心電’s 合格塾(藤澤友輝)
右脚ブロックは心疾患のない健常人でも見られる心電図の良性所見です。有病率はやや男性に多く、加齢とともに上昇します。一般的な有病率は2-3%と推測されており、80歳以上では10%以上と報告されています。 右脚は主に右室に伝導を伝える脚であり、あまり分岐することなく主に右室の前乳頭筋に付着します。末端の一部は中隔や自由壁に付着します。右脚の伝導がブロックされると、特徴的な右脚ブロック波形が見られます。なぜなら心室の興奮伝播が、刺激伝導系を通って素早く左室が興奮した後、心室筋
心電図の基本 ① 心電図のとり方ⅰ)心電図とは 心電図(Electrocardiogram, ECG)は、心臓の電気的活動を記録し、その活動を波形として視覚化する検査です。心臓は電気的刺激により拍動を起こし、その電気的変化が体表に反映されます。この信号を電極で拾い、記録するのが心電図です。心臓のリズムや電気的異常を確認するための基本的かつ非常に重要な検査です。何より、造影剤や放射線などの体に負担を一切かけずに行える検査ですので、何回行っても問題はありません。 ⅱ)
始めに皆さん、こんばんは。 お知らせがあります! 2023年の心電図検定合格本として「基礎力grade up講座」を出版しました。そして大好評につき、第2弾の出版が決まりました。 その名も「鑑別力grade up演習」です。 前作は「基礎力grade up講座」は1級超えの問題を取り揃えており、マイスターを狙うハイレベルな問題集でした。 とても高評価をいただいていおりますが、一部難しすぎるとか、前半の解説を読む時間がない、といった声をいただきました。 そんな要望にお応えした
先に本記事のキモを書いておきます。言いたいことは下の2つだけです。これがわかれば、めちゃくちゃ簡単にWPW症候群におけるケント束の付着部位が鑑別できます。 WPW症候群とはWPW(Wolff-Parkinson-White)症候群は、心房と心室の間に異常な電気回路が存在することで発生する病気です。この異常な電気回路は「副伝導路」と呼ばれます。通常、心房から心室への電気信号は、刺激伝導系の一部である房室結節を通じてのみ伝わります。しかし、WPW症候群の患者では、副伝導路が存在
突然QRS波が脱落したら何を考えますか?鑑別すべきは ・非伝導性PAC ・洞停止 ・洞房ブロック ・2度房室ブロック です。 さらにポイントは ・脱落した時にP波があるのかないのか ・あるならばそのPP間隔は一定の間隔になっているか です。 これを頭に置いておきましょう 問1 では問題です。これは何が起きているでしょうか。 右から4拍目と左から6拍目が脱落しています。それ以外のところを見れば心拍数は75bpm程度で洞性Pであることがわかります。問題は脱落したところ
正常心拍数でwideQRSを見たら ・WPW症候群 ・脚ブロック ・促進性心室調律 を鑑別する QRS波形異常について QRS波は心室の脱分極を示し、心電図(ECG)の中で心室の興奮を反映する重要な波形です。正常なQRS幅は3mm以内であり、この範囲に収まる場合は「狭いQRS波形(narrow QRS)」と呼ばれます。しかし、QRS幅が3mmを超えると「広いQRS波形(wide QRS)」とされます。wideQRSになる理由は先行する心室興奮(WPW)、心室の伝導障害
本記事を閲覧いただきありがとうございます。皆さん心電図の勉強をしていて、レベルアップを感じにくくなった経験はありませんか。 ・お気に入りの本の解答を覚えてしまった ・波形の理屈はわかるけど、いざ問題になると解けない こんな方は心電図の知識の積み上げ方が不安定なのです。 基礎、それも心電図波形の基礎ではなく、そもそもどの順に読むべきかがわかっていない。 わかっていないから、いつも読めるかどうかの丁半博打を打っているだけなのです。 そしてそのうちにモチベーションが下がって勉強
