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祝!鑑別力grade up 演習 出版記念!!!

始めに

皆さん、こんばんは。
お知らせがあります!
2023年の心電図検定合格本として「基礎力grade up講座」を出版しました。そして大好評につき、第2弾の出版が決まりました。
その名も「鑑別力grade up演習」です。

前作は「基礎力grade up講座」は1級超えの問題を取り揃えており、マイスターを狙うハイレベルな問題集でした。
とても高評価をいただいていおりますが、一部難しすぎるとか、前半の解説を読む時間がない、といった声をいただきました。
そんな要望にお応えしたのが、第2弾となっております。
鑑別力grade up演習は、「心電図は読んでなんぼ、教科書を読んでも頭に入らない」という人にうってつけの、完全ドリル型問題集となっております。3級レベルからスタートし、解き終わるころには自然に1級レベルになれるように調整しております。
問題の後に解説があり、間違い選択肢にも都度説明が入るようになっており、解説ポイントに飛べるようにリンクをつけています。
正解選択肢だけを覚えないこと、間違い選択肢を間違いと自信を持って答えられるように、何回も出てきますので、焦らずじっくりと問題を向き合っていただければありがたいです。

今回は出版記念としてちょっとだけ練習問題を出します。雰囲気を一緒に感じてください。

問1  67歳、女性。健診の心電図。

正しい所見を一つ選べ
1.軸偏位
2.脚ブロック
3.PQ延長
4.ST上昇
5.陰性T波



正解:3
×1.Ⅰ、Ⅱ誘導でQRS波形が陽性であり、軸偏位はありません。それぞれの極性が
 Ⅰ陽性、Ⅱ陰性→左軸偏位
 Ⅰ陰性、Ⅱ陽性→右軸偏位
 Ⅰ陰性、Ⅱ陰性→北西軸  となります。
×2. 脚ブロックはワイドQRS波となり、ここではナローQRSになっています。
 V1でrsR'、V6でS波のスラーがあれば右脚ブロック
 V1でrS、V6でRR'があれば左脚ブロックになります。 
×4. ST上昇はありません。
 STはQRSの終わりとSTをつなぐ部分(J点)が上昇しているかで判断します。誘導にもよりますが、隣り合う2つ以上の誘導でJ点が1mm以上上昇していればST上昇と診断します。
×5. 陰性T波はありません。
 陰性T波とは言葉の通り、T波が陰転化しているものを指します(aVr以外)。肥大型心筋症やたこつぼ型心筋症になると陰性T波が見られます。


問2  70歳、女性。ふらつきにて受診。

正しい選択肢を2つ選べ。
1.洞不全症候群
2.完全房室ブロック
3.心房細動
4.心室期外収縮
5.接合部調律

正解:1.5
正解を二つ選ぶことにも注意しましょう。
×2. P波がないところはありますが、P波に続くQRS波が脱落しているわけではないので、完全房室ブロックはありません。
×3. 細動波はなく、心房細動ではありません。
×4. ワイドQRSの期外収縮はありませんので、心室期外収縮はありません。

問3  66歳、男性。虚血性心疾患にて通院中。朝から突然の動悸にて受診。

正しい選択肢を1つ選べ。
1.発作性上室頻拍
2.洞頻脈
3.心房細動
4.心房粗動
5.心室頻拍



正解:5
ワイドQRS頻拍の鑑別を問う問題です。ポイントは心室頻拍かそれ以外かです。心室頻拍と診断するために様々な診断方法が報告されています。本症例は融合収縮が見られ、心室頻拍の診断となります(解説は↓へ)。
×1. 普通はワイドQRS波形にはなりません
×2. 洞性のP波が確認できません
×3. RR不整はなく細動波もありません
×4. 鋸歯状波はありません

