なので、冬の降水をねらって秋に種を撒き冬に育てて春に収穫する冬小麦が栽培されている。

この小麦を使ったクスクスという世界一小さいパスタがモロッコ人の主食になっています。

タジン鍋で煮込んだ野菜の下に敷かれているクスクス

またヨーロッパと比較して温暖な冬では、トマトやサラダ菜、じゃがいもなどの野菜類も栽培。

特に春から夏にかけてはサハラ砂漠の高気圧が北上する際にアトラス山脈を超えるため、日本海側と同じようにフェーン現象による熱風の北風「シロッコ」が発生。

11月、ヨーロッパの寒い冬を避けるかのごとくコウノトリがモロッコにやってくる

⑵ステップ・砂漠気候

アトラス山脈を越えると、景色は地中海性気候の緑色の世界から砂漠気候の茶色の世界になります。この辺りがモロッコならでは。

4,000ー5,000m級の高アトラス山脈を越える

とはいえ、完全な茶色の世界ではなく、アトラス山脈の雪解け水などで、川が流れ、まるでナイル川のように川周辺がナツメヤシなどの緑をもたらしています。

高アトラスとオアシス

山があれば上昇気流が生まれ、雨や雪が降り水分が蓄積されて徐々に平野に水をもたらすのは、世界中どこにでもある現象。

モロッコ南部では上手にアトラスの恵みをダムとして貯水し、街の水道や灌漑用水として利用しています。

アル・ハッサン・アダクヒルの貯水池

モロッコのサハラ砂漠もアルジェリアとの国境に近いエリアまでいくと、岩の砂漠ではなく、砂の砂漠にも出会うことができます。

Merzouga Desert

⑶山岳・ステップ気候

アトラス山脈は、南西部から大きく「アンティ・アトラス」「高アトラス」「中アトラス」と3つの山脈で形成され、その山脈と山脈の間の盆地は、乾燥したステップ気候のエリアと山岳気候のエリアで構成されています。

高アトラス山脈Tamesnaという集落

この辺りの景色は、本当に雄大で美しいのですが、作物のあまり育たない地域なのか、主に羊の遊牧を主とした生業の牧畜地域。

以上、このような多様な自然環境を擁するモロッコにおいてどのような生業が育まれているのか、次回「経済編」として紹介します。




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