問1 67歳男性。糖尿病にて定期受診中の心電図。正しい病名を一つ選べ。 洞調律 異所性心房調律 接合部調律 心室調律 心室補充調律 ~解答解説~ 正解:1 P波の極性に注目です。洞結節は右房の上外側にありますので、心房興奮伝播は右上から左下に流れます。よってP波はⅠ誘導陽性、Ⅱ誘導陽性の緑の部分になります。Ⅰ誘導のベクトルは右から左に陽性なので青の部分、Ⅱ誘導のベクトルは右上から左下に陽性なので黄色の部分です。これが重なるところが緑の領域となるわけです。さらに
問1 65歳、男性。主訴: 軽度息切れ。最も疑われる診断を一つ選べ。心房細動 心房粗動(通常型) 心房粗動(非通常型) 心房頻拍 上室頻拍 正解:1 心拍は140bpm前後でリズムはイレギュラーです。はっきりしたP波は見られません。これは細動波ですね、RR不整で、細動波を認めるものといえば心房細動以外にはありません。絶対性不整脈とも言われ、実臨床で比較的目にすることが多い頻脈の一つでしょう。細動波は心房の興奮が300bpmより短いレートで興奮し、マイクロリエント
今回は少しニッチな所見の話になると思います。心電図における左室高電位、低電位、移行帯の回転の話です。左室高電位くらいは聞いたことがある人もいるでしょう。実は左室高電位を呈すものにも2種類あります。また回転に関しては、自動測定でも出てこないので聞きなれない人もいるかもしれません。いい機会ですので、定義と理解を深めていきましょう。 解けなかった人はぜひライン登録で一緒に勉強しましょうね。 無料問題配布中です。早くしないとなくなっちゃうかも!? ・ハイライトやプロフからライン(h
問1 27歳女性。基礎心疾患なし。健診の心電図。最も疑われる病名を一つ選べ。 1度房室ブロック WPW症候群 LGL症候群 脚ブロック 陳旧性心筋梗塞 ~解答解説~ 正解:2 特に持病のない若年女性です。リズムに乱れなどはなく、一見するとP、QRS、T波にも大きな以上はなさそうにも見えるかもしれません。よく見ると典型的なデルタ波を認め、典型的なWPW症候群の心電図です。 ~WPW症候群~ WPW(Wolff-Parkinson-White)症候
PSVT(発作性上室頻拍)、苦手な人多いですよね。ナローQRSを呈する頻拍であり、若年であったり、なんの持病もない人でも起きうる病気です。結構脈が上がることも多く、問題で見ると心電図とにらめっこする余裕もありますが、実臨床では結構焦ることもあると思います。患者が苦しそうであったり、血圧が下がったりしていると心電図にらめっこしている場合ではありません。適切な検査をしつつ、治療に早急に移らなければなりません。そうこうしているうちに何とか脈が落ち着いてきて循環器にお願いして、後で
問1 34歳男性。動悸精査のためのホルター心電図。就寝中の心電図。 正しい病名を一つ選べ。 1度房室ブロック ウェンケバッハ型ブロック モビッツⅡ型房室ブロック 高度房室ブロック 完全房室ブロック ~解答解説~ 正解:2 QRSの脱落を認めます。ポイントは脱落がどう脱落しているのか、です。よく見ると脱落直前にP波があり、続くQRS波が脱落しています。洞不全症候群であればP波ごと脱落するので、P波があるのにQRS波がついてこれないということは房室ブロックをまず
問1 88歳男性。高血圧にて近医かかりつけ。たまにふらつくとのことで受診。 正しい病名を一つ選べ。 異所性調律 左右付け間違え 左軸偏位 右脚ブロック 異常Q波 ~解答・解説~ 正解:4 V1でrsR’、V6でS波のスラーがあることから右脚ブロックと考えます。P波はⅠ、Ⅱ誘導で陽性であることから洞調律と考えます。異常Q波とは幅1mm以上で深さがRの1/4以上あるQ波のことです。ここではそのようなQ波は見られません。他については一つずつ後述します。
問1 59歳男性。朝から持続する胸痛にて受診時の心電図。心筋梗塞部位として最も疑われるものを一つ選べ。 左冠動脈主幹部 左前下行枝 左回旋枝 右冠動脈 円錐枝 ~解答解説~ 正解:2 本症例ではV2-4でST上昇を認め、まずは前下行枝の急性冠症候群を疑います。Ⅰ、aVlでもわずかにST上昇しており、aVlには異常Q波を認めるため、対角枝も巻き込んでいるものと考えます。以上から左前下行枝の心筋梗塞を疑います。下壁誘導はミラーイメージでSTが下がっています。 ~目