被災した街の復興プロジェクトを舞台に、現場を取り巻く人たちや工事につながっている人たちの日常や思いを短く綴っていきます。※完全なるフィクションです。実在の人物や組織、場所、技術な…
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#東日本大震災
ゲンバノミライ(仮)第28話 境界線上の森田社長
ようやく最上階まで立ち上がってきた。設備や内装の工事はこれからなので完成にはまだ時間はかかる。最初の1棟ができても、周辺は更地のまま。だが、復興に進んでいることが見えてきただけでも大きな進歩だ。
森田真知子は、復興プロジェクトを包括的に手掛けるコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)の下請企業で社長をしている。3代目続く小さな総合建設業の会社として若くして家業を継いだ。社長としての肩書
ゲンバノミライ(仮) 第13話 二世の柳本首長
「それはガバ部屋で話しましょう」
あの災害後の選挙で首長になった柳本統義の口癖だ。
柳本の父の昌義は前々首長を務めた地元の名士だ。その長男として育った。都会の大きな自治体で職員として経験を積み、国会議員秘書を経た後、父の引退に合わせて地盤を引き継ぎ地方議員になった。
あの災害が起きたのは、議員2期目の途中だった。街の多くの人とともに行政職員にも犠牲が出て、ただでさえ脆弱だった組織は混乱の中で機
ゲンバノミライ(仮) 第3話 休日の西野所長
土曜日の夕方、西野忠夫の携帯電話が鳴った。
久しぶりに土曜休みをとって、現場から家に戻り、家族と街に出かけていた。隣にいる高校卒業を間近に控えた娘の手には、2時間悩んだ末にようやく決めた入学式用フォーマルコートが包まれた紙袋が揺らめいている。穏やかな春の日。買い物を済ませて、これから食事に向かうタイミングだった。
B工区を任せている高崎直人の名前が表示されている。
通常であれば、連絡調整アプ