 確実に心室頻拍といえる所見は「房室解離」です。房室解離とは言葉の通り、心室と心房の興奮がバラバラになっている状態のことで、心室は頻拍になっていたとしても室房伝導がなければ心房は心房で勝手に興奮するわけです。そしてそんな勝手に興奮するP波がちらりと見えれば房室解離ですし、たまに心室頻拍の合間を縫って興奮伝播することがあり、心室頻拍と合体した波形になれば融合収縮、合間で普通に洞調律のQRS波形が見えれば補足収縮となります。いずれにしても心房興奮と心室興奮が間違いなく解離している所見であり、心室頻拍確定の所見となります。

 本症例でも左から9拍目のQRS波形が少し変わっているのがわかりますか。これが融合収縮です。よって心室頻拍であることがわかります。

 付け加えるならⅠ、Ⅱ誘導で陰性の北西軸を呈していること、aVrで単相性のR波が見られること、V5-6でS波の方がR波よりも大きいこと、これらはその波形が心室起源であることを疑います。なぜなら心室からQRSが発生すれば心室興奮伝播が体の左下から右上向きになります。するとV5-6では離れるようにS波が大きくなるし、aVrには向かってくるようなR波が出てくるし、北西軸にもなるというわけです。これらも見られればおおむね心室頻拍である可能性が高い所見ではありますが、元の波形も参考にしなければ絶対とは言えません。


問4  59歳女性。健診の心電図。

最も疑われる心室期外収縮の起源を1つ選べ。
1.左室流出路
2.右室流出路
3.左室心尖部
4.右室心尖部
5.His近傍

正解:2
心室期外収縮(PVC)の起源を問う問題です。1級レベルでは問題として複数出題されることもあります。解剖学的な心臓の形の掌握が重要であり、どこから出たらどんな波形になるのか知っていなければ解けません。ただし、波形を無理やり覚えても応用が利きません。「心臓の上方から出たら波形はこうなる、右側から出たら波形はこうなる、だからこの波形は○○からでているはずだ!」、と論理的に理解してください。
ペーシングの位置や心室頻拍の起源を問う問題にも応用が利き、1級レベルとその他を分ける鬼門となる問題です。ここで起源推定のコツをまずはシンプルに理解してレベルアップしてください。本症例の起源は右室流出路が疑われれます。解説は↓へ続きます

心室期外収縮の起源推定ポイントは3つです。
Ⅱ、Ⅲ、aVfを見る
 →全部陽性なら上方起源(流出路や弁輪前壁)
 →全部陰性なら下方起源(心尖部や弁輪後壁)
 →バラバラなら側壁や中隔起源
V1を見る
 →右脚ブロック型なら左室起源
 →左脚ブロック型なら右室起源
V5-6を見る
 →S波が大きければ心尖部寄り(左の方)
 →R波が大きければ心基部寄り(右の方)

に起源があることになります。最後にもう一度同じ波形を出すので一緒に解きましょう。

①Ⅱ、Ⅲ、aVfは全部陽性    →上の方に起源
②V1は左脚ブロック型です。   →右室に起源
③V5-6はR波が大きい     →基部などの弁輪の方

に起源があることが疑われます。Ⅱ、Ⅲ、aVfで洞調律よりも高いR波であることから、右室の上の方つまり流出路起源が疑われます。心尖部でR波があることも心尖部から距離があることを考えると納得できます。


最後に余談ではありますが、流出路においてQRSの幅が比較的狭くノッチがなければより中隔寄りに起源、比較的幅が広くノッチがあれば自由壁側に起源があると考えられます。本症例は比較的幅の狭いQRSでノッチがないことから、右室流出路中隔側に起源があることが疑われます。

最後はちょっと難しすぎますが、鑑別力grade up演習の序盤はもっともっと初級レベルの問題で構築されており、何回も同じ選択肢が出てくることで一つ一つ繰り返し、定義を復習しながら自然とレベルアップできるようになっています。

2024年9月下旬発行予定です。
ぜひよろしくお願いいたします。

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