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ゲンバノミライ(仮)

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被災した街の復興プロジェクトを舞台に、現場を取り巻く人たちや工事につながっている人たちの日常や思いを短く綴っていきます。※完全なるフィクションです。実在の人物や組織、場所、技術な…
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#職人

第69話 ワイヤーソーの舞さん

第69話 ワイヤーソーの舞さん

「ほら、見てください! きれいな断面。ぎっしりと詰まっています」

コンクリート構造物を解体する会社で働く梶原舞は、構造物の切断作業が終わった後に現れた表面を、必ずじっくりと見定める。

「いい仕事してましたね!」

隣にいる現場監督の山内衛にそう話し掛けると、「おうっ」と応じた。
照れているのか目を合わさないが、目元は緩んでいる。

「中がスカスカだったら、どうしよう…。その時は黙っていてくれよ

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第65話 わびおの小田君

第65話 わびおの小田君

「大丈夫ですか!! どこにいるんですか!!」

あの災害で甚大な被害を受けた海辺の街の復興プロジェクトで、下請け建設会社の土木技術者として働く小田文男は、現場に出て陣頭指揮を執っていた。そこに、専務である久保拓也から電話が入った。

「事故った。すまない。
田辺さん…、CJVの田辺さんに申し訳ございませんと、それだけ伝えてほしい。頼む…」

か細い声で言われたところで、ガタッと音がした。

携帯電

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第64話 ジエンドの久保専務

第64話 ジエンドの久保専務

ああ、俺の人生終わった…。

ゆっくりと目を開く。顔の前面にはエアバッグが広がっている。フロントガラスが派手に割れている。
頭が痛い。顔の右側で血が滴り落ちている。どこが切れているのかは分からない。

「大丈夫ですか!」

ドアの外から人の声が聞こえる。
シートベルトを外して、ドアを開けて、外に出て…。
やるべき事はうっすら思い至るのだが、体が動かない。

ああ…、痛い。苦しい…。

力が抜けてい

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第59話 しっかりしろ達也先輩

第59話 しっかりしろ達也先輩

はあ…。ため息が出た。
楽しそうに食事をする若いカップルが目に付く。

今年はクリスマスが週末に重なる黄金パターン。感染症の不安はまだつきまとっているが、感染者数は何とか低水準にとどまっていることもあって、街には人手が戻っている。
自分だって、いちゃいちゃしたい。だが、電気設備会社の技術者として働く奥山達也はいつものように仕事だった。

クリスマスイブだった昨夜も現場は通常通り。残業して帰ったら1

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第58話 相棒思いの信さん

第58話 相棒思いの信さん

塩化ビニールの排水管がゆっくりと所定の位置に寄ってくる。
あらかじめ設置してある片側の固定金具にぴったりとはまった。
据え付けの軸線にしっかりと沿っている。鉛直の精度も所定の範囲内だ。
大塚信は、スマートグラスをいったん外して上下の取り合いや異常が無いことを確認すると、反対側の固定金具をはめて、ボルトを軽く差し込んだ。
再び、スマートグラスを装着して、タブレット端末からOKを指示した。ボルトを締め

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ゲンバノミライ(仮) 第55話 時代遅れの永井さん

ゲンバノミライ(仮) 第55話 時代遅れの永井さん

じりじり、じりじり。
右から左へとゆっくりゆっくりと手を動かしていく、
まばゆい火花が散る中で、母材となる金属を超高温で溶融させて少しずつ重ねながら、接合させる。
肉眼で見てはいけないため、もちろん、遮光ガラスが付いた保護面越しの光景だ。

隙間やくぼみなどがあってはいけない。
ロボットのよりも緻密にきれいに仕上げてやる。

絶対に負けてはいけない。
そう思う。
一方で、自分は一体何と戦っているの

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ゲンバノミライ(仮)第49話 看護師の幸村さん

ゲンバノミライ(仮)第49話 看護師の幸村さん

復興の現場で働いていて事故に遭った前園金之助が退院していった。救急搬送時に現場作業員と聞いて、正直なところ不安があった。自分たちの故郷を再生するために遠くから仕事に来てくれて心底有り難いと思う反面、トラブルが起きていることも知っていたからだ。

それは杞憂に終わった。

すがすがしい青空を見上げて、看護師長の幸村早苗は、晴れ晴れとした気持ちになった。無事に送り出す時は、どんよりした天気よりも、こっ

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ゲンバノミライ(仮)第48話 警察の小池警部補

ゲンバノミライ(仮)第48話 警察の小池警部補

窃盗事件の処理をしていた小池義之警部補に建設現場での事故の第一報が入ったのは、午後過ぎのことだった。

「よりによって…」
思わず言葉が漏れた。

復興街づくりのシンボルとなる工事で、この街の誰もが知っている。徐々にそびえ立っていく姿を見るたびに、ワクワクする気持ちがわき上がっていた。無事に工事が完成してほしい。門外漢の小池でさえ、そう思っていたのだ。

「すごい突風が吹いて、ミシミシとか、鉄と鉄

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ゲンバノミライ(仮)第46話 テクニカルメートの北村社長

ゲンバノミライ(仮)第46話 テクニカルメートの北村社長

「皆さんは、10年間で5つの職種を経験し多能工として活躍していただきます。基本的には2級技能士の資格を受験して合格してもらうことが、次の職種に進む条件です。優遇措置として、3つの技能士を取得した時点で手当てを支給し、職種が増えるごとに手当を増額します。

覚える作業内容や求められる仕事の質は高くなりますが、効率的に仕事ができるように成長すれば収入が上がります。稼げて尊敬される職人さんを育てたいので

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ゲンバノミライ(仮)第45話 新人の海斗君

ゲンバノミライ(仮)第45話 新人の海斗君

「そろそろ始まります」
鳶・土工会社の新入社員である西野海斗は、この日のために新調したネクタイをきゅっと締め直した。スーツも新しいものを買いそろえた。作業服の時以外はビシッといこう。各地の同期と話して、そう決めたのだ。

画面越しに、あの災害からの復興街づくりが進む自治体で首長を務める柳本統義が映った。

復興街づくりを一手に担うコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)に関係するすべての

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ゲンバノミライ(仮) 第23話 出禁の瞬くん

ゲンバノミライ(仮) 第23話 出禁の瞬くん

久しぶりの夜の街だった。賑やかで楽しい。手持ちの金はあまりないが、久しぶりにキャバクラでも行こうか。こういう気分の時は、酒でも飲んで楽しまなきゃだめだ。

思い出すだけでもムカムカする。腹が立って仕方がない。
どいつもこいつもごちゃごちゃ言いやがって。

武田瞬は、きょう、現場から追い出された。
沿岸の街の復興工事の現場で、足場の組み立てや解体を主に担う鳶職人として働いていた。
自分で言うのも何だ

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ゲンバノミライ(仮) 第6話 鳶の石川親方

ゲンバノミライ(仮) 第6話 鳶の石川親方

朝は晴れ間が見えてきたが、昼前からだんだんと空が暗くなり、先ほどからぱらぱらと雪が降ってきた。
こんな寒い中、ほんと嫌だよな・・・
石川浩介の周りから、そんなぼやき声が耳に入ってきた。

確かに寒いけれど、もっと北にある石川の故郷で、この程度でしばれるなんて言ったら、「何言ってるんだ!」と馬鹿にされる。だが、この子たちは、南の地域から応援に来ていた。感覚が違うのは致し方ない。

「おい、午後の作業

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