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秒針に音色を付けた人を呪いたい。チック、タック。チック、タック。僕達は時間に追われるよう…
希望も絶望も違いがない。コインの表裏とかそういう次元ではなく、それは純粋な混沌に近い。瞬…
神様は、人間が嘘をつくことに辟易していた。知恵の実を齧った時から信用はしていなかったが、…
子供の頃から、仮面を見ることができた。幸か不幸かは分からない。それが、人が着けた仮面をあ…
貸す本には、念を込める。貸したい本というものは、その人を見てると自然と浮かんでくるものだ…
貴方が好きだった小説を憶えている。三島由紀夫『豊饒の海』。貴方と読み合った小説。毎週、貴…
「こちらが、最新のVRヘッドになります。よかったら、デモプレイをなされますか? 」 「ぜひ! 一度試してみたかったんです」 「こちら、グローブになります。ボクシングゲームをプレイしていただきます」 「楽しみですね」 若い男性は嬉々として、VRヘッドを装着しようとする。イヤホンは、ひとりでに耳の穴を覆う。 「ボクシンググローブをつけてください」 椅子に縛り付けられた女が、若い男性の前へ運ばれる。どんなに叫んでも、塞がれた耳の奥には届かない。 「相手が表示されたら、
「早く、スーツに着替えなさい」 「はぁい」 寝癖の頭髪に、無精髭。お父さんは、いつも準備…
片田舎のパチンコ屋は、その喧騒と裏腹に人がまばらだから好きだ。脳の回転を止めたい時にぴっ…
「探求欲は、原罪ね」 機織り機の埃をはらう。寡婦は濃藍の糸を掛ける。 「世の中、知らな…
ネオンは、街を浮き彫りにする。空虚なストリート。この街で生きる人だけが佇んでいる。その数…
飛行機の小さな窓から雲海を眺めていると、止まっているような感覚になる。雲海は、まるで魔法…
友達が枯れきってしまいそうだ。一人暮らしの生活で、何でも受け入れてくれるのは友達だけだっ…
三本目の腕は、ある早暁に肩甲骨の間に生まれた。眠りが病的に深い僕にとって、日が昇る前に目が覚めることは、虫の知らせを感じざるを得ないことではあった。僕はどこかむず痒さを抱えながら、台所へ向かい一杯の水を飲んだ。しかし、徐々にその違和感は背中に集約されていき、背中を掻いた僕は文字通り腰が砕けてしまった。そこに、三本目の腕が生えてくるなんて誰が想像つくだろう? 三本目の腕は爪のように少しずつ、しかし確実に伸びていった。病院に行くべきだろうか。しかし、何科に行けばいいか皆目見当