シェア
oohama
2023年3月11日 14:58
柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺正岡子規にすごくひかれていた。図書館で全集があり、この俳句と、それに付随する随筆で、お寺に入らなければならない小坊主と幼なじみの恋愛が描かれていた。それで小学校のころ大阪から法隆寺に行った。今回、調べてみると正岡子規は法隆寺に行ってないそうだ。その時もちょっと陳腐だなって思ったけど、小坊主の恋愛もまるきりの嘘だ東大寺まで行ったが、結核が悪化して奈良旅行を引き上
2023年3月10日 08:30
百人一首に小式部内侍の和歌として大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天橋立という歌がある。大歌人の和泉式部の娘でまだ10代である小式部内侍がある貴族にあなたの和歌はお母さんの代筆でしょうとからかわれたとき歌った和歌だ。丹後の任地に夫とともに向かっている母は今、京都の端っこの大江山を越えて福知山の生野あたりでしょうか。まだ、便りはありませんが。丹後の天橋立辺りまで行ってないでしょうが
2023年2月23日 16:51
悲歌(エレジー)濠端の柳にはや緑さしぐみ雨靄につつまれて頰笑む空の下 水ははつきりと たたずまひ私のなかに悲歌をもとめるすべての別離がさりげなく とりかはされすべての悲痛がさりげなく ぬぐはれ祝福がまだ ほのぼのと向に見えてゐるやうに私は歩み去らう 今こそ消え去つて行きたいのだ透明のなかに 永遠のかなたに原民喜は詩人としては原爆小景の数編が残っている。水ヲ
2023年2月19日 17:04
世の中はつねにもがもななぎさこぐあまの小舟の綱手かなしも師匠の藤原定家が百人一首に取った歌です。この歌は小舟が流されて遠くいくの悲しむ漕ぎ手を描いているのですけど、世の中は平穏に動くことが少なくて、むなしいことを歌っていると思っています。世の中のありさまを歌う、こういう感覚が当時でもめずらしい。ものすごい虚無感も感じます。ものいはぬ四方のけだものすらだにもあはれなるかなや親の子をおもふ
2021年3月16日 08:17
詩人の伊藤比呂美の本を読んでいたら「どうしようもなくなったら詩人になりなさい」とあった。瀬戸内寂聴さんも「小説家になりなさい」って言うらしいから半分冗談だと思っている。それぐらい生活が大変だった時代、アートに生きることは無頼だったと思う。今回、好きな詩についてちょこっと書きたいなって思ったって、つい、調べ物をしたら、作品と作者の人格は違うと頭の中で強調しないとならなかった。でも、調べていくと、
2021年3月11日 06:38
夏の夜の博覧会は、かなしからずや中原中也夏の夜の博覧会は、哀しからずや雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ夏の夜の、博覧会は、哀しからずや女房買物をなす間、象の前に僕と坊やとはゐぬ、二人蹲(しやが)んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ三人博覧会を出でぬかなしからずや不忍(しのばず)ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬそは坊やの見し、水の中にて最も大なるものなりき、かなしか
2021年3月10日 08:06
月夜の浜辺月夜の晩に、ボタンが一つ波打際(なみうちぎわ)に、落ちていた。それを拾って、役立てようと僕は思ったわけでもないがなぜだかそれを捨てるに忍びず僕はそれを、袂(たもと)に入れた。月夜の晩に、ボタンが一つ波打際に、落ちていた。それを拾って、役立てようと僕は思ったわけでもないが 月に向ってそれは抛(ほう)れず 浪に向ってそれは抛れず僕はそれを、袂に入れた。月
2021年3月7日 08:59
3.11が近づき、震災関係の報道が続いている。そのとき、ふらちにも頭にうかびあがってくるのは中原中也のこの詩です。汚れつちまつた悲しみに……汚れつちまつた悲しみに今日も小雪の降りかかる汚れつちまつた悲しみに今日も風さへ吹きすぎる汚れつちまつた悲しみはたとへば狐の革裘(かはごろも)汚れつちまつた悲しみは小雪のかかつてちぢこまる汚れつちまつた悲しみはなにのぞむなくねがふな
2021年3月6日 09:56
初恋まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の林檎(りんご)のもとに見えしとき前にさしたる花櫛(はなぐし)の花ある君と思ひけりやさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に人こひ初(そ)めしはじめなりわがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるときたのしき恋の盃(さかづき)を君が情(なさけ)に酌(く)みしかな林檎畑の樹(こ)の下に初
2021年3月3日 06:43
甃(いし)のうへあはれ花びらながれをみなごに花びらながれをみなごしめやかに語らひあゆみうららかの跫音(あしあと)空にながれをりふしに瞳(ひとみ)をあげて翳(かげり)なきみ寺の春をすぎゆくなりみ寺の甍(いらか)みどりにうるほひ廂(ひさし)々に風鐸(ふうたく)のすがたしづかなればひとりなるわが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ桜が散るころ、必ずこの詩を思い出す。コーラスをや
2021年2月28日 10:23
その子 二十歳 櫛にながるる 黒髪の おごりの花の うつくしきかなみだれ髪与謝野 晶子歌集みだれ髪の名前の元になった短歌。自分の中の官能を堂々と歌ったナルシズムが心地いい。明治の大きな特徴は思春期の発見じゃないかと思っている。それまでは16歳ぐらいになると結婚と子育てが始まってしまっていた。高等教育がはじまって青春を楽しむようになったと思う。夏目漱石なんか読んでると、娘義太夫に
2021年2月25日 08:05
山本周五郎の戦前の千葉県浦安の生活をえがいた「青べか物語」に貧しい女給にだまされるインテリ青年が出てくる。原民喜も同じようなことをした。不幸な女性を助けることで自分を助けると錯覚した。そのことは恥ずかしくて一生黙っていたそうだ。小林多喜二も、似たようなことをしたらしいし、あの頃の青年のひとつの行動パターンなんだろうと思う。それぐらい、立身出世する青年の幅は狭まっていて非人間的だったのだろう
2021年2月9日 08:59
モノローグという言葉で思い出すのが、萩尾望都のポーの一族だ。新作も出て新しいファンを獲得しているのもあって、今、素晴らしい配役でのミュージカルが演じられている。 何年か前、銀座でやっていた「ポーの一族展」に行った。子供のときに、ボロボロになるまで何度も読んだからか、全部セリフが入っていたのに驚いた。いまでも、ラスト「アラン。君もおいでよ。ひとりでは寂しすぎる」というセリフと、エドガーがア
2021年2月3日 08:22
蛸壺(たこつぼ)や はかなき夢を 夏の月松尾芭蕉芭蕉がタコ漁の名所、明石を訪ねたとき作った俳句。日持ちするタコは夏のごちそう。タコつぼに入ってのんびりと夏の月夜に寝ているけれど、朝には引き上げられて食べられてしまう。弟子の杜国とともに明石に遊んだ時、吟じられた俳句。芭蕉門下の句集である「猿蓑」初出。死後、弟子によってまとめられた紀行文、「笈の小文」の最後をかざる句。杜国は豪商の